「生活者1万人アンケート調査」でわかることとは?
今回紹介する書籍は『日本の消費者はどう変わったか:生活者1万人アンケートでわかる最新の消費動向』(日本経済新聞出版)。著者は、野村総合研究所のマーケティングサイエンスコンサルティング部にて、データに基づくマーケティング支援や生活者の分析に携わる松下東子氏と林裕之氏です。
「生活者1万人アンケート調査」は、同社が3年に一度実施している大規模調査です。1997年より開始された同調査は、生活価値観や人間関係・就労スタイルなどの日常生活や消費動向全般にまつわるアンケートを実施し、生活者の実態を明らかにしています。
本書ではコロナ禍以降となる2021年までのデータを収録しています。その調査データから浮かび上がった生活者のインサイトや消費傾向の変化とは、どのようなものがあるのでしょうか?
デジタル化の波は、若年世代だけではない
「商品・サービスを購入する際の情報源の推移」では生活者の購買における情報収集チャネルの傾向を示すデータが紹介されています。コロナ禍前後の推移として、以下のことがわかりました。
コロナ禍で利用が増加した情報源:
ネット上の売れ筋情報/評価サイトやブログ
コロナ禍で利用が減少した情報源:
テレビのコマーシャル/ラジオ、新聞、雑誌の広告/テレビ・ラジオの番組/新聞の記事/雑誌・フリーペーパー/折り込みちらし/店舗の陳列商品・表示情報/販売員などの意見
2018年から2021年で「ネット上の売れ筋情報」が6%増、「評価サイトやブログ」が8%増となり、デジタルメディアの影響力の拡大が見られます。また、このデータを年代別に区切ると、この2項目はどの年代でも増加しています。40・50代の中高年層や60・70代のシニア層も、割合こそ若年世代よりは低いものの、デジタルメディアでの情報収集が浸透し始めている様子が窺えます。
デジタル化する社会、リアル店舗が提供できる価値とは?
一方で、情報収集や購買など日常的に利用するリアルチャネルは減少傾向にありました。たとえば、総合ショッピングセンター、モールや大型家電量販店、百貨店・デパートといった買い回り品購入チャネルは、いずれも利用割合が減少しています。著者らは、この傾向は避けられないものであるとしつつ、「リアル店舗に対して消費者から期待される価値自体はコロナ以前とは変わっていない」と指摘しました。
価値の提供方法を変えて対応した事例として、そごう・西部の手掛けるショールームに特化した店舗「チューズベース・シブヤ」を紹介。同店舗は、リアル店舗を呼び水にオンライン販売を促す形態となっています。来店者はテーマごとの展示室エリアを回り、購入は専用サイトで行い、持ち帰りか自宅への発送か選べるなど自由度の高い買い物体験ができます。同時に、リアル店舗で商品と出会うエンターテインメント性も実現しました。
この点について著者らは、「リアルでしか享受できない体験、エンターテインメント性、出会いが実現できる店舗ではショッピング時の体験や気持ちの高揚から当初の目的買い以外の商品を買うというセレンディピティ(偶然の素敵な出会い)が生まれがち」であると解説しました。
また、リアル店舗を生かした取り組みとして「参照度が増えている口コミという観点からも、思わずSNSに投稿したくなるような話題性のある顧客体験を生み出す取り組みを積極的に行うことが重要である」と著者は強調しました。
本書では、他にもコロナ禍で増えたデリバリー・サブスクリプションといった新たなサービス形態のほか若者の流行感度など、アフターコロナのマーケティングに役立つ生活者のデータを分析しています。今後の消費者動向や生活者のインサイトをデータで客観的に理解したい方は、ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。