情報と選択肢が過多な時代、「参加したい」と思ってもらえるイベントを作る鍵とは
フライホイールの流れを意識した上で、それぞれのステージでどんな体験を提供するかは社会の潮流に合わせて柔軟に変えていく必要があります。
近年、顧客はこれまでに増してたくさんの情報を持つようになりました。企業からの広告メールは開封されない、営業電話をかけてもとってくれない、広告は読み飛ばされる……顧客側は数多ある情報の中から自分に有益な情報のみを選別して取得しようとしているため、企業側から顧客にメッセージを届けることが難しくなったと感じる方は多いのではないでしょうか。気軽にオンラインで参加できるイベントは増え続けており、継続的にマーケティングイベントに集客し成果を出し続けることが難しくなってきているという声もよく聞きます。
このような情報過多の時代、イベントも、コンテンツが「役に立つ」だけでは不十分となってきました。そこでHubSpotが重要視しているものは「つながり」です。企業と参加者の「つながり」や参加者同士の「つながり」を生み出すことを大切にしています。さきほどイベントの「共創」にも触れましたが、イベントに参加して終わりではなく、参加者が必要に応じて追加の情報を得ることができたり、参加者同士でコミュニケーションが取れたり、その後もともに学び合えるようなコンテンツや受け皿を用意しておくことが非常に大切です。
たとえば、2021年にHubSpotが「Ops Day」というイベントを実施した際、「つながり」を提供するため、以下のようにあらゆるチャネルにおいてコンテンツを実施しました。
- イベント実施前後に、3つのブログ記事を公開
- イベント参加後にダウンロード資料を送付
- 6つのコミュニティー投稿を実施
- メディアタイアップ記事広告を公開
- メディア向け勉強会の実施
ブログ記事をイベント前後に公開することで、「オペレーション」について思考し、学びを深める機会を提供する。コミュニティーで「オペレーション」に興味をもつ人と気軽に情報交換をしたり、質問の回答を得る。メディア記事を通して、イベントに参加できなかった人にも広く情報が届き、アーカイブコンテンツの視聴の機会が広がる。単純なハウツーの共有や一方的なレクチャーはブログ記事やホワイトペーパーだけでも担うことができます。だからこそイベントには、有益な情報収集の場であるのは当然のことながら、「参加してよかった」「勇気づけられた」「新しい出会いがあった」と感じてもらえる企画が求められるはずです。

正解ではなく「考えるきっかけ」を提供する
事業の多様化、顧客の多様化の中で、ある企業にとっては正解であるものが、他の企業にとっても正解であるとは限りません。だからこそ私たちは、正解や成功の方法を示すのではなく「考え方」をお伝えし、参加者にとって「考えるきっかけ」となるようなイベント作りを目指しています。
たとえば前述の「Ops Day」は、当社の「オペレーション・ハブ」という製品の提供開始にともなう販売促進の意味を持つイベントでした。当時、本社のある米国では「オペレーション」への課題感に対して機能の訴求をすることで価値を感じてもらえる状態でしたが、日本ではまだ「オペレーション」という言葉自体の定義が定まっておらず、浸透していない状態でした。そのため、「参加者にとって最も価値のある」インバウンドなアプローチを考えた時に、「オペレーション・ハブ」の機能を訴求するのではなく、「オペレーション」という概念を参加者とともに考えるという体験を提供することのほうが、参加者にとって学びや気づきになるのではないかと考えました。
そこで、各企業で「オペレーション」の課題に挑戦するビジネスリーダーの方々を登壇者に迎え、各社の取り組みや課題を共有することで、自社のどの業務が「オペレーション」であり、どんな意義があるのか、を考えられる時間を提供しました。結果、イベントには1,000名が参加し、「普段あまり意識していない行為について、一貫性を持つことで重要な戦略と捉えることができる、新たな気づきを得られた」「定義が柔らかいオペレーションについて、他社や先進的な事例に触れ、思考する機会になった」といった感想が寄せられました。
「考え方」を持ち帰って、社内の人と話し合ってもらう。参加者同士で考え方を深めてもらう。マーケティングイベントが、そういった「つながり」を作るきっかけになれればいいなと思っています。情報過多であり「正解のない」時代において、イベントの実施においても、情報の質に加えてどう「つながり」を生み出していけるかがより一層重要になっていくでしょうし、それが最終的にはマーケティング施策としての成果をもたらしてくれるはずです。
明日から使える思考のヒント
イベント参加者は「リード」ではなく「人」。参加者が有益な情報を得られることはもちろん、お互いの「つながり」を実感できるイベントが、最終的にはマーケティング施策としての成果ももたらす