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データで紐解く、現代子育て世帯のインサイトとその変化

現代子育て世帯のブランド選択の要因を探る/効果的なメッセージを届けるポイントとは?

意識・価値観の違いがブランド選択に影響を与える

 次に「抱っこひも」の購入経験がある妊婦および子どもがいる人に、「仕事やプライベートよりも、子育てを楽しみたい」「子育てで、仕事やプライベートを犠牲にしたくない」のどちらの考えを持っているか選択してもらいました。それを、A社とB社それぞれの抱っこひもの購入者で比較した結果が図表3です。

図表3 購入した「抱っこひも」ブランド別、意識・価値観の違い(1) 出典:株式会社コズレ 子育てマーケティング研究所(2021年6月調査、分析対象:「妊娠中を含む、子どもがいるママ」3,249名)
図表3 購入した「抱っこひも」ブランド別、意識・価値観の違い(1)
出典:株式会社コズレ 子育てマーケティング研究所(2021年6月調査、分析対象:「妊娠中を含む、子どもがいるママ」3,249名)

 A社の抱っこひも購入者の約半数は「子育てで、仕事やプライベートを犠牲にしたくない」を選択しています。一方、B社の抱っこひもを購入した人は「仕事やプライベートよりも、子育てを楽しみたい」と回答している割合が9割弱と非常に多くなりました。

 同様に、妊婦および子どもがいて抱っこひも購入経験がある人に「ベビー用品は、子どもらしいデザインのものがよい」「ベビー用品は、子どもらしいデザインを主張しないものがよい」のどちらがあてはまる考え方か、選択してもらいました。それを、A社とB社それぞれの抱っこひもの購入者で比較した結果が図表4になります。

図表4 購入した「抱っこひも」ブランド別、意識・価値観の違い(2) 出所:株式会社コズレ 子育てマーケティング研究所(2021年6月調査、分析対象は「妊娠中を含む、子どもがいるママ」3,249名)

図表4 購入した「抱っこひも」ブランド別、意識・価値観の違い(2)
出典:株式会社コズレ 子育てマーケティング研究所(2021年6月調査、分析対象は「妊娠中を含む、子どもがいるママ」3,249名)

 A社の抱っこひもを購入した人は「ベビー用品は、子どもらしいデザインを主張しないものがよい(55.56%)」と回答した割合が多いのに対し、B社は「ベビー用品は、子どもらしいデザインのものがよい(54.05%)」の割合が多くなっています。

 これらの結果から、A社は子育てを優先したい人と仕事やプライベートを優先したい人が半々の割合で選択しており、ベビー用品のデザインは子どもらしさを求めない割合がやや多い傾向にあります。一方、B社を選択するのは仕事やプライベートより子育てを優先したい人が圧倒的に多く、ベビー用品も子どもらしいデザインが良いと思っていることがわかります。

 このように、ブランド選択にも意識・価値観の違いが表れています。そのためA社とB社で取るべき戦略も異なります。たとえばB社の抱っこひもを購入する人は「仕事やプライベートよりも、子育てを楽しみたい」と考える傾向から、それに対応したメディアなどの選択や伝え方・メッセージの設計が必要でしょう。また「ベビー用品は、子どもらしいデザインのものがよい」と考えている割合が高いので、それに対応した商品設計も必要になります。

なぜ、ワークマンの訴求が子育て世帯にも響いたのか?

 ここからは、子育て世帯の価値観・意識の変化に響いた企業の事例を紹介します。まず1つ目は、「プロユース」であった従来のワークマンが一般向けの「ワークマンプラス」として、低価格ウエアにプロユースで培った高機能という付加価値をつけた例です。

 なぜここで取り上げたかというと、「高機能×低価格のサプライズをすべての人へ」というコンセプトがシンプルで秀逸だからです。前述した図表1の価値観の変化で注意すべき点は、単に「低価格なもの」に魅力を感じている人が増えているわけではない、ということです。安くて経済的なもの、つまりコストパフォーマンスに優れたものに魅力を感じているのです。

 日々の生活に忙しい子育て世帯には、マーケターが伝えたい商品メッセージの10分の1も伝わっていないかもしれません。しかしワークマンプラスはシンプルで「低価格かつ高機能」と誰にでもわかりやすい文言を用いて訴求しています。我々が日々収集している口コミの中にも、「幼稚園のママ友から『雨天時の自転車送迎に使えるよ』と聞き、防水機能のあるコートを購入しました。コスパ最高でした!」というような声が複数見られました。

 このように子育て世帯だけがメインの訴求対象ではないブランドでも、彼らの価値観・意識の変化に対応することで、ユーザーになってもらえたりその輪が広がったりする可能性があるのです。これは、第1回で紹介したベビー用品・関連サービスの市場規模は微増している点も踏まえると、重要な視点だといえます。

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いかにして「我が子に必要な値上げ」と思ってもらうか

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この記事の著者

飯野 純彦(イイノ アツヒコ)

1980年群馬県生まれ。慶應義塾大学大学院修士、博士課程を経て、滋賀大学経済学部特任講師、秋田大学教育文化学部専任講師。2017年より友人らが起業した株式会社コズレに参画。現在、コズレ子育てマーケティング研究所所長としてベビー用品・関連サービス企業のみならず、子育て世代にアプローチしたい多くの企業のマーケティング・...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2022/12/01 08:00 https://markezine.jp/article/detail/40610

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