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『MarkeZine』(雑誌)

第106号(2024年10月号)
特集「令和時代のシニアマーケティング」

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【特集】次の10年をつくる、組織と人材

根幹のテーマは「過去の成功体験からの脱却」BtoB 事業における“人×IT”の適用と組織強化

 元マルケト社長として、また『THE MODEL』著者として知られる福田康隆氏。現在は、世界から優れたSaaS企業を厳選し日本展開を中長期的に支援するジャパン・クラウド・コンサルティングを率いる。福田氏にBtoB事業における人材や組織の課題を聞くと、型にはめたがる企業の姿や、労働集約的なビジネスでの成功体験から抜け出せない企業の姿が見えてきた。業務プロセスを棚卸しして、適切に人材を配置し組織を強化するための考え方とは。

※本記事は、2023年4月25日刊行の『MarkeZine』(雑誌)88号に掲載したものです。

人材育成の相談が特に多い2種類の企業

──マーケティング領域の読者には、福田さんのご経歴は既知のことと思いますが、改めて人材育成や組織強化の観点でどういった経験を積まれてきたかをうかがえますか。

 私が最初にマネジメント側になったのが2005年で、20年近く前になります。当時は営業組織のマネジメントとして、人材採用と育成に関わりました。2014年にMarketo(マルケト)の社長になってから、営業、マーケティング、技術など含めて組織全体を見るようになり、全社的な視点で人材配置やそもそも必要な役割などを考えるようになりました。経営戦略に基づいた企業の意思決定とは、つまりリソースをどう配分するかだと思うので、この経験が大きな転機になりましたね。

 そして現在は、グローバルのBtoB SaaS企業の日本進出を支援する事業において、各社の取締役として現在11社の経営をサポートしています。各社の社長と連携した経営の一環として、5年後、10年後の体制を見据えた人材採用や教育プログラム策定などにも携わっています。

ジャパン・クラウド・コンピューティング株式会社 パートナー/ジャパン・クラウド・コンサルティング株式会社 代表取締役社長 福田 康隆(ふくだ・やすたか)氏 2004 年セールスフォース・ドットコムに転職。翌年、同社日本法人で専務執行役員兼シニアバイスプレジデントを務めた後、2014年マルケト代表取締役社長として日本法人の設立に関わる。2019年買収により、アドビ専務執行役員 マルケト事業統括に就任。2020年1月より、ジャパン・クラウドのパートナーおよびジャパン・クラウド・コンサルティングの代表取締役社長に就任。著書に『THE MODEL マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセス』(翔泳社、2019 年)
ジャパン・クラウド・コンピューティング株式会社 パートナー
ジャパン・クラウド・コンサルティング株式会社 代表取締役社長 福田 康隆(ふくだ・やすたか)氏

2004 年セールスフォース・ドットコムに転職。翌年、同社日本法人で専務執行役員兼シニアバイスプレジデントを務めた後、2014年マルケト代表取締役社長として日本法人の設立に関わる。2019年買収により、アドビ専務執行役員 マルケト事業統括に就任。2020年1月より、ジャパン・クラウドのパートナーおよびジャパン・クラウド・コンサルティングの代表取締役社長に就任。著書に『THE MODEL マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセス』(翔泳社、2019 年)

──ご著書『THE MODEL』でも、リソース配分の重要性が語られていました。福田さんのもとには外部からも様々な相談が寄せられると思いますが、人材育成や組織強化においてBtoB企業が抱えている共通の課題には、どういったことがありますか?

 前提として、大きく分けてスタートアップを中心とするSaaSの企業と、非ITの大手企業という2つの層からのご相談がとても多いです。前者はフレームワークとしての「ザ・モデル」を適用できる典型的なパターンですが、そのようなSaaS企業よりも多数のご相談をいただいているのが、後者の非IT大手企業です。この2層は課題が異なるので、分けてお話しします。

 まずSaaS企業では、どうにも杓子定規に“分業”を捉えてしまうことが多いようです。『THE MODEL』の内容は、どんな企業のどんな事業フェーズにも画一的に当てはまるものではないので、「自社にとっての『ザ・モデル』を作りましょう」と付記しています。そもそも執筆の背景には、セールスフォースなどの先行企業をそのまま模倣してうまくいっていない多くの企業に、自社なりの方法を探す重要性に気づいてもらいたい意図もありました。

 ただ、思った以上にそのメッセージが届いておらず、型にはめようとするケースがたくさん散見されます。

自社の業務プロセスを分解する重要性

──型にはめずに進めていくためには、何を意識すればいいでしょうか?

 言葉にすると当たり前かもしれませんが、常識に従うことが、一つ大事なポイントかと思います。たとえば営業が5人いて、リードは毎月50件なら、フォローできる範疇ですよね。しかし月に500件なら、インサイドセールスを置いたほうがいい。その場合、営業の5人から1人か2人をインサイドセールスに置けばいい……と、見当がつくと思います。

 ですが、確実な正攻法やセオリーがあると思うと、自社の状況を見る前に「分業」が前提になってしまったり、営業担当が5人ならインサイドセールスに1人回すか、それとも2人回すか、どちらが正しいかと悩んだりしてしまう。そこは自社の状況を踏まえて、実践しながら選んでいくしかないと思います。

──では、非IT大手企業の課題とその背景について教えてください。

 IT業界以外でご相談いただく企業に共通しているのは、ここまで事業が右肩上がりに伸びてきたことです。それとともに人を増やしてきた、労働集約型の会社が日本にはとても多いんです。しかも、クライアントごとに1人の担当者がすべてをカバーしていることが多く、商材が増えて顧客ニーズも変わる中で、手が回らなくなっている状況があります。

 労働集約型の企業が今いちばん、新しい体制への移行の仕方を悩んでいると思います。採用も顧客対応の仕組みとしても行き詰まり、そこで「ザ・モデル」のような分業を取り入れようという流れが強くなっています。

──たとえば、分業の仕組みやツールなどを導入するにあたって、何から考え、着手していけばいいのでしょうか?

 前提として、効率化を図るためのIT活用が有力な選択肢の一つです。ITは人の能力を増幅させるためにあるので、どこを人が担い、どこをITで補うかという「人×IT」の組み合わせを考える必要があります。そのために、やはり自社の業務プロセスを分解することが第一歩です。

 自著の中では“ボトルネック”と表現していますが、自社ビジネスの全工程を俯瞰し、どこがいちばんスタックしているのかを見つけます。そして、その解決はツールでできるのか、人でないと無理なら、どのようなスキルがあれば最も効果が高まるのかを考えていきます。

 そもそもひと昔前は顧客管理の仕組みもなく、営業の頭の中にすべてが入っているという状態でした。次第にCRMやマーケティングオートメーション(MA)などのツールが増え、顧客の状況が可視化されて、ITで新しい体制や業務プロセスを築ける土台がようやく整ってきたのが今のステージだと思います。

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/05/11 15:11 https://markezine.jp/article/detail/41896

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