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マーケティングを経営ごとに 識者のInsight

V字回復の経営を実現したアソビューの顧客戦略とリーダーシップ

顧客起点の思想を組織にどう浸透させるか

——会社全体に思想を広げ、実行できる組織づくりは、多くの企業で課題になっています。なぜ御社では実現できているのですか?現場の皆さんがついてきている理由は何でしょうか?

 論としては、経営者自ら言い続ける、やり続けるしかないと思います。採用基準の話をしましたが、その後の入社研修も、僕が必ず直接実施しています。ユーザーインタビューも、基本的にすべて同席しています。さすがに聞き手は、メンバーの経験値のために現場に任せるようになりましたが、常に顧客の生の声を聴いているので、僕の判断にみんなも納得してくれます。

 社内で使っているSlackでも、誰の発言かも自社の都合も関係なく、お客様の役に立つかという議論がなされるのをみんなが見ています。その中で、お客様が望んでいることを選ぶという経営の姿勢を常に崩さない。結果的に現場のメンバーにも同じ思いが浸透し、「お客様のためなら何を発言してもいい」という心理的安全性のもとに何でも言える空気ができていきます。そうして顧客起点の思想が組織に根付き、行動指針にもなっていくのだと思います。

 また、経営層だから偉いといった雰囲気が生まれないようにも意識していますね。よくメンバーを自宅に招いて、僕が料理を振る舞ったりするんですが、意外と普通ですねと言われたりします(笑)。

 経営者は自社のミッションを壊れたラジオのように繰り返しますが、僕もそうなんです。トップの発言力には、やはり一定の強さがあります。みんながついてきてくれているとしたら、ベースに「foryou」があった上で、どのシーンでも「お客様の声を聴いたのか、どう言っているのか、この案はお客様が望んでいるからやるよ、インタビューには僕もいるぜ」というのを徹底しているからではないかと思います。

 トップがお客様重視と言いながら、顧客に会って話を聞いていないなら、まったく説得力がありません。だから顧客を理解する場にいることは、大事にしています。BtoBでも同じで、施設にうかがった際は、何か困っているところはないかと小一時間オペレーションを拝見したりもします。それからお声掛けして、現状をうかがったりしますね。

——ユーザーインタビューの他に、データも顧客の解像度を上げるために使っていますか?

 はい。ただし、ただデータがあるだけではダメで、仮説を立てないと意味のある分析ができません。そして、仮説は顧客を知らないと立てられない。仮説立案はクリエイティビティを要するので、インプットがないとアウトプットにもつながらないのです。

 簡単な例だと、東京にお住まいのファミリーで年3回以上「アソビュー!」を使っている方にインタビューし、どのくらいのタイミングで意思決定して、どういう金額なら納得感があるのか、他にどこに行っているのかなどを聞いて初めて、施設Aのチケットを買った人は、施設Bのチケットも買いそうだとひらめくので、その併用データを出してもらって施策になりうるかを検討する。顧客のニーズを知らないと分析の切り口が見えない、それに尽きます。

狙うは海外進出生活や文化の理解がカギ

——今後を考えると、山野さんの強いリーダーシップを継承する人材の育成が必要ですね。

 確かに、現場からどんどん顧客ニーズを踏まえた施策の案が上がるようにするのは簡単ではないですし、経験が必要なので、BtoCでは最終的には僕が意思決定をしています。ただ、BtoBはSaaS事業の管掌役員の米山が判断しています。毎週のように壁打ちをしているので、考えは共有していますが、基本的には任せています。

 僕がメディア対応をすることが多いので目立っていますが、決して僕だけが率いている会社ではありません。各事業にリーダーがいますし、冒頭で紹介した体験ギフトは若手が新卒入社2年目で発案し、現在責任者をしています。その意味では、カルチャーの共有含めて組織として順調に成長していると思います。

——では、たとえば10年後の中長期的な展望は?

 主に3つあります。まず、「遊び」にまつわる生活者のペインポイントがまだまだ解決しきれていないので、それを汲みながら日本中にアソビューの利用を広げていくこと。1億2,000万人の人口のうち、まだ会員700万人です。M1・F1層、ファミリー層のニーズはある程度わかってきましたが、シニアの方や学生さんなどは把握しきれていないので、理解を深めて施策に転換していきます。

 2つ目は、パートナーである施設さんの数を増やすこと。こちらも国内15万施設ほどのうち、契約しているのはまだ1万程度です。中小の事業者も多く、システム投資などが難しいので、そこを僕らが代替して経営の生産性を高め、サステナブルな事業経営の基盤づくりを推進します。それが、BtoCの遊び産業の生産性や継続性を担保することになる。次の10年で一定の成果を上げたいです。

 最後はやはり、海外進出です。テック系のスタートアップは海外勢に水をあけられているイメージもありますが、メルカリ、NewsPicks、ビザスクなど、いつも刺激をもらっているスタートアップの先輩や友人たちが海外に活路を見いだそうとしています。海外の顧客に対しても課題解決していく、メイドインジャパンの会社が増えなければという危機感がありますね。そこに我々も一矢報いたいです。

——「遊び」は万国共通ですから。

 そうですね。とはいえ、実は何を「遊び」と捉えているかは、かなり文化や民族性によって違うんです。インドなら、チャイを飲みながら店の軒先でのんびりすることも余暇の楽しみで、遊びです。それならスマホは普及しているので、家を出る段階で好みのチャイを注文できるのはどうか、などアイデアが浮かびます。顧客の文化や習慣の理解とともに、取り組んでいきたいです。

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2022/10/25 09:30 https://markezine.jp/article/detail/40320

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