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第106号(2024年10月号)
特集「令和時代のシニアマーケティング」

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生活者データバンク

シニアマーケットの展望~世代論で語れない「これからシニア」がカギを握る

 高齢化にともない拡大するシニアマーケット。その一方で「セグメントをどう考えたらいいのか」や「ニーズはどのように絞り込めばいいのか」など、実は深く考えるとまだ解明されていないことが多い。本記事では、シニアマーケットにアプローチする際に、必要な視点について解説する。

はじめに~何歳からシニアなのか?

 シニアを対象者としてモノづくりやサービス開発をする際、「シニア」を何歳くらいからと想定しているだろうか? シニアを「高齢者」とした場合、各種統計データを見るとわかる通り、我が国では65歳以上を指す。これは国の制度上、65歳からを「前期高齢者」とし、年金支給年齢もすべて65歳以上になるように現在移行中であるからである。WHOでは65歳からと定義づけている。

 一方で我が国における企業の定年の年齢は60歳が一般的であり、定年制がある企業のうち、定年を60歳とする企業は79.3%を占めている(平成29(2017)年厚生労働省調査より)。このことから「シニア」を定年後とするなら、60歳以上を想定することになる。

 ただ昨今問題になっている高齢ドライバーのニュースについて、SNSなどを追ってみると、「50歳以上は高齢者」という投稿が多く、もはや社会一般の通念では50歳も「シニア」なのかもしれない。

 このように「シニアマーケットを攻略したい」と考えたとき、各企業は具体的に何歳から何歳を想定しているのか、まずは認識を統一する必要があるだろう。

各種統計データに見るシニア(高齢者)の市場規模と4つの類型について

 下記グラフは、シニアマーケットを攻略しようとするとき、一度は目にするものであろう。

(出典:株式会社日本SPセンター)
(出典:株式会社日本SPセンター)

 ここではいったん政府が定義する「65歳以上」のシニアについて考えてみる。

 この4類型に出てくる「ギャップシニア」とは2014年に日本総研が命名したワードで、「要介護というわけではないけれど、日常生活の中で諦めや我慢が積み重なっている」(日本総研Webサイトより)状態で、言い換えれば「放っておけば要介護状態になってしまう人たち」である。「ディフェンシブシニア」とは年金以外の定期的収入がなく、経済活動に関しても文字通り「守り」に入っている人たちを指す。

 シニアマーケティングと聞いてまず思い浮かべるのは「アクティブシニア」と「ケアシニア」だろうか。「ケアシニア」については、ライフスタイルなどは容易に想像が付くだろう。「アクティブシニア」については就労者なので、統計上、数値化しやすく、「ディフェンシブシニア」と合わせて、開拓すべきマーケットである、と認識されがちである。

 ただ、「就労しているかどうか」や「介護認定を受けているかどうか(あるいはその予備軍なのか)」という、2軸の掛け合わせだけで開拓すべきかどうかを判断してよいのだろうか?

 就労ということで考えると、働きたくて働いているのか、働かざるを得ない状況にあるのかによって、価値観やライフスタイルは大きく異なるであろう。一方でいわゆる健康寿命を超えても、多少の疾患を持ちつつ前向きにアクティブに過ごしている人を見落としてはいないだろうか? 想像するような「介護予備軍」ではないし、「守り=堅実な生活」を送っているからターゲットではないと切り捨ててしまうのは些か尚早ではないかと考える。

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この記事の著者

小関 久美(コセキ クミ)

株式会社インテージクオリス マーケティング戦略支援室 リサーチディレクター・マーケティングコンサルタント・生活文脈探求家(エスノグラファ)

 大手広告代理店にてマーケティングプランナー。大手化粧品メーカーにてPM・BM。その後、定性調査を軸としたマーケティングコンサル会社を起業。フリーのマーケティングリサーチャーおよびマーケティングコンサルタントを経て、再び会社員として中堅・大手リサーチ会社にて定性調査リサーチとコンサルに従事。2020年より現職。...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/05/17 09:30 https://markezine.jp/article/detail/42107

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