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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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イベントレポート

マーケターにも必要な「みんながクリエイター」という視点。識者に聞く、クリエイターズエコノミーの今


存在感を増す「hobbyist」な人たち

榊原:誰かのために何かをクリエイトする、より広義なクリエイターの捉え方をされているわけですね。竹嶋さんはいかがですか?

竹嶋:今年弊社はグローバルで「Future of Creativity」という、クリエイターエコノミーに関する最新のデータと考察の調査を発表しました。その際調査上の定義として、クリエイターは「創造的な活動に従事し、SNSにおけるプレゼンスを高める目的で、これらの活動から生まれた作品を少なくとも月に1回以上SNSや他のメディアを通じて何らかの作品を発表している方々」としています。この定義でいえば職業クリエイターはもちろん、趣味で何らかの作品を発表している方も含まれます。

Adobe “Future of Creativity”より
Adobe “Future of Creativity”より

竹嶋:このクリエイターと定義される人々が、コロナ禍をきっかけに急増しています。調査の対象国において、コロナ前の2020年と直近2022年でクリエイター人口を比較すると2年間で倍以上、数字にして約1億6,500万人増えています(出典:Adobe “Future of Creativity”)。

 コロナ禍でデジタルファーストなライフスタイルに変わり、なおかつ特徴的な点としてクリエイター人口の4割ほどがα世代やZ世代など、新しい世代が占めていることがわかっています。いわゆるヤングジェネレーションの方々にとっては、自らの作品を日常的に投稿する習慣・ライフスタイルを持つ方が非常に増えているのでしょう。

明石:趣味でクリエイティブな活動をする人を、アンドリーセン・ホロウィッツというベンチャーキャピタルが「hobbyist」と呼んだんですよね。その趣味をやり続けた結果、いつしか他の仕事を辞めてそれだけで食べていけるようになり、そしてスターになっていくというクリエイターの階段について説明しています。

 しかし現在は、この趣味でクリエイターをしているhobbyistがそのまま経済活動に結びつきつつある時代になっています。

現在のクリエイターズエコノミーをどう捉えればよいのか?

榊原:そのような状況の中、現在のクリエイターズエコノミーについて皆さんはどう捉えていらっしゃいますか?

竹嶋:先ほどもお話にあった通り、今はクリエイターの作品が流通しやすくなり、参入障壁が低くなって様々な方がクリエイティブを発表できる環境です。

 クリエイティブの流通が増えれば増えるほど、それにともないクリエイターを取り巻く経済が全体的に活性化します。hobbyistの話が出ましたが、職業クリエイターだけでなく趣味で副業的にクリエイターをやるような人もすべて含めて、作品が流通しやすくなった結果できた経済圏がクリエイターズエコノミーだと捉えています。

外山:国の立場から見ていると、「儲けることだけが正義じゃない」という価値観の社会になった中で企業として何をしていけばよいのかがわからない、というケースが出てきたと感じます。SDGsとか社会的責任を果たすために、前例もない中でどうすればいいか考える時、やはり必要なのはアイデアです。

 クリエイターって元々アイデアを出すのが好きな人たちであって、もちろんお金のためだけでやっていない方たちも多くいます。その方々の考えを活用して、もっと企業が社会に貢献できるようなるのではないでしょうか。それにともない経済圏も作られていきますから、私はクリエイターズエコノミーを「クリエイターの社会への貢献」と捉えられると考えます。

明石:今お二人からお話があった色々な経済圏とクリエイターが結びつきやすくなった結果、SNSなどでプレゼンスを高める活動をしている人のクリエイティブに対して、レバレッジが高まります。たとえば企業がTikTok用にダンス動画を作る時、TikTok話題の振り付け師に頼むとなると依頼料が10倍になったりするわけです。なぜなら、その人が作るダンスはミーム化しやすいから、その媒体力が付加価値として付くのです。

 しかも現在は制作のイニシャルコストが、機材を買ってそろえて……という時代から比較にならないくらい下がっています。動画もスマートフォン1台作れるため、ユーザー自体のクリエイター化も進んでいます。加えて、作品を発表・流通させる手段もSNSを筆頭に沢山あります。

 企業が従来のマーケティングコミュニケーションをする時、どうしてもトップダウンの形になりがちですが、「TikTok売れ」という言葉が生まれたようにクリエイター化したユーザーがブランドや商品を広めてくれたほうが大きな影響につながります。世の中の様々なジャンルのほぼすべてにクリエイターがいてもおかしくない時代だからこそ、企業も「みんながクリエイター」という意識を持ってコミュニケーションする必要性が出ていると思いますね。

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「天皇家御用達」はコンテクストを活かしたインフルエンサーマーケティング

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この記事の著者

吉永 翠(編集部)(ヨシナガ ミドリ)

大学院卒業後、新卒で翔泳社に入社しMarkeZine編集部に所属。学生時代はスポーツマーケティングの研究をしていました。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2022/12/21 16:44 https://markezine.jp/article/detail/40715

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