子育てママは、コロナ禍でコスパ重視の傾向に
連載第2回となる本記事では、現代子育て世帯の意識・価値観について調査データをもとに分析していきます。第1回「データでわかる!子育て世帯にアプローチする際、押さえておくべき3つの特徴とは」で紹介した子育て用品・サービス市場の特徴「ターゲットが短期間で入れ替わる」「購入者と使用者が異なる」を押さえることは、分析のうえで非常に重要です。
まず子育て世帯の意識・価値観において、2018年から2021年の変化を見ていきます。この期間はコロナ感染者が増え始め、2020年4月7日には7都道府県に初めて緊急事態宣言が発令されました。
図表1は、2018年から2021年にかけて実施した妊婦および1歳以下の子を持つママを対象とした調査の結果です。「休日は家族と過ごす」と回答(「あてはまる」「ややあてはまる」の合計)した人は、継続して9割を超えています。
コロナ流行前の2018年2月、流行中の2020年8月と2021年1月、そしてやや感染者が減った2021年の11月で意識・価値観が大きく変化したものに注目してみましょう。すると、図表1内の青点線で囲った2項目の増減が顕著です。
ここから、「とにかく安くて経済的なものを購入する」割合が増え「多少値段が高くても品質の良いものを購入する」割合が減っていることがわかります。つまりコロナ禍で、コストパフォーマンス重視の購買行動に注力した人が増加したのです。
このような傾向の変化を押さえつつ、次に具体的な子育て世帯の必需品「粉ミルク」や「抱っこひも」の購買理由を、データを用いながら紐解いていきます。
粉ミルクのメーカー選びに影響を与える要素とは?
子育てをスタートするママ・パパの多くは、子育て用品・サービスに関してこれまで接点がなく知識もありません。自分のものを購入するならまだしも、大切な子どものために使用するものとなれば不安は一層深まることでしょう。
我々は乳幼児を育てるママを対象に、「自分自身が乳幼児の頃に飲んでいた粉ミルクのメーカー名」を自分の親に聞いてもらうとともに「現在育てている自分の子どものために最初に購入した粉ミルクのメーカー名」を尋ねました。
その結果(図表2)、明治の粉ミルクを飲んでいたママ84名のうち半数以上の60.71%が、自分の子どもにも同じ明治の粉ミルクを飲ませています。また、森永乳業の粉ミルクを飲んでいたママ67名のうち47.76%が自分の子どもにも森永乳業の粉ミルクを飲ませており、和光堂や雪印乳業など他社の粉ミルクを飲んでいた場合も同様の結果が出ました。
すなわち、いずれも自分が昔飲んでいたメーカーの粉ミルクを選ぶ人が、他ブランドの割合よりも多くなっているのです。このことから、数十年前にママ自身が飲んでいた粉ミルクメーカーが、現在自分の子どもに飲ませている粉ミルクメーカー選択時にも影響を及ぼす可能性が伺えます。
これは、「失敗したくない」と少しでも安心できるものを求め、自身の親の意見や信頼できる先輩ママの口コミ、推奨・No.1ロゴなどを参考にする人が多いからなのでしょう。昔から良いと言われている商品、周囲が良いと言っている商品がさらに売れていくのは、この市場の一つの特徴だと考えられます。