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MarkeZine Day 2023 Spring

大手メーカーならではの苦労も サッポロビールとロート製薬が語るD2Cブランドの立ち上げ秘話

 スタートアップ企業が中心となって拡大させ続けてきたD2C市場。EC需要の高まりを受け、最近は大手メーカー企業の参入も活発だ。MarkeZine Day 2023 Springには、サッポロビールの「HOPPIN’ GARAGE」と、ロート製薬の「BÉLAIR LAB」を統括する土代氏と星氏が登壇。大手企業でD2Cブランドを立ち上げた理由や苦労した点、各ブランドの取り組みと成長戦略について語った。

ビールとフレグランスのD2Cブランド

 サッポロビールが2018年にローンチした「HOPPIN’ GARAGE(ホッピンガレージ)」は、同社初のD2Cブランドだ。通年販売のフラッグシップビールに加え、限定ビールを2ヵ月に1回の頻度で販売。冊子付きの定期便サービスも展開している。

 ブランドの責任者を務める土代裕也氏は、HOPPIN’ GARAGEの特長を次のように語る。

「HOPPIN’ GARAGEでは、ストーリーブルーイングという製法を採用しています。魅力的な人々の“人生ストーリー”と、サッポロビールの醸造技術を掛け合わせて、限定ビールをつくっているのです。ビールだけでなく魅力的な人々との偶然の出会い(セレンディピティ)を届けることにより、多様な価値観を認める未来を目指しています」(土代氏)

サッポロビール 新規事業開拓室 マネージャー 土代裕也氏
サッポロビール 新規事業開拓室 マネージャー 土代裕也氏

 ロート製薬が2019年に立ち上げた「BÉLAIR LAB(べレアラボ)」は、香り×サイエンス×テクノロジーによって新しい体験価値を創出するフレグランスブランドだ。自社ECサイトとAmazonでオリジナルの商品を販売するD2Cモデルを採用している。

 ブランドの取り組みについて、代表を務める星亜香里氏は次のように紹介する。

「BÉLAIR LABではプロスポーツチームと協働し、香りが人々の健康やパフォーマンスに与える影響の研究・実証も進めています。BtoB領域で香りの可能性を開拓し、D2Cでは消費者の生活の中に取り入れていただく流れです」(星氏)

ロート製薬 BÉLAIR LAB(ベレアラボ) 代表 星亜香里氏
ロート製薬 BÉLAIR LAB(ベレアラボ) 代表 星亜香里氏

個人の思いを裏打ちする仮説はあるか

 大手メーカーからD2Cブランドはどのようにして生まれたのか。HOPPIN’ GARAGEの立ち上げ背景には、サッポロビールが元々掲げていた「お酒と人との未来を創る」というビジョンがあったそうだ。

「会社のビジョンを私なりに解釈した結果、より多くの方がビールづくりに関わることのできる未来をつくりたいと思ったのです。ビールの醸造には免許を要するため、ビールづくりに参加できる人は自ずと限られます。これまで参加できなかった方々の創造性と、サッポロビールが140年以上磨き続けてきた技術を掛け合わせることで、新しいものを生み出し、お客様に再び還元する循環をつくっていきたいと考えました」(土代氏)

 一方BÉLAIR LABは、星氏自身の思いがブランドローンチに大きく影響しているという。

「当社は製薬会社ですが『人の課題を薬以外のアプローチで解決に導きたい』という個人的な思いが着想のきっかけでした。たとえば不眠で悩む方に対し、アロマの香りで幸福感や入眠しやすい環境を提供することはできます。香りはストレス社会の“やさしい”課題解決方法になると考え、事業を考え始めました」(星氏)

 HOPPIN’ GARAGEは、サッポロビールにとって初のD2Cブランドだ。前例がない中で新規事業を立ち上げるプロセスは決して平坦ではない。両氏は社内の承認をどのように得たのか。

 土代氏は「個人の思いを裏打ちする仮説」の必要性を強調。HOPPIN’ GARAGEの立ち上げに際しては、クリエイターエコノミーの隆盛を事業仮説の柱にしたそうだ。

「デジタル技術の進化を背景に、創作活動を営む個人が組織を介さず直接稼ぐスタイルが確立されました。それよって形成される経済圏も急成長しています。海外では醸造免許の制約がない地域において、一般の方がビールをつくり、スターブルワーになっているケースもあるのです。『ビール業界においてもクリエイターエコノミー拡大の可能性がある』という仮説を立て、社内を説得しました」(土代氏)

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この記事の著者

和泉 ゆかり(イズミ ユカリ)

 IT企業にてWebマーケティング・人事業務に従事した後、独立。現在はビジネスパーソン向けの媒体で、ライティング・編集を手がける。得意領域は、テクノロジーや広告、働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/04/26 08:00 https://markezine.jp/article/detail/41981

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