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【特集】消費者インサイトから探る「創造・成長のカギ」

承認欲求vs周りの目、友情の築き直し、チル、パーソナライズ Z世代のインサイトにまつわる4つのカギ

消費行動で見られるトレンドは「友情の築き直し」

──Z世代の消費行動で何か特徴的な傾向はありますか?

 コロナ禍で学生生活を送ったZ世代の中には、「2022年になって初めて大学の友だちにリアルで会った」という人や、「リアルで会うのが久しぶりすぎて、再会したときに少しギクシャクしてしまった」という人がたくさんいます。友だちに会えないという期間を経て、2022年頃から見られるようになったトレンドが「友情を確認し合うための消費」です。

 たとえば、Z世代の消費行動で欠かせないキーワードとして「推し活」があります。以前、スマホケースの背面に入れるのは、アイドルの写真や好きなアーティスト、ブランドのステッカーなどだったのですが、最近は友だちの証明写真やプリクラを入れている学生が多いのです。また、推し活では、本人不在の誕生日会も近年のトレンドでした。本人不在の誕生日会とは、好きなアイドルの誕生日にホテルの部屋を取り、バルーンや写真で部屋を飾ってお祝いをするというものです。このトレンドも2022年に少し変化し、アイドルから友だちへ対象が変わっています。誕生日の友だちと一緒にホテルなどの部屋でバルーンを飾って、思い出の写真を並べてお祝いする。それを写真に撮ってSNSに載せ、「私はこの子とこんなに仲がいいんだよ」「コロナ禍で会えなくても友情は変わらないよ」ということを知らせているのです。

 まだホテルを取る余裕のない高校生の間では、友だちの誕生日に学校のロッカーをデコレーションしてサプライズでお祝いする「ロッカーデコ」も流行っています。会えなかった数年間を取り戻すかのように反動的に起きているトレンドで、この傾向はもう少し続くと見ています。

 もう1つ、消費における特徴を挙げるなら「パーソナライズ」でしょうか。コスメやファッションのカテゴリーでは、2018年頃からパーソナルカラー診断や骨格診断などが出てきています。これらは既に定着しており、自分に似合うコスメ・似合う洋服を選ぶことは、Z世代ではもう当たり前です。そこから最近はもう一歩進んでいて、「既製品で自分にぴったり合うものが見つからないなら、自分でカスタマイズしてしまおう!」というような行動が見られるようになっています。たとえば、自分に合うカラーにするために、既製品のコスメを混ぜて、百均などで買ったケースに詰め替えて持ち歩いたり。自分色のアイシャドウやリップを作ることができるサービスが話題になっていたり。Z世代に「今、どんなリップの色が流行っているの?」と聞いても、彼女たちから明確な答えが返ってくることはありません。マス的なトレンドがどんどんなくなってきているように感じます。

若年層のニーズやインサイトが上の世代に広がっていく

──チル、自己承認欲求vs人の目、友情の築き直し、パーソナライズとここまで4つのキーワードを挙げていただきました。これらを事業やブランディングに反映させる際、気を付けるべきポイントは何でしょうか?

 少し労力がかかりますが、トレンドを時系列できちんと追うことです。私たちも日々の研究で心がけているのですが、1つのトレンドを切り取って見るのではなく、複数のトレンドを時系列で追い、それぞれにどういうインサイトがあってそのトレンドが生まれているのかを分析するようにしています。そのために、Z世代が使う主要なSNS(Twitter、Instagram、TikTok)のトレンドを押さえることも必須ですね。あとは、生の声を聞くこと。この2つが大切で、これを押さえておけば大きく外れることはないと思います。

 そうすると、顕在化しているニーズがどういった進化や変化を遂げているのかが見えてくるはずです。継続的に見られるということは、そこにあるインサイトは根強いということ。この部分を捉えるのがカギです。たとえば、「間接自慢」はトレンドの新興や衰退に関係なく続いている根強いインサイトです。性格診断もTikTokも、すべて間接自慢と言えます。つまり、間接的にSNSで自慢できるような「ツール」として仕掛けると、ヒットする可能性が高いわけです。「間接自慢」に関しては、恐らくすぐには消えないインサイトでしょう。

──先の見通しを立てづらい時代に、次世代生活研究所が企業や社会の成長を担う部分は大きいと思います。最後に今後の展望をお聞かせください。

 若い世代の流行が世の中のトレンドになるという流れは、いつの時代も同じです。特に、現在は、旧マスメディアよりもWebメディアやSNSのほうが起爆力を有している時代。SNSの利用は若年層のほうが圧倒的にアクティブですから、たとえば、上の世代がいくら「いいね」をしてもTwitterのトレンドにはなかなか入りません。要するに、トレンドを起こすには若者の力が必要で、若者の支持がなければ上の世代にも届かないという情報構造になりつつあるのです。若年層のニーズやインサイトが上の世代に広がっていくということを踏まえると、企業や社会が未来の大きなニーズを掴む際、若者研究は重要な役割を担います。次世代生活研究所の活動を通して、これらのサポートをしていければと思います。

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この記事の著者

末岡 洋子(スエオカ ヨウコ)

フリーライター

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MarkeZine(マーケジン)
2023/04/07 14:56 https://markezine.jp/article/detail/41351

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