影響を受けたSDGsの項目、最も高かったのは?
2015年9月、国連サミットで採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」。期限とされているのは2030年であり、8年目である2023年はちょうど折り返しのタイミングともいえる。全国3万人に約130ジャンルにおよぶ、所有/嗜好ブランドなどを聴取し蓄積しているマクロミルの「ブランドデータバンク」ではSDGsに関して、「認知・関与度」と「影響を受けているSDGs17の目標」という2つの項目について聴取を行っている。
図1は、2023年1月調査における結果だが、認知・関与度について確認していくと、89%がSDGs認知者(SDGsという言葉を聞いたことがあると回答)であることがわかる。多くの人が「SDGs」について認知していることがわかる一方で、SDGs意識/行動者(実際に行動しなければならないと感じている/している人)の割合は29%となっており、知っている人と実際に行動しようとしている人ではまだまだ乖離がある。
続いて、SDGs意識/行動者がどのような目標に影響されているか確認すると、最も高いのは「【つくる責任 つかう責任】食糧の廃棄を半減させ食品ロスを減少させる。持続可能な消費と生産のパターンを確保する。」(11%)であり、2番目に「【海の豊かさを守ろう】海洋ごみや富栄養化を含む、特に陸上活動による汚染など、あらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に削減する。」(10%)、次いで「【気候変動に具体的な対策を】気候関連災害や自然災害に対する強靱性(レジリエンス)及び適応の能力を強化する。」(8.8%)という順番であった。「影響されている目標」という聞き方による影響が大きく、具体的に生活の中でアクションを起こしやすいような課題に関わる項目が上位であることがわかる。
この最も高い【つくる責任 つかう責任】と回答している人たちを「食品ロス意識/行動者」として、どのような特徴があるのか「SDGs意識/行動者全体」と比較することで食品ロス問題に関心の高い層を深掘り、明らかにしていく。
食品ロスを意識/行動するのは「食への関心の高い高齢専業主婦」
農林水産省が公開している「食品ロス推計値」では、2020年度は522万トンで、様々な法律や対策などの効果もあってか、2015年度からは右肩下がりであるだけでなく、推計を開始した2012年度から過去最低値となっている。事業系食品ロスが目標値に近づく中で、今後はより家庭系食品ロスに対する関心や対策が強まっていくと考えられる。
現在「食品ロス意識/行動者」はどのような人なのか明らかにするため、基本属性を見ていく(図2)。SDGs意識/行動者全体と比較すると、年代は60代の割合が高く、性別は女性が多いことがわかる。また、職業は会社員が多いものの、会社員は全体よりも「食品ロス意識/行動者」の割合が低い一方で、専業主婦やパートアルバイトは全体よりも「食品ロス意識/行動者」が高いことから、高齢層の専業主婦が「食品ロス意識/行動者」属性の特徴であると考えられる。
世帯・個人年収や1ヵ月に自由に使えるお金、1ヵ月の貯金額などはSDGs意識/行動者全体よりも低いため、お金に余裕がある層というわけではない。専業主婦は、家庭で調理をする機会が多いと思われるため、食品を扱うことが多いことから食品ロスを身近な問題として捉えているのかもしれない。
続いて食品ロス意識/行動者の興味関心についても確認していく(図3)。興味関心を「SDGs意識/行動者全体」と比較して差分の大きい順に並べてみると、「お菓子・食品」、「旅行・レジャー」、「お茶・コーヒー・紅茶」、「外食・グルメ」、「健康・医療」となっている。食に関連するものが上位であることから、「食品ロス」に対してのみ意識が高いというよりも、食全般に対して興味関心が高い層であると考えられる。
具体的に購入している食品カテゴリを見てみると、「ヨーグルト」、「アイス」、「米菓」、飲料では「お茶」、「乳酸菌飲料」、「野菜ジュース・果汁飲料」などが高かった。購入上位のカテゴリにおけるブランドも見てみると、どのカテゴリにおいても基本的には国内企業が上位であり、こだわりを持って購入していることがうかがえる。
食への関心は高い一方で、外食の頻度は月1からそれ以下の頻度であまり外食はしない。また、保有している家事家電・設備は「オーブン付きレンジ」、「フードプロセッサー」、「ガスコンロ」、「システムキッチン/ガス」、「食器洗い機/乾燥機」、「浄水器」と料理に関連する家具家電・設備が「SDGs意識/行動者全体」と比較して上位であり、やはり外食よりも自炊をメインにしていると考えられる。
その他にも、ボリューム層の年代の影響も大きいと考えられるが、味の好みは「あっさり・薄味」や「さっぱり」が「SDGs意識/行動者全体」と比較して高い。