AI技術の発展にともないマーケターが磨くべき3つの力
──AI技術が発展することで、今後の広告クリエイティブやマーケターに求められるスキルはどう変わるのでしょうか。
中平:マーケターは、1.0、2.0、3.0と進化してきていると考えています。マーケター1.0はテレビCMやチラシがまだ全盛だった頃の、オフラインのマーケティングを中心とするもの。マーケター2.0は、インターネットが普及したWeb広告中心の時代です。マーケターはWebデザイナーにクリエイティブ制作を依頼し、Webデザイナーはフォトストックサービスで検索するなどしてデザインを完成させ、Google広告やFacebook広告としてユーザーにアプローチしてきました。
これからのマーケター、すなわちマーケター3.0には、2つの方向性があると思っています。1つは、マーケターが直接AIツールを操作しながらクリエイティブを作っていくというもの。もう1つは、AIと対話しながらクリエイティブをつくり上げるデザイナーなどの専門家と上手に協業していく未来です。
また、マーケターはスタンスも変えていかなくてはならないと考えています。2.0の頃はCTRがどう、CVRがどうといった数字で判断し、試行錯誤する、ある意味では「体温のないマーケティング」を行うマーケターがほとんどでした。数字ばかりを追うことに必死になってしまい、「そもそも自分たちの顧客とは誰であるか」「なぜ自社の商品を買ってくれているのか」を見落としがちだったように思います。しかしマーケティングにおいては、本来そういった「顧客理解」をきちんとすることが重要なのです。
自分たちの顧客が、何が好きで何が嫌いなのかを、AI生成のクリエイティブで試し、理解する。このプロセスが当たり前になる時代が既に来ていますし、これからさらに加速すると思っています。AI活用によってクリエイティブを作るスピードは速くなるので、試行回数が増やしやすく、その分顧客理解も早く進むようになります。
島田:顧客を理解するために顧客に直接話を聞いたり、現場に足を運んだりすることを通して得た一次情報から顧客インサイトをキャッチし、これからの顧客の姿を想像する力が求められる時代になりました。
今後もデータに基づく単純作業や共通点の抽出、各種データの分析など、AIが得意とする分野はどんどん自動化が進み、効率化されていくので、ヒトの意思や好き嫌いなどの思考や感情をくみ取った上でのコミュニケーションなど、「数字で測れない領域」「人間にしかできない領域」に価値がどんどん寄っていくだろうと感じています。この時代にマーケターが価値を出すためには、そういった領域への感度を高めていくことが重要です。
中平:一次情報をきちんとマーケターが地肌で感じて、仮説を立てて、それをAIなりデザイナーなどのクリエイターなりに適切にインプットする。まとめますと、マーケターに求められるスキルは、ユーザーの情報を整理して設計する力。そこから仮説を想像する力、そしてクリエイターやAIとコミュニケーションする言語化力。この3つの力であると僕は考えています。
AIが民主化する時代にマーケターに必要なもの
──最後にガラパゴス社の今後の展望と、これからの時代にマーケターはAIをどう活⽤していくべきであるとお考えか教えていただけますでしょうか。
中平:僕たちは、「AIR Design」を通してマーケターの良い仮説構築をお手伝いすることやクリエイティブを提供することは変わらずに行っていきます。その裏側で、ふんだんにテクノロジーを使いますし、それでクリエイティブ制作を効率化することで、よりマーケターに品質の高いデザインをスピーディーに提供するという形で付加価値を出していきたいと思います。
島田:今は時代の変わり目で、いろいろなテクノロジーの境界線を越える瞬間が来ていると思います。というのも、これまでにも絵を生成できるAIは存在したのです。ただ、今起こっているのは、その精度が格段に上がってきていることと、AIが民主化されてきているということ。プログラミングの知識がない一般の人が、サーバーの環境構築をしなくても、AIとデザインを組み合わせて使えるツールが出てきている。これが大きな変化です。
クリエイティブはマーケターにとって大きな武器となります。時代が変わるレベルのテクノロジーが出現している今、その技術がどういうものか、何ができて何ができないのか、きちんとアンテナを張って情報を得ていくべきだと思います。
