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マーケター必読!論文のすすめ

スポーツマーケティングから学ぶ、ファンとの関係構築や組織マネジメントの共通項【論文紹介】

スポーツ観戦者のセグメンテーション

 「にわか」という言葉は、近年、特定の人々を指す言葉として定着しているようです。一般的に「にわか」とは、流行や周りの人の影響を受け、急にファンになる人々を指し、にわかファンとも呼ばれます。急に特定のスポーツやチームのファンになった人々は勿論、音楽アーティスト、アニメなどの一時的ファンにも使われるようです。ブームによるファン増加は良いことですが、マーケターは自社の製品やサービスの顧客がどのようなセグメントで構成されているのか、「にわか」はどれくらいの規模かを把握しておく必要があります。そのうえで、長期的視点から、「にわか」をどのようにロイヤルな顧客に変えていくかを検討することは、重要なマーケティング課題と言えます。

 早稲田大学の松岡宏高教授、姜泰安研究員、立命館大学の和田由佳子専任講師の論文「ラグビー観戦者のセグメンテーション:Two-Stepクラスター分析の活用(PDF)」は、5つのラグビー観戦者のセグメントを示し、将来ロイヤルな顧客に成長する可能性がある「潜在的ロイヤルファン」を特定しています。

 松岡教授らは、ラグビーの試合会場を訪れた観戦者に対して、ファン歴、観戦回数、観戦理由などについて質問紙調査を行い、3,140名の回答を得ました。Two-Stepクラスター分析の結果、「一時的観戦者」、「潜在的ロイヤルファン」、「現代的ロイヤルファン」、「長年のロイヤルファン」、「ラグビー経験者」の5つのセグメントを特定しました。

 さらに、年齢などのデモグラフィック変数やチケット価格の評価なども合わせて分析した結果、観戦動機は「一時的観戦者」と似ているものの、観戦回数がやや多く、比較的知識もある「潜在的ロイヤルファン」が存在すること、「現代的ロイヤルファン」が観戦チケットの価値を比較的高く評価していることなど、興味深い知見を示されています。潜在的なロイヤル顧客の発見は、消費財のマーケティングを考える上でも示唆のある興味深い結果です。

スポーツ観戦者の世代間の違い

 スポーツ観戦の満足度は、どのような要因によって決まるのでしょうか。観戦者の競技経験の有無やファン歴により要因が異なることは想像できますが、世代間で要因に違いはあるのでしょうか。たとえば、テレビで「スクール☆ウォーズ」という高校ラグビーを取り上げたドラマに接する機会があった世代と、接する機会がなかった世代では、ラグビー観戦の満足度を規定する要因に違いはあるのでしょうか。

 山口大学の西尾建准教授の論文「スポーツ観戦者の世代別コホート分析―ラグビーワールドカップ2019日本大会観戦者調査から―(PDF)」は、ラグビー観戦者の4つの世代の満足度がどのような要因により決まるかを分析し、世代別の規定因を明らかにしています。西尾准教授は、2019ラグビーワールドカップ日本大会の観戦者対象の6,237名のWeb調査データをもとに、世代別、さらに世代内のGender別・ファン歴別の満足度の規定因の分析を行いました。

 分析の結果、X世代、Y世代、BD世代(ベビーブーマーと団塊世代)の男性ファンは一流選手のプレーを見ることが満足度に大きく影響しているのに対し、X世代やY世代の女性ファンは、好きな選手を応援することや、スポーツ観戦自体が好きであることが満足度に大きく影響していること、BD世代の女性は、会場近くに魅力的な観光地があることが満足度に大きく影響していることを明らかにしました。

 また、「一生に一度」という広告フレーズが、若い世代よりもBD世代で、満足度に強く影響していることも示されています。スポーツ観戦に限らず、セグメントにより、満足度を規定する要因が異なることはよくあります。西尾准教授は、ラグビー観戦者の分析を通じて、この点を明らかにしています。

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スポーツリーグのマネジメントとパーパスの関係

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この記事の著者

石淵 順也(イシブチ ジュンヤ)

 関西学院大学商学部教授、博士(商学)。専門分野:消費者行動論、マーケティング・リサーチ、商業論。受賞:日本商業学会優秀論文賞(2015年)、日本マーケティング学会マーケティングジャーナルベストペーパー賞(2016年)。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2022/11/11 08:00 https://markezine.jp/article/detail/40497

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