洞察力はどうすれば身に付く?
――最初に挙げていただいた洞察力を身に付けるために、日々できるトレーニングはありますか。
消費者のパーセプション(認識)がどう変化しているかを考えるトレーニングがおすすめです。
ヒットしている商品・サービスがあったとき、多くの人は商品・サービスそのものや売上などの結果を見てしまい、そこにどのようなパーセプションの変化があったのか、を見落とすことがあります。そうしたパーセプションの変化が見えないと先の見通しが難しく、競合のマネになってしまいかねません。それでは、マーケティングの本義である市場創造は難しそうです。何が起きているか、ではなくなぜ起きているかの視点で物事を見る癖を付けたほうが良いでしょう。
具体的なトレーニング方法としては、消費者にインタビューしたり、自ら買った商品の購買行動を振り返ったりして、購入までのパーセプションの変化をまとめることです。私が考案したパーセプションフロー(R)・モデルを使ってもいいですし、フレームワークを使わなくてもパーセプションの変化を振り返られれば十分なトレーニングになります。
実績ではなくスキルを棚卸する
――2023年がスタートし1ヵ月が経過しましたが、このタイミングでチェックしたほうがいいことはありますか。
コロナ禍で自身がどのようなスキルを得られたのか振り返ってみてはどうでしょう。2020年から2022年の3年間はこれまでにない特殊なものでした。この3年間で得られた経験は貴重なものになるはずです。
このとき大事なのは3年間何をしたかではなく、何ができるようになったかを振り返りましょう。たとえば、売上を過去最大の10億円に伸ばしたという結果があるとき、この前代未聞の結果を出せたのは、きっと何か新しいスキルを身に付けたからではないでしょうか。
過去の売上は大事な実績ですが、そのままでは今年や来年に貢献できません。そうした実績につながったスキルを自覚できれば、そのスキルは今年も使えます。2023年からも良いスタートが切れそうです。
――では、最後に読者の方にアドバイスをお願いいたします。
今年を含めたここ数年は、ポーカーで言えばカードの配り直しに近いくらい、大きな変化の期間になるだろうと思います。そのため、現在上手くいっている方はもっと良い波に乗るきっかけに、上手くいっていない方は立て直しのチャンスになるはずです。とはいえ、毎年が変化の年だと言われているような気もするので、ひょっとすると、こうしたチャンスはいつもあるのかもしれませんけれど。
いずれにせよ、そうした大きな変化に対応するためにもこれまでの経験を俯瞰して自身のスキルを認識できると、意図的に使いどころを選べます。つまり、自分が活躍するための活路が見つけやすくなることでしょう。読者の皆さんがご自身のスキルを把握して、マーケティングの定義である市場創造につながる1年になることを願っています。