※本記事は、2022年10月25日刊行の定期誌『MarkeZine』82号に掲載したものです。
特集:2023年・広告の出し先
─ 2023年は広告の断片化が加速。台頭する3つの広告配信先(本記事)
─ 広告面としてどこまで使えるか? 2022年、日本のリテールメディアの現在地
─ 2022年はCTV広告拡大の転換点だった。Googleに聞く、YouTube CTV広告の概況
─ ソーシャルメディアの処方箋。「Snapchat」が今Z世代に愛される理由と、広告媒体としての可能性
─ 第5のデジタル広告カテゴリーへ 活用広がるオーディオ広告の現在地と可能性
─ 国内でも登場中 新たな広告の場に注目
─ 【特集】今目をつけておくべき場所はどこか?「2023年 広告の出し先」を特集
ネット広告は断片化と収束を繰り返してきた
──2022年は「Microsoft Advertising」が日本で展開を開始するなど、新しいプラットフォームの台頭、競争が予感される1年だったと思います。2023年の広告配信先はどのように変化していくと思いますか。
ネット広告はフラグメンテーション(断片化)と収束を繰り返しており、2023年は断片化が加速すると考えています。最初に断片化が始まったのはSNSが台頭してきたタイミング。アドテクノロジー事業者の登場によってさらに断片化は加速しましたが、その後収束が進みGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)をはじめとしたプラットフォーマーの寡占状態となりました。
しかし、海外でGDPRなどのプライバシーを保護する法律が施行され、日本国内でも個人情報保護法が改正されました。また、インターネットブラウザを提供する企業が自らCookieを廃止する規制を行い、広告主もこれまで通りの配信だけでは立ち行かない状況となりました。このような動きから、広告の断片化が始まりつつあるのが現在です。
2023年、注目の3つの配信先
──断片化が進み、新たな広告配信先がどんどん登場してくるとのことですが、具体的にはどのようなものが出てくるのでしょうか。
大きく3つの配信先のカテゴリーがあると思います。1つ目は新たなプラットフォーマーです。GAFAのように大量のIDを持つ企業の広告事業が成長しているのを見て、先ほどの質問に出てきた「Microsoft Advertising」を提供するマイクロソフトやPinterest、Snapchatなどが続々と広告事業を本格化しています。
2つ目は、リテールメディアです。プラットフォーム以外の事業会社もIDを持っており、その代表となるのがECやリテール事業を展開する企業です。属性データはもちろん、購買データも持っており、特にドラッグストアやスーパーでは購買頻度も高いことから、顧客の趣味・嗜好を把握できています。そのため、高い顧客解像度で広告配信できる可能性を秘めています。日本ではこれからですが、欧米ではすでに具体的な取り組みが進んでいます。
そして、3つ目は私が考えた造語ですがX-メディアの台頭です。X-メディアとは、リテール以外で広告事業に乗り出そうとしているプレーヤーを指します。たとえば、米国ホテルグループのマリオット・インターナショナルは米ヤフーと提携し、広告主がマリオットの顧客に対し広告配信を行える「マリオット・メディア・ネットワーク」を立ち上げました。
米国ではこのような取り組みが様々な業界で起きており、「Everyone is Ad Network」の状態になりつつあります。日本国内でも、通信業界や金融業界などで広告事業を立ち上げる動きが進んでおり、2023年から続々と登場する可能性が高いです。