クラフトブルワリーやアーティストとの共創も
D2Cブランドの着想・立ち上げを経て、次に取り組むべきはマーケティングだろう。HOPPIN’ GARAGEでは「ストーリーブルーイングの進化と購入体験の充実」を2023年のブランド方針に掲げ、クラフトブルワリーとの共創やリアルチャネルへの展開にチャレンジするそうだ。

2023年2月にスタートした「ホッピンフレンズ プロジェクト」では、HOPPIN’ GARAGEが発掘した魅力的な人生ストーリーを“ホッピンフレンズブルワリー”と称する複数の友好クラフトブルワリーに共有。そのストーリーを基に、各ブルワリーがオリジナルの限定ビールを開発・製造する。HOPPIN’ GARAGEがそれらの限定ビールを仕入れ、同じストーリーを基に開発・製造した自社商品とセットで販売する仕組みだ。

そのほか、ポップアップストアやキッチンカーなどでHOPPIN’ GARAGEの商品を1本から手に取ることのできる場をつくり、PoC的に相性の良いチャネルを探っていくという。
BÉLAIR LABが扱う「香り」はオンラインで試すことができないため、最初はユーザーがなかなか購入に至らなかったそうだ。そこで、気軽に試せるお得な初回セットや様々な種類の香りを楽しめるミニスプレーセットを用意したほか、ユーザーのイメージに合う香りを付けたムエット(香りを試すための紙)の郵送キャンペーンを展開するなど、トライアルの方法を工夫しているという。

「『自分の好きな香りがわからない』とおっしゃる方は多いです。クリエイティブで伝える努力はもちろん、ご自宅で実際に試していただける仕掛けを考えています」(星氏)
また、アーティストがBÉLAIR LABの香りから着想を得て作品を制作する「香りのアート展」をオンラインで開催。制作過程を収めたメイキング映像も公開した。香りへの期待や想像を掻き立てることで、答え合わせのようにフレグランスセットを購入してもらう狙いだという。
人々のストーリーをビールに落とし込むHOPPIN’ GARAGEの取り組みと、アーティストが香りを作品に落とし込むBÉLAIR LABの取り組み。アプローチの矢印の向きは違っても「商品×人」というフレームには重なるところがある。
機能的価値の向上が裾野を広げる
順調にブランドを成長させてきた両社だが、グロースには課題や苦労もともなうはずだ。土代氏はHOPPIN’ GARAGEのネクストチャレンジについて、次のように語る。
「プロダクトやサービスの機能的価値を向上させることで『出会い』や『ストーリー』といった情緒的な言葉が響くユーザー以外にも裾野を広げていく必要があると考えています。今後はそのステップにもチャレンジしたいです」(土代氏)
土代氏の発言に共感した上で、BÉLAIR LABに対し「バックエンドに課題がある」と星氏。

「グロースするためには、バックエンドのケイパビリティが盤石でなければいけません。ブランドをつくって商品を生み出しながら、同時にバックエンドも成長させていく──この舵取りが非常に難しいと感じています」(星氏)
サッポロビールとロート製薬の両社がD2Cブランドの着想・立ち上げ・運営フェーズにおいて取り組んだことや、事業成長のためのエッセンスを聞く本セッション。大手メーカーで同様の取り組みを検討・推進する担当者にとって、数多くのヒントがちりばめられていたのではないだろうか。