ECへの遷移率は平均の3倍 デジタルの表現とアナログの知見を融合
提供開始して約1年、河田氏は既に様々な側面で手応えを感じているという。
「わかりやすい成果として挙げられるのは、ECサイトへの送客ですね。REV WORLDSからECサイトへ遷移するクリック率は一般的に平均とされている値の3倍で推移しています」(河田氏)
仮想店舗内には様々な商品が展示されており、商品をタップすると商品詳細が表示され、気に入ればそのまま購入画面へ遷移する。
遷移率が高い要因は、三点ある。一つ目は世界観の演出。ECサイトは商品単体の画像を閲覧するだけだが、REV WORLDSは店舗デザインやディスプレイの形式を含め、3Dで世界観を表現できるため、商品イメージが搔き立てられやすい。また、リアルでは建築の制約があるが、メタバースは自由。表現の幅は無限大だといえる。

二つ目は、アナログの世界で培ったノウハウを活用できる点だ。現実では、商品・装飾・編集・接客・店舗など様々な要素があり、それらを総合して接客体験を提供する。REV WORLDSではそれら現実の要素を取り入れやすい。先述した世界観の演出の他、ボイスチャットでのオンライン接客も実施している。
ECにはない「アナログ的な体験」が思わぬ発見を生み出す
また前述の通り、思わぬ発見があるのも要因の一つだ。リアルの友達や、メタバース内で出会った他ユーザーと仮想店舗を探索するという、ウィンドウショッピング的な感覚で回遊するうちに好みの商品と偶然出会う機会を提供できている。
「皆さんは、思い出に残るようなEC体験をしたことはありますか? 私自身はありませんでした。一方で実店舗の買い物、たとえば初任給でスーツを購入した際の体験は、店舗のどこの売り場でどのような接客をされたのかも覚えている。そのような体験を、メタバース内でも実現したいのです」(河田氏)

ECサイトは効率性が重視されており、購買に関わるあらゆる負荷を減らす方向に進化している。一方メタバースでは、効率性を追求するECにはない「アナログ的な体験」を入れ込むことで、付加価値を提供できる可能性があると河田氏は語る。
また、ブランドの立場では「アイデアの選定場所」としてのポテンシャルも高いという。リアルの世界では、売れるデザインの商品を作らなければいけないというのが大前提だ。ただ、デジタルの場合は制作コストを抑えられ、素材を使う必要もない。
アイデアから生まれた様々なウェアや家具をデジタルアイテムとして販売するという流れを生み出せば、テストマーケティングの場として活用できる余地がある。

「リアルで人気のウェアをデジタルでも展開する流れは既にありますが、その逆も今後増えると思います。まずはコストの低いデジタルウェアを販売して、人気が出ればリアルでも販売される。仮想と現実の2つの世界でトレンドを相互に生み出していくようになるのではないかと思います」(河田氏)