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V字回復の経営を実現したアソビューの顧客戦略とリーダーシップ

 「遊び」をキーワードに、BtoC、BtoBの両面で事業を展開するアソビュー。2011年、代表の山野智久氏が創業して以来、着実に事業を伸ばしてきた。そこで見舞われたのが、コロナ禍だ。外出自粛によりレジャー産業が大きな打撃を受け、売上は前年比95%減。「何もしなければ潰れる、ならばやるしかない」と、顧客であるレジャー施設の苦境を助ける施策を打ち出し、ユーザーの支持も集めてV字回復を遂げた。なぜ、同社は未曽有の危機を乗り切れたのか。「お客様の役に立つか」だけを判断基準にしてきたという山野氏に、顧客を徹底的に重視する事業運営と組織文化を聞いた。

※本記事は、2022年10月25日刊行の定期誌『MarkeZine』82号に掲載したものです。

独自の「遊び」の切り口で幅広い事業を展開

——御社は、BtoCとBtoBの両面で事業を展開されています。まず、どういった考え方で事業を広げられてきたのか、うかがえますか。 

 当社は一貫して「遊び」をキーワードに、様々な遊びの領域に関わるステークホルダーの課題解決に取り組んできました。BtoCでは、全国のレジャー施設やアウトドア体験、陶芸やそば打ちなど、2万6,000を超える体験を扱うサイト「アソビュー!」を運営しています。会員数は700万人まで伸び、最近では体験を贈れる「アソビュー!ギフト」も人気ですね。

 一方、BtoBでは遊びを提供する観光・レジャー・文化施設向けにDX推進SaaS「ウラカタシリーズ」を展開しています。さらに、遊びに行くとなると地域がフィールドになることも多いので、地方自治体と連携してプログラム開発の支援などもしています。

 最近では、メーカーの「自社商品を通して遊びの市場を彩りたい」というニーズを受け、プロモーション支援をすることもあります。“車”で出かけるとか、雨が降れば“レインコート”を着るとか、意外と遊びに関連した商品は多いんですね。事業としては多様ですが、全部「遊び」から派生しているのが、当社の特徴です。

アソビュー 代表取締役CEO 山野智久(やまの・ともひさ)氏明治大学法学部卒。2011年アソビュー創業。レジャー×DXをテーマに、遊びの予約サイト「アソビュー!」、観光・レジャー・文化施設向けバーティカルSaaS「ウラカタシリーズ」を展開。観光庁アドバイザリーボード、経済同友会観光再生戦略委員会副委員長。著書『弱者の戦術』(ダイヤモンド社)
アソビュー 代表取締役CEO 山野智久(やまの・ともひさ)氏
明治大学法学部卒。2011年アソビュー創業。レジャー×DXをテーマに、遊びの予約サイト「アソビュー!」、観光・レジャー・文化施設向けバーティカルSaaS「ウラカタシリーズ」を展開。観光庁アドバイザリーボード、経済同友会観光再生戦略委員会副委員長。著書『弱者の戦術』(ダイヤモンド社)

——「遊び」という切り口では市場規模をどのように見積もっているのですか? また、なぜこの切り口を設定したのでしょうか?

 市場規模は、約30兆円と算出しています。レジャーや旅行など既存の業界のデータと、たとえば年に何回くらい遊びに出かけ、いくら使うのかといった我々のユーザーへの調査をもとに見積もっています。

 実は、この切り口自体が、僕は「顧客起点」だと考えています。市場規模が既に算出されているような既存の業界は、いわば産業界が分類しやすいようにくくったもので、消費行動から紐づいた概念ではありません。デート市場、おでかけ市場と言っても、顧客は明確に区別していませんよね。すべて「遊び」です。

 既存の切り口は、業界の慣習だから聞き慣れているだけ。顧客の視点で疑うことから始めるのが重要だと思っています。本来の消費行動を切り取るには「遊び」が適切だと思うので、一貫して遊びの市場に焦点を当ててきました。

M1・F1層重視からファミリー層にも注力

——これまで運営される中で、メインの顧客の変遷もあったかと思います。創業時からどのように変わっていったかをうかがえますか。

 起業当初のターゲットは、自分でした。当時は20代で、独身男性が「週末に何か楽しいことないかな」とレジャーを探すのに便利に使えるサービスとして立ち上げたのです。なのでメインはM1(男性20〜34歳)・F1(女性20〜34歳)層で、パラグライダーやダイビングなど、インパクトのあるアクティビティーを中心にそろえていました。

 ただ、インパクトのある遊びは屋外が中心で、夏のシーズンが多く季節性の影響が大きい。かつ屋外の遊びは天候による影響も大きい。そこを強化するため、陶芸やそば打ち体験などの屋内体験企画も増やしていきました。

 しばらくして、あるとき購買データを確認すると、実はM1・F1層のリピーターが思ったより伸びていないことがわかりました。逆にリピートしているのは、小さいお子さんがいるファミリー層だったんです。週末、子どもをどこに連れていくかが大きな課題になっているニーズがわかったので、ファミリー向けの企画も充実させていきました。

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2022/10/25 09:30 https://markezine.jp/article/detail/40320

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