B/S視点で店舗価値、事業価値を作り上げる
4.1店舗あたりの売上実績は、McDonald’sの軽く2倍以上
王者McDonald’sの5兆円、2位Starbucksの2兆円の売上規模に対して、チックフィレは約1.7兆円と3位に迫っている。既に5位の「Wendy’s」、6位の「BurgerKing」、8位「Subway」らも抜き去っており、同じチキンカテゴリーでは14位「KFC」の約3倍の規模にまで成長している。
ここで注目したいのは、「1店舗あたりの売上」である(図表1)。

(※2:出典データはQSRMagazine,“2021QSR50”)
米国の上位ランキングに日本の代表的なチェーン店を挿入して比較できるようにした。チックフィレの1店舗あたりの売上規模の「桁違い」感がつかめるだろう。図は店舗の大小を含めた「平均値」だが、チックフィレの約1,800のフランチャイズ(以下、FC)店のうち約半数がなんと年商10億円(814万ドル、2021年時)を超えている。
5.FCオーナーへ資産分与するイズム
チックフィレのFCオーナーは、(ほんの)1万ドルの初期費用でレストランの所有権を保持し、初期投資と売上高から物件の家賃や実コストを差し引いた残りの税引前利益を総括で本社と50/50分配する。他社には、チェーン本社が直営店方式で100%利益を確保するパターンも存在するが、チックフィレは無形資産(儲けの仕組み)をFCオーナー側に「ゼロから共に増やして、おすそ分け」しているかのようだ。
その分、チックフィレオーナーの加盟には厳しい条件が課されており、面接に次ぐ面接がある。家計の余力や過去の経営能力、共にアントレプレナーでいられるか、そもそもブランドへの愛はいかに、などその家族まで面接の対象になる。合意できた「人格者」のみが仲間(家族)として迎え入れられ、開業にまで至るのは応募数の1%以下だ。
日本の店舗あたりの売上上位が「スシロー」や「くら寿司」であるのはうなずけるだろう。この規模レベルになれば「海外市場での可能性」も考え得る(くら寿司は米国36店舗)。それに対して、日本の「王将」「吉野家」「日本マクドナルド」「日本KFC」らを含めた日本での店舗事業はP/L規模もかなり小さく、B/S資産としての価値を生み出せている気配が薄い。仮に、店舗の売却ができるか、1店舗あたりの資産価値はいくらかと、買う側の「オーナー」「B/S事業主」の目線で考えてみる。細かい計算抜きで「買いたい」と思える価値を生めているかどうかだ。
最後に、チックフィレは未上場企業である点も挙げておく。単に売却ステージをイメージするだけでなく、安定的にB/S資産を作り上げてFC加盟店におすそ分けする――そんな立ち位置にして微動だにしないイズムを感じたい。
※1 外出自粛前と現在では少し様相が違うが「MyPleasure」の姿勢は健在
※2 米国データはQSRMagazine,“2021QSR50”より、日本企業のデータは各社のIRデータと推量データを加えて参考値とした
※3 為替は1ドル=130円で換算