サイボウズ「kintone」におけるテレビCMの意義
コロナ禍以降、デジタル化やリモートワークの定着などを理由に、BtoB企業が新規の顧客へアプローチすることが難しい状況が生まれた。同セッションは、そうした中で認知を拡大し、リードを獲得していくためのコミュニケーションについて議論。はじめにプロダクトの紹介と、「プロモーションにおける、各媒体の活用の位置づけ」について語られた。
まずはサイボウズの山田氏より「kintone」について説明された。同サービスは、累計2万7,500社以上(2023年3月時点)が利用しているサイボウズの業務改善プラットフォームだ。誰でも簡単に素早く業務アプリを作成できるのが特徴で、顧客管理から交通費申請、問い合わせ業務など、幅広い用途で活用されている。
近年の「kintone」のメディア活用において、特筆すべきはテレビCMへの掲出だ。2020年の年末に初めてCMを流してから、「表計算ソフトに困ったらキントーン」をテーマに露出を続けてきた。困っている状態とは、「表計算ソフトを使った時に重くて開かない」「最新版がわからない」といった課題を抱えている状態を指す。
「CMデビューから2年間は、製品名を覚えてもらうことを目的としていた」と山田氏は振り返る。表計算に頭を抱えるビジネスパーソンのもとに女神があらわれ、「悩んでいるならあの雲に乗りなさい」と言ってキントーンに乗せると、前出の課題から解放されてハッピーになるのがCMで描かれている内容だが、それを表現する15秒の間に「キントーン」「サイボウズ」という文言を2回ずつ入れ込んだ。
各レイヤーに合わせ、適切なアプローチを
放映後に狙い通り「kintone」の認知が上がってきたのが2022年3月頃のこと。そこから戦略を変え、リアルな製品画面を登場させるクリエイティブ展開にしたという。
「認知が蓄積されてきたタイミングでリアルな画面イメージを登場させ、興味理解を引き上げる狙いです」と山田氏は説明する。
また、CM以外にもYouTubeなどの動画系Webメディア、ビジネス系メディア、電車やタクシーなど、オンライン・オンラインを組み合わせた様々な媒体でコミュニケーションを展開しているが、そこにはBtoB企業ならではの問題と、それに対する工夫が施されている。
というのも、テレビを見て「kintone」を導入したいと思う人がいても、認知から契約に至るまで、他のツールと比較したり、社内稟議にかけるプロセスが3ヵ月から1年以上かかったりするケースがある。
その間にも経営層から「コスト削減できるの?」と問われることもあるほか、他の現場メンバーから「新しいシステムは不安……」など、ハードルが増えてくると導入担当者のモチベーションも下がってきて、挫折する人が出てきてしまうのだ。
これらを打破するべく導入担当者を後押しし、スムーズに導入ができる環境づくりのため、周辺の人たちへの認知活動も必要と考えた。
たとえば、システム部門に対してはIT系メディア記事で訴求するなど、ターゲットによってメッセージや広告の露出量を変えていると山田氏は語った。