SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

おすすめのイベント

おすすめの講座

おすすめのウェビナー

マーケティングは“経営ごと” に。業界キーパーソンへの独自取材、注目テーマやトレンドを解説する特集など、オリジナルの最新マーケティング情報を毎月お届け。

『MarkeZine』(雑誌)

第106号(2024年10月号)
特集「令和時代のシニアマーケティング」

MarkeZineプレミアム for チーム/チーム プラス 加入の方は、誌面がウェブでも読めます

有園が訊く!

急速に広がる生成AIは、マーケティングにどう影響する?AI活用を前提とした時代に競争優位を築くには

 有園雄一氏が業界のキーパーソンや注目企業を訪ね、デジタルが可能にする近未来のマーケティングやブランディングについてディスカッションする本連載。Strategy Partnersの西口一希氏を迎えた今回のテーマは、生成AIとマーケティング。ChatGPTをはじめ、広告やマーケティングにも大きなインパクトを与えている生成AIは、果たしてこの先どのような変化をもたらすのか。AIによって開かれる可能性についてディスカッションする。

クリエイティブ分野から生成AIが登場した衝撃

有園:西口さんは、ご自身でAI系のサービスをいろいろと試されていると思います。ChatGPTやMidjourneyが出始めたころから、かなり使い込まれている様子を拝見していました。『たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング』(翔泳社)の最後の章でも、テクノロジーの発展がビジネスや生活をどう変えるかを書かれていたと思います。

西口:AIによるマーケティング領域の最適化は、遅かれ早かれ実現すると思っていました。著書で発表したフレームワーク「9segs(ナインセグズ)」の分析も、自動化が見えています。

 レイ・カーツワイル氏が提唱したシンギュラリティを迎えるのは2045年だとされていますが、その手前で様々な分析も打ち手の考案もAIが自動化するし、特にデジタルマーケティングの広告やWebサイトの見せ方、LPの作り方などもAIで最適化されるでしょう。マーケティングもビジネスもすべて、多くの業務がAIに取って代わられるだろう、と。

 ただ、こんなに速く生成AIまで発展するとは驚きでした。特に衝撃的だったのは、Midjourneyの登場です。生成AIが、クリエイティブ分野から登場したことが二重に衝撃でした。

有園:クリエイティブ分野から、というのがなぜ衝撃だったのですか?

西口:そのアウトプットが、人間の五感を直接刺激するものだからです。

 生成AIよりも前のAIは、いわば裏方でした。一般生活者が触れるサービスや仕組みの裏側で、人間が担っていた業務を高速で代替していました。それが、人間が直接的に解釈できるアウトプットがもう登場したこと、さらにその生成AIがロジカルな言語生成ではなくビジュアルだったことが、輪をかけて驚きだったんです。

 テキストなら頭で理解しますが、絵は感覚で受け止めますよね。そもそも、人間はロジカルな判断で経済活動を行っているようでいて、実は「欲しい」気持ちに基づく購買の判断などには多分に五感が関わっています。そこにダイレクトにAIが関与するのだと、驚愕しました。

Strategy Partners 代表取締役 西口一希氏
Strategy Partners 代表取締役 西口一希氏

人間の五感に直接AIが刺激を与えられるようになった

有園:なるほど、そんなふうにご覧になったんですね。

西口:裏方ではなく、表に出てきたこと、しかもそのアウトプットが人間にとって納得感があり、直接コミュニケーションできる。美しい絵もそうだし、AIアイドルなども象徴的だと思いますが、分野によっては人間の欲望をAIがダイレクトに満たすことができるようになったわけです。

 すると何が起こるかというと、人の需要と供給の間にある様々な仕事がなくなっていきます。人が生きていく上で必要不可欠なものや欲しいと思うものと、その提供は、通常は大体一致しません。需要と供給のバランスを図るために、世の中のビジネスのかなりの部分が存在していましたが、これをAIが直接つないで圧縮することで、経済規模は縮む方向に行くはずです。

 最終的には、世界の資源が最適化されると思います。それは長期的にはいいことだと思いますが、短期的には痛みをともなうかもしれないです、仕事がなくなるという点で。

有園:確かに、しばらくはその時期が続きそうです。パラダイムシフトが起きると既存の経済システムは効率化していく、それは歴史的に何度も起こってきたことですね。たとえば米国で自動車が普及してきたとき、馬車を扱う人の仕事は減っていったわけで。

西口:おっしゃるように、これまでも技術のブレイクスルーによって人間の仕事は変わってきたと思います。今回が過去のパラダイムシフトと違うのは、とにかくスピードが速すぎることです。

 マーケティングやビジネスが目に見えて効率化するのがいつなのかの予想は難しいですが、たとえばサイバーエージェントではかなり早くからAIの研究開発に投資し、人も割いています。一方で、おそらく以前のやり方での制作を指揮するディレクター職は減っているのではないかと思います。

会員登録無料すると、続きをお読みいただけます

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

次のページ
プロンプトを書けるか否かが、AI活用の分かれ道

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
有園が訊く!連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

有園 雄一(アリゾノ ユウイチ)

Regional Vice President, Microsoft Advertising Japan

早稲田大学政治経済学部卒。1995年、学部生時代に執筆した「貨幣の複数性」(卒業論文)が「現代思想」(青土社 1995年9月 貨幣とナショナリズム<特集>)で出版される。2004年、日本初のマス連動施策を考案。オーバーチュア株式会...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2023/07/06 08:00 https://markezine.jp/article/detail/42633

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング