※本記事は、2022年10月25日刊行の定期誌『MarkeZine』82号に掲載したものです。
独自の「遊び」の切り口で幅広い事業を展開
——御社は、BtoCとBtoBの両面で事業を展開されています。まず、どういった考え方で事業を広げられてきたのか、うかがえますか。
当社は一貫して「遊び」をキーワードに、様々な遊びの領域に関わるステークホルダーの課題解決に取り組んできました。BtoCでは、全国のレジャー施設やアウトドア体験、陶芸やそば打ちなど、2万6,000を超える体験を扱うサイト「アソビュー!」を運営しています。会員数は700万人まで伸び、最近では体験を贈れる「アソビュー!ギフト」も人気ですね。
一方、BtoBでは遊びを提供する観光・レジャー・文化施設向けにDX推進SaaS「ウラカタシリーズ」を展開しています。さらに、遊びに行くとなると地域がフィールドになることも多いので、地方自治体と連携してプログラム開発の支援などもしています。
最近では、メーカーの「自社商品を通して遊びの市場を彩りたい」というニーズを受け、プロモーション支援をすることもあります。“車”で出かけるとか、雨が降れば“レインコート”を着るとか、意外と遊びに関連した商品は多いんですね。事業としては多様ですが、全部「遊び」から派生しているのが、当社の特徴です。
——「遊び」という切り口では市場規模をどのように見積もっているのですか? また、なぜこの切り口を設定したのでしょうか?
市場規模は、約30兆円と算出しています。レジャーや旅行など既存の業界のデータと、たとえば年に何回くらい遊びに出かけ、いくら使うのかといった我々のユーザーへの調査をもとに見積もっています。
実は、この切り口自体が、僕は「顧客起点」だと考えています。市場規模が既に算出されているような既存の業界は、いわば産業界が分類しやすいようにくくったもので、消費行動から紐づいた概念ではありません。デート市場、おでかけ市場と言っても、顧客は明確に区別していませんよね。すべて「遊び」です。
既存の切り口は、業界の慣習だから聞き慣れているだけ。顧客の視点で疑うことから始めるのが重要だと思っています。本来の消費行動を切り取るには「遊び」が適切だと思うので、一貫して遊びの市場に焦点を当ててきました。
M1・F1層重視からファミリー層にも注力
——これまで運営される中で、メインの顧客の変遷もあったかと思います。創業時からどのように変わっていったかをうかがえますか。
起業当初のターゲットは、自分でした。当時は20代で、独身男性が「週末に何か楽しいことないかな」とレジャーを探すのに便利に使えるサービスとして立ち上げたのです。なのでメインはM1(男性20〜34歳)・F1(女性20〜34歳)層で、パラグライダーやダイビングなど、インパクトのあるアクティビティーを中心にそろえていました。
ただ、インパクトのある遊びは屋外が中心で、夏のシーズンが多く季節性の影響が大きい。かつ屋外の遊びは天候による影響も大きい。そこを強化するため、陶芸やそば打ち体験などの屋内体験企画も増やしていきました。
しばらくして、あるとき購買データを確認すると、実はM1・F1層のリピーターが思ったより伸びていないことがわかりました。逆にリピートしているのは、小さいお子さんがいるファミリー層だったんです。週末、子どもをどこに連れていくかが大きな課題になっているニーズがわかったので、ファミリー向けの企画も充実させていきました。