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「一言発想法」から学ぶ、ファンの心を動かす方法

体験価値でファンを作り出す「一言発想法」の考え方〜なぜ?そのアイデアは人に話したくなるのか〜

アイデアを明確な一言で伝えやすくすると方向性が定まる

 「一言で発想すること」「一言にすること」は、想像以上にメリットがあり、シンプルかつ効果的なやり方です。一言にすることで良いアイデアが生まれ、アイデアを関係者が共有しやすくなり、生活者の話材になって伝搬し伝わる体験になり、最終的にファンになる体験へと昇華することにつながるためです。

 この一言が明確で、具体的であればあるほど、そのプロジェクトはうまくいきます。逆に不明瞭であれば、そもそもの方向性が見定まらず確信をもって前に進めません。そのうえ、ゴールイメージが共有しづらく良いアウトプットが期待できなくなります。たかが一言ですが、されど一言なのです。

 さらに、その際に重要になってくるのが「物語をつくれるか?」という視点です。言い換えると、商品やサービス、それらにまつわる一連の体験が、「人に語りたくなる物語を持っているか?」を意識する必要があります。生活者に語ってもらい、関わってもらうこと。実はここが最終的にファンになってもらえるか否かの大きな分かれ目になってきます。生活者が語りたくなるか?という視点からコミュニケーションを逆算して、体験づくりをすることがとても大切なのです。

Appleの事例にみる一言発想法のメリット

 ここで、代表的な事例として、Appleのものを紹介しましょう。Appleの創業者スティーブ・ジョブズ氏が、iPodの新商品発表会で話した有名な一言「1000曲をポケットに。」を覚えていますか。iPodの開発思想であり、その魅力を世界に紹介したメッセージです。

 iPodはそれまで10数曲ぐらいしか持ち運べなかったポータブル音楽プレーヤーに対し、1,000曲(おそらくほとんどの人が手持ちの曲すべて)をポケットに入れても持ち運べるようにした革新的なデバイスです。まさにこの言葉は、“お気に入りのすべての曲をポケットに入れて持ち歩ける”そんなワクワクする体験を一瞬でイメージできる、一度聞いたら忘れられない一言です。

 「1000曲をポケットに。」という一言は、多くのメディアのヘッドラインを飾りました。この一言には、音楽の楽しみ方を変え、新しいカルチャーの到来を想像させ、世界中の人々の胸を高鳴らせる力がありました。

 さらに、この一言は開発段階でも大きな影響を及ぼしています。シンプルなデザインで、1,000曲をストレスなく直感的に選べるスクロールホイール型のインターフェース開発や、ジャケットデザインなどビジュアルイメージを多く取り込み、楽曲を作品として楽しめるiTunes(音楽再生・管理ソフト)の開発までにつながり、1,000曲をポケットに持ち歩き、直感的に楽しめるための、具体的な体験設計にまで落とし込む起点にもなっていました。

 ここが大切なポイントで、「1000曲をポケットに。」という一言が、開発段階における“問い”になりました。

 「1,000曲もあれば曲を探すのが大変そうだ。」「だから、操作はできるだけ簡単に、直感的に選べる方がいいのではないか?」など、そんなやりとりがなされたのではないかと想像します。

 このように、一言によって生み出される創造的でワクワクする会話ややりとりが本当に大切で、人を動かす魔法とも言えるぐらいの効果・効能があり、素晴らしい体験を作るエンジンなのです。その効果・効能は、以下のようなものが挙げられます。

  • アイデアがイメージしやすくなる。
  • アイデアの選択基準になる。
  • 仕事を一緒にする仲間や上司(インナー)に伝えやすくなる。
  • 社外の専門家などプロジェクトを一緒に推進し、制作する人々とアウトプットのゴールイメージを共有しやすく、同じ方向を向いて進められる。
  • 生活者など、世の中の人(アウター)に伝えやすくなる。
  • すべての開発・プロモーションフェーズで、アイデアの起点となり、良し悪しの指標になる。
  • 生活者が人に話しやすくなり、ファンになってしまう。
  • 関わる人みんながワクワクする。

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ブランドが提供する体験の3つのレイヤー

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この記事の著者

尾崎 徳行(オザキ ノリユキ)

博報堂 生活者エクスペリエンスクリエイティブ局 クリエイティブディレクター
1998年博報堂入社。以来、100を超える企業やブランドのブランディング、統合コミュニケーション、 商品・サービス開発などに従事。多様なクリエイティブ領域の経験を生かして、新しい体験価値の創造を実践している。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2022/12/22 08:00 https://markezine.jp/article/detail/40768

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