ブランドが提供する体験の3つのレイヤー
ブランドが提供する体験は、重なる3つの円(レイヤー)で考えると理解しやすくなります。中心の円は、(1)「仕組み(コア)」の体験です。商品やサービスそのものの体験を指します。ここでは、ひらいた表現として、仕組み体験と規定しています。
次に大きな円は、(2)「対話」の体験です。ここで言う対話には、「やりとり」「交流」の意味も含んでいます。領域としては、仕組みの体験も包含しながら顧客体験と呼ばれるもの全般の位置付けです。ここでは、商品やサービスの購買前からアフターサービスまで、すべてのフェーズで顧客が経験する体験と規定します。
最後に一番大きな円は、(3)「世界観」の体験です。これはブランド体験とも呼ばれるものです。ここでは広告コミュニケーションも含めたブランドの世界観の体験と規定します。
この体験の括り方に関しては様々な議論がなされますが、ここでは大きくとらえる整理概念として規定しています。

体験を発想する鍵「メタファー」とその使い方
体験を発想していく上でとても重要なキーワードがあります。それは「メタファー」です。【メタファー(metaphor)】とは、隠喩、暗喩、比喩的表現と辞書にありますが、『見立て』ととらえたほうがわかりやすいでしょう。
たとえば、目玉焼きはメタファーです。「黄身を目玉に見立て」て言っているメタファー表現です。メロンパンも同様に「パンをメロンに見立て」ているメタファーです。
『見立て』とは、ものの見方のこと。AをBと見る時、Bにメタファーが生まれます。そして、Aに言い表す名称がない場合(つまり、新しい概念やアイデアを発想する場合)、Bは重要な表現手段になるのです。「〇〇をBのように見立てる」ということは、作りたい体験をBという何かに見立てることで新しいアイデアが生まれるということです。メタファーで発想するということは「新しい概念を共有しやすいイメージに見立て」て考えることなのです。
メタファーを使う、大きなメリットは「イメージが伝わりやすい」ということが挙げられます。なぜなら、メタファーは日常の中で、私たちの身体的知覚を通して意味を培うため、一言から、具体的なビジュアルのイメージまでが浮かんで、感覚としてわかりやすくなるという効果があります。
これは、様々な画の発想にも当てはまりますが、特に体験では具体的に3次元的に体感性も合わせてイメージできることが重要なため、メタファーで発想することがとても効果的なのです。言い換えると、「イメージを伝えやすい」ということにもなるので、実はファンになってもらえる可能性も高くなります。
この効果を利用して発想するのがメタファーによる一言発想法です。まだ世の中に目玉焼きがなかった頃を想像してみてください。「目玉のような卵焼き」とメタファーを使った一言の効果がイメージできると思います。

今回の内容をまとめると、一言発想法は顧客だけでなく、チームのメンバーとイメージを共有することにも役立ちます。そして、それは素晴らしい体験を作ることにつながっていきます。
次回は、メタファーの具体例を深堀しながら、各体験のレイヤーに対して使用するこのメタファーを活用した一言発想法を紹介していきます。
