SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

おすすめのイベント

おすすめの講座

おすすめのウェビナー

マーケティングは“経営ごと” に。業界キーパーソンへの独自取材、注目テーマやトレンドを解説する特集など、オリジナルの最新マーケティング情報を毎月お届け。

『MarkeZine』(雑誌)

第100号(2024年4月号)
特集「24社に聞く、経営構想におけるマーケティング」

MarkeZineプレミアム for チーム/チーム プラス 加入の方は、誌面がウェブでも読めます

MarkeZineプレミアムセミナー

電通マーケ部門の新人が必ず教わる「ヒットを生み出すリサーチ術」(2)「セールスポイント」の見つけ方

 「実務」「実践」「再現性」の切り口から、マーケティングの次の一手を探る「MarkeZineプレミアムセミナー」。7月22日実施回には、電通の戦略プランナー阿佐見綾香氏が登壇。「電通マーケ部門の新人が必ず教わる『ヒットを生み出すリサーチ術』」と題して、講演を行った。著書『電通現役戦略プランナーのヒットをつくる「調べ方」の教科書』(PHP研究所)をベースに、電通のマーケティング部門で時間をかけて習得するマーケティングリサーチのいろはを解説。レポート後編となる本稿では、顧客分析リサーチの最後のプロセス「セールスポイントの発見」について、適切なインサイトを発見するために必要な考え方やフレームワークを解説する。

※本記事は、2022年10月25日刊行の定期誌『MarkeZine』82号に掲載したものです。

本質的な悩みや欲求(インサイト)の発見

 記事前編では、顧客分析リサーチの3つのプロセスのうち、2つを説明してきた。後編では、プロセス3「セールスポイントの発見」において必要な考え方やフレームワークを解説する(図表1)

(タップで画像拡大)
図表1 ターゲット設定のプロセス全体像(タップで画像拡大)

 セールスポイントの発見に必要な最初の分析は、「インサイトの発見」だ。「顧客の深くて本質的な悩みや欲求を発見してから、カスタマージャーニーで顧客を動かすための施策に落とし込んでいきます」と阿佐見氏。

 では、そもそもインサイトとは何か。阿佐見氏は「顧客自身が言語化できていない無意識の領域まで深く洞察して見抜く本質のこと」と説明する。消費者が自分の行動のうち意識しているのは5%で、残りの95%は無意識に行われているという調査結果もある。インサイトの発見のプロセスは「一部だけ顕在化している人の行動や意識への洞察を頼りに、その底に眠る本質的な悩みや欲求を発見していく」イメージだ。

 インサイト発見のやり方の前に、前提として、プランニングの基本構造を押さえておきたい。

 プランニングを行う際は、既に顕在化している悪い状態から理想的なゴールを設定する。その変化を起こすために、戦略と戦術を考えていく(図表2)

(タップで画像拡大)
図表2 プランニングの基本構造(タップで画像拡大)

 阿佐見氏は自身が手がけた、「つけまつげ」の売上復活を事例に説明する。2011~12年にヒットしていた「DOLLYWINK」のつけまつげだが、2016年には「(つけまつげは)ケバい・バレる」といったネガティブな印象があり、売れなくなっていたという。これを図表2のプランニングの基本にあてはめると、問題は「つけまつげはケバい・バレそうという認識」で、「バレないナチュラルなつけまつげが使われる」というのが理想的なゴールになる。

 すると、派手なつけまつげのイメージを払拭するために、バレないつけまつげを作るというアプローチになりそうだが、実は実際に「バレないつけまつげ」はたくさん発売されたものの、売れなかったという。

 このように、顕在的な浅い悩みからゴールを設定するとよくある戦略・戦術になりがちだ。そこで阿佐見氏はペルソナを深く洞察して、インサイトを見つけることで、ゴールを設定した。

 発見したインサイトは「マスカラもマツエクも結構面倒。より便利なものがあるなら使いたい」というもの。このインサイトからゴールを設定すると、望ましい理想的な状態は「今のつけまつげは進化していて、マスカラやマツエクより使いやすい、とターゲットの認識が変わる」ということになる。この変化を起こすために「10秒マツエク(新・部分用つけまつげ)」という戦術でアプローチし、リニューアル後の商品は大ヒットした(図表3)

(タップで画像拡大)
図表3 「10秒マツエク(新・部分用つけまつげ)」の戦略プランニング(タップで画像拡大)

 インサイトの発見で大事なポイントは「カテゴリーインサイトとヒューマンインサイトのどちらにも偏重しないキーインサイトを見つけること」だと阿佐見氏。カテゴリーインサイトは特定の商品カテゴリーやブランドに対する認識や感情、悩みや欲求であるのに対し、ヒューマンインサイトは商品と関係なく存在する、人としての普遍的な悩みや欲求のことだ。インサイトを探る際、カテゴリーインサイトに偏りがちだが、顧客を動かせる戦略と戦術は、普遍的で本質的なヒューマンインサイトも含むことで見つけられる

 たとえば「つけまつげは古いもの、時間がかかりそうというイメージ」というのはカテゴリーインサイトだが、「時間を効率的に使いたい」「節約したい」といったヒューマンインサイトを掛け合わせることによって「10秒マツエク(新・部分用つけまつげ)」のような戦術が生まれる。

 ヒューマンインサイトを見つける手がかりとして、阿佐見氏は人間の16種類の心理的欲求を紹介した(図表4)

(タップで画像拡大)
図表4 インサイト発見の手助けになる人間の普遍的な心理欲求(タップで画像拡大)
『電通現役戦略プランナーのヒットをつくる「調べ方」の教科書あなたの商品がもっと売れるマーケティングリサーチ術』(PHP研究所)
『電通現役戦略プランナーのヒットをつくる「調べ方」の教科書 あなたの商品がもっと売れるマーケティングリサーチ術』(PHP研究所)
この記事はプレミアム記事(有料)です。ご利用にはMarkeZineプレミアムのご契約が必要です。

有料記事が読み放題!初月1円キャンペーン中!

プレミアムサービス詳細はこちら

MarkeZineプレミアム for チーム/チーム プラスをご契約の方は
・こちらから電子版(誌面)を閲覧できます。
・チームメンバーをユーザーとして登録することができます。
 ユーザー登録は管理者アカウントで手続きしてください。
 手続き方法の詳細はこちら

次のページ
インサイト発見の秘訣:逆説的アプローチ

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • Twitter
  • Pocket
  • note
関連リンク
MarkeZineプレミアムセミナー連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

岡田 果子(オカダ カコ)

IT系編集者、ライター。趣味・実用書の編集を経てWebメディアへ。その後キャリアインタビューなどのライティング業務を開始。執筆可能ジャンルは、開発手法・組織、プロダクト作り、教育ICT、その他ビジネス。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2022/11/14 09:30 https://markezine.jp/article/detail/40382

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング