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エージェンシーに聞く、広告運用現場の改革最前線(AD)

同じROASで工数半減 トランスコスモスとShirofuneに聞く「統一指標」による効果測定と最適化

 Cookie規制の影響や新たな広告媒体の登場が増えつつある背景もあり、デジタル広告運用はますます複雑化、工数が増加している。トランスコスモスでは、広告運用自動化ツールShirofuneを導入することで、そうした課題が解決されたという。媒体の分散や指標のばらつきによる課題とその解決策について、トランスコスモスの佐橋康一郎氏、Shirofuneの菊池満長氏に伺った。

媒体の増加と複数併用で「統一指標による測定」の必要性が増す

──最初にお二人が現在手掛けられている業務やミッションをお聞かせください。

佐橋:トランスコスモスにて、顧客企業の成長を最大化するべく、広告ビジネスで提供する価値を深める役割を担っています。具体的には、自動化、AI、データ活用といった進化し続けているテクノロジーの活用効果を検証し、その結果に基づいて現場に有用なテクノロジーの活用を推進しています。

佐橋氏
トランスコスモス株式会社 デジタルエージェンシー事業本部 テクノロジー戦略部 部長 佐橋康一郎氏

菊池:私は2014年にShirofune を立ち上げ、現在に至るまで広告運用のためのアルゴリズムやプロダクトの開発、ビジネスデベロップメントを行っています。

──デジタル広告の運用において、最近の課題としてはどういったものがありますか。

佐橋:エージェンシーが期待される領域が変化してきました。

 従来はクライアント企業の広告運用に関する理解が浅かったので、運用を行うだけで満足してもらえました。しかし現在ではクライアント企業の理解がとても深まっているので、エージェンシーもマーケティング戦略やビジネス戦略まで見られないと価値を発揮できないという世界観になりつつあり、手掛ける範囲が広がっています。しかしながら、なかなかそこに工数をかけられないという課題がありました。

菊池:インターネット広告業界はこれまで永く成長を続け、コロナ禍においても伸びたものの、GoogleやFacebookといった中心プレイヤーの決算も頭打ち感が出てきています。このように市場自体の成長が鈍化してくると、エージェンシーの方も競争が激しくなると同時に新しい価値を提供する手段が求められるようになっているのではないかと感じています。そこを我々のプラットフォームShirofuneで支援していけたらと考えています。

菊池氏
Shirofune 代表 菊池満長氏

──Cookie規制の影響についてはいかがですか。

佐橋: Cookie規制により従来よりもエンドユーザーへのアプローチ方法が制限されたことで、広告運用においてもターゲティングに頼るのではなく、クリエイティブやメッセージの重要性が増してきました。

菊池:Cookieによる計測ができていたことで、従来は媒体ごとの計測結果の差はそこまで大きくはなかったように思います。しかし、現在はコンバージョンをAPIやサーバーサイドで計測するような手法の活用度合いやCookie規制に対する対応の巧拙の違いで、媒体ごとに計測の方法が異なり統一の基準で判断できなくなる課題も出てきています。

 また、リテールメディアなどファーストパーティデータを持つ企業による独自の広告プラットフォームも増えてきました。これまでGoogleなどの大手プラットフォームに集中していた広告出稿が、様々な媒体に分散するようになってきています。そのため、より複数媒体での効果を統一指標で測定することの必要性が高まっていると思います

広告運用自動化がもたらす工数削減と高い効率性

──トランスコスモスでは2019年にShirofuneを導入したそうですが、どういった効果を期待していましたか。

佐橋:エージェンシーによるマーケティング支援といった新しいミッションに取り組むために、Shirofuneの自動化機能によって広告運用の質を担保しつつ工数を削減したいという狙いで導入しました。2019年から検証をしてきた中で、GoogleやYahoo! JAPANにおける広告運用の自動化とそれにともなう運用負荷の軽減のほか、複数媒体での広告の予算調整などに効果が確認できたため、徐々に導入を増やしていきました。

──Shirofuneではどのようなことが実現できるのでしょうか。

菊池:プロの広告運用者だったらこう行うというアルゴリズムによって、広告運用を丸ごと自動で行えます。広告運用の経験が浅い方であっても、適切な予算の管理や再配分、広告の最適化が自動でできます。

Shirofuneができること
クリックすると拡大します

菊池:エージェンシーの方はそのノウハウを既にお持ちですが、自動運用で工数削減ができ、レポーティングや分析機能もプラスで利用いただくことで、さらに効率的な広告運用が実現します。

 また、先ほどお話しした、複数媒体での広告を統一指標で評価することに関しても解決策を用意しています。

工数がかかるマスター更新・パラメータの紐付けを自動化

菊池:サードパーティの計測ツールや広告主様の自社計測データやCRMデータで成果を分析する場合には、どの広告からどのコンバージョンが出たかということを把握するためにパラメータマスターを作り、広告配信データとパラメータごとのCV件数/売上を紐付けするという作業が必要です。とても手間がかかる上ミスも発生しやすく、また新しい広告を入稿するたびにマスターを更新する必要もあります。

 Shirofuneでは、マスターを作成・更新しなくても自動でパラメータの紐付けができます。そうして広告の評価を媒体共通かつより正確性・重要度の高い成果データで行え、それを元に最適化していきます。媒体ごとにパラメータの設定可能方法が異なり、また媒体によってはかなり複雑な設定が可能なため、ルールが違うものを統一した紐付けができるようにするのは難しく、かなり時間をかけて仕組みを作りました。これは独自技術で、おそらく世界でも他にできるツールはないのではないかと思います。

佐橋:これまではAPIで連携できている媒体であっても、マスターは手動で作成・更新しなければならなかったので、マスターなしでの自動紐付けというのは我々も驚きました。Shirofuneがすごいと思った点です。

──2022年からはShirofuneのGoogleアナリティクス連携機能を活用されているそうですが、運用環境はどのように変わりましたか。

佐橋: GoogleアナリティクスとAPI連携できるので、一度連携させてしまえば勝手に情報を吸い上げてあとは自動で調整してくれます。クライアントによって計測する粒度は変わりますが、以前はキーワード単位で大量のパラメータを取る場合には、表計算ツールの限界を超えるデータ量になることもあり大変でした

菊池:私も以前は広告代理店にいたのでわかりますが、細かくやろうとすると人間では無理な仕事になってしまいます。しかも何十万というパラメータを手動で管理するとなると、ミスが発生するリスクもありました。Shirofuneでキャンペーン構成を作ったものであれば、パラメータの付与も自動で行うことができます。現状では自前で作成したキャンペーンに対してはこの自動付与ができないので、今後はそこにも対応し、レポート作成の際にも入稿の際にも一切パラメータのことを気にしなくて良い、という環境を提供できればと思っています。

ROASはそのまま工数は半減 媒体間・カテゴリ内の調整を簡略化

──Shirofuneを導入してからどのように利用が進んでいったのですか。

佐橋:最初に1社からPoCをスタートし、全体の5%程の個社まで進めた上でその効果を役員や現場メンバーに丁寧に説明していきました。結果、社内の表彰制度で優秀賞を受賞するほど、成果を出すことができています。

 元々広告運用は工数がかかるため、自動化による工数圧縮に対してインパクトのある施策だということが評価されました。現在導入数は15%程まで伸ばせてきており、最終的には顧客全体に拡大していくポテンシャルを持っていると思います。

佐橋氏

──PoCにおいて約5%の個社で試された中で、実際にどのような成果が出ましたか。

佐橋:アウトドアアパレルのECサイトでGoogleアナリティクス連携を活用したところ、大きな成果がありました。

 同サイトでは複数カテゴリのラインアップがあり、KPIも広告予算もカテゴリごとに分かれ、さらに媒体ごとやキャンペーンごとにも分かれていました。この案件では、カテゴリや広告媒体、キャンペーンごとといった細かい粒度で広告予算や入札の調整を行っていたため、工数がかかることが課題でした。

 また、成果計測をGoogleアナリティクスで行っていましたが、やはり広告媒体ごとに計測方法が異なることによって統一基準での比較ができず、売上と媒体コンバージョンに乖離が起きていました。

 Shirofuneを導入すれば、複数媒体間の広告出稿やカテゴリ内での調整が自動化できて工数削減になり、広告の計測も統一指標で行えるため最適化の精度も高くなることをクライアントに説明し、導入を進めることになりました。

 結果として、それまで手動で時間をかけて実現してきたROAS(獲得効率)800%を、半分ほどの工数で維持できるようになりました。それは現場でも喜ばれ、工数削減による余剰リソースをマーケティングの戦略面や新たな商材の提案など、攻めの業務に工数をシフトすることができました。

CPA20%削減 連携できるデータと媒体は拡大中

佐橋:キャンペーンが大量にあるアカウントではShirofuneの自動運用で運用工数を抑制し、攻めの業務に工数をシフトさせることで、獲得単価をマイナス20%ほどに抑制できたケースもあります。正直そこまで大きな効果が出るとは驚きでした。これからはクライアントの成果を高めるための1手段として、テクノロジーを上手く活用して時間を最適配分することが重要と考えております。

菊池:Shirofuneは熟練の広告運用者が一生懸命に行っている広告運用を自動で実現するものなので、既に力を入れて取り組んでいた場合は効果を維持したまま工数が削減されるという結果になります。あまり広告運用に時間をかけて取り組めていなかった場合であれば、自動運用することで成果が上がることになります。

 広告主の方が広告代理店を選ぶ際の観点としても、トランスコスモスさんのように最新のテクノロジーを最も使いこなし、それによって自らの提供サービスを進化させている会社が最も成果を一緒に出せるパートナーになると言えるかと思います。

 そうした意味で、代理店選定の際にはShirofuneを既に使っているテクノロジーに明るい会社なのか否かはぜひ確認いただけると良いかと思います。

菊池氏

──他にも紹介しておきたいShirofuneの便利な機能や今後新たに追加する予定の機能はありますか。

菊池:最近のアップデートでCPAを用いた運用ができるようになりました。たとえばGoogleアナリティクスやその他計測データ上でのCPAやROASの上限値を設定すると、自動でその獲得効率を守った運用ができます。これを全部自動でできるのは、画期的ではないかと思います。

佐橋: Googleアナリティクス以外の計測ツールとも連携できるコネクターも便利ですよね。

菊池:そうですね。計測ツールとしてAPI連携しているのはいまのところGoogleアナリティクスだけですが、コンバージョンコネクターというサブソリューションを使うことで他の計測ツールやCRM、CSVによるメールの取り込みなどのデータも連携させることができます

 パラメータを振って、そこにコンバージョン数や売上が付くような仕組みであればどんなデータでも連携できます。世の中の広告効果計測の仕組みはほぼその形なので、自動化できないケースはないのではないかと思います。

 たとえばCRMツールから商談の状態や売上といったデータを吸い上げ、媒体やキャンペーンがどれだけ売上に貢献したかということも自動で紐付けることができます。

 さらにAPI連携できる広告媒体を増やすことにも力を入れています。最近ではTikTok広告にも対応し、現在主要広告配信プラットフォームとしては7つとAPI連携ができるようになりました。現在はMicrosoft 広告との連携に向けて動いているところです。

連携する媒体
クリックすると拡大します

菊池:また、メディアコネクターというサブソリューションを活用頂くと、ShirofuneがAPIで連携していない広告媒体のデータもすべて自動で取り込むことができます。

 すべての広告成果データとすべての広告媒体配信データをShirofuneで一元化できるようにすることに価値があると考えています。

広告運用支援からさらに「一歩先の支援」へ

──トランスコスモスとしての今後の取り組みやクライアント支援の展望についてお聞かせください。

佐橋:引き続きShirofuneを活用していきたいと思っています。というのも、複雑化するユーザー行動に対して適切なコミュニケーションを取ろうと思ったら、自動化のテクノロジーなしにはワークしないからです。新たに増えた広告媒体に対応するためにも工数やランニングコストがかかるので、運用が自動化されることでチャレンジもしやすくなります。

 また社内のメンバーに対して、工数が削減されることはクライアント企業の成長に向けた支援に一層注力でき、成果に大きく寄与できるということもきちんと伝えていきたいと思っています。我々も成果を高めて、マーケティング領域などより幅広いレイヤーでクライアントの成長に貢献できるようになっていきたいです。

──Shirofuneとしては、どのような展望をお持ちですか。

菊池:「広告運用のインフラ」としてより価値を発揮していくために、広告主とエージェンシーでの協働のあり方を進化させていくことができたら良いと考えています。

 具体的には広告配信データのハブとしてShirofuneの画面を広告主と共有してもらうことで、広告主とエージェンシーが同じデータを見て、一緒に分析しながらより良い施策を打っていけるような形です。

 これまでは媒体管理画面もしくはBIツールに頑張ってデータを入れる形しかなかったと思いますが、媒体管理画面では媒体統合データがなく、BIツールではサマリーのようなデータしかなく細かく分析できないといった課題があり、決して状況把握・分析に適した環境とは言えなかったのではないかと思います。

 そこをアップデートできれば、広告主とエージェンシーは共通データを元にした活発な議論を通じてより強固なチームとなり、より良いマーケティング戦略を立案・実行できるのではと思っています。エージェンシーにとってはタフな面があるのは理解していますが、顧客第一主義を掲げてこういった環境を構築していけるエージェンシーが次に成長していく企業になるのではと思います。

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この記事の著者

平田 順子(ヒラタ ジュンコ)

フリーランスのライター・編集者。大学生時代より雑誌連載をスタートし、音楽誌やカルチャー誌などで執筆。2000年に書籍『ナゴムの話』(太田出版刊)を上梓。音楽誌『FLOOR net』編集部勤務ののちWeb制作を学び、2005年よりWebデザイン・マーケティング誌『Web Designing』の編集を行...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2023/02/21 12:18 https://markezine.jp/article/detail/40857