宿泊単価が上がるも、需要が衰えていない。アップトレンドを見せる旅行市場
MZ:コロナ禍で需要が落ち込んだ時期を経て、今、旅行市場はどのような状況にありますか?
花房:コロナ禍に入り、ホテルの宿泊金額の単価が下がった時期もありました。需要が減ると料金は下がるので、当たり前の現象とも言えます。そうした時期を経て、最近は宿泊単価が明らかに上昇傾向にあります。単価の上昇に加えて、それでも宿泊予約が衰えていないという傾向も続います。こうした動向から「上質な体験にお金を払おう」という“贅沢消費”“コト消費”につながる気持ちは、継続していくのではと見ています。実際に、今年も外資系ホテルをはじめとするラジュグアリーホテルが相次いで開業される予定です。

MZ:街中で訪日外国人を見かける機会が増えた印象はありますが、旅行市場全体的にアップトレンドになっているのは間違いないのですね。
花房:ええ。特に、新型コロナウイルスの5類移行が発表されてからは、日本の内需の勢いを感じていますし、お話にあった通り訪日外国人も非常に増えています。特に都心部のシティホテルは予約が集中していることから、料金も上がっていますし、空いている時期を探す必要があるという状況になっています。
MZ:海外に行けないという状況もあり、旅行市場では“贅沢消費”がより後押しされた状況でした。この傾向は、今後どうなっていくと思われますか?
花房:我々は、今後もしばらくこの状況が続くと思います。やはり、みんなが海外旅行に気兼ねなく行ける状況とはまだ言えません。とはいえ、“非日常”というのは、どうしてもみんな欲するものなのだと、このコロナ禍で学びました。一定の制限がある状況と非日常の贅沢体験という組み合わせは、多くの方の心に刺さっている実感があります。
スパ事業では、コロナ禍で価格が上振れに
MZ:“ご褒美消費”に関しては、一休.comのスパ予約のサービスにも注目したいところです。コロナ禍でスパ予約にはどういった変化が見られましたか?
平澤:興味深かったのは、一休.comでスパを予約される方の単価が上のほうに広がっていったという変化です。以前は、都心の高級ホテルスパだと「25,000円前後で90分のトリートメントが受けられるプランがあると一定の人気を保てる」という、いわゆる勝ちパターンのようなものがありました。ですが、コロナ禍に入って以降は、そうした王道プランに限らず、3~4万円の高単価のプランや2時間を超えるロングプランなど、サービスの価格と質ともにより上質なものを求めるニーズが強くなっていったと感じています。

コロナ禍で色々な制限があるためになかなかストレスを発散する場がない中で、ホテルのスパリラクゼーションが多くの人々のニーズにフィットしたのでしょう。コロナ禍を機に新規ユーザーが増え、そのリピーターを含め既存ユーザーがより上質なサービスメニューへシフトしていったという流れです。