ユーザーにコンテンツを届けるために、考えるべき要素
杉山:コンテンツでは、今どのようなものが人気ですか。
市川:2022年のYouTubeのトレンド動画ランキングでは、10位以内に当社のクリエイターのコンテンツが3つ入りましたが、ジャンルはバラバラです。1位は「HIKAKIN」のミュージックコンテンツ、他の2つはバラエティ番組でドキュメンタリー要素を掛け合わせたものです。
その一方、引き続きタイパ(タイムパフォーマンス)を重視した短い動画は人気です。今や料理や掃除に関する動画など、40~50代の人たちもショート動画を見るようになりました。
ここ数年はテレビデバイスで動画配信を視聴する人が増えています。その結果、「ながら視聴」が増えているため、長いコンテンツが視聴されやすくなってきました。このように、視聴のされ方にも多様性が生まれているので、「どうやって視聴されるか」まで考えてコンテンツを作る必要が出てきました。
青木:ブランド戦略やリサーチの支援をする中で、最近は企業が発信するための“場”やコミュニティの構築についてよく相談が来ますね。たとえば、展示会のバーチャル開催やオウンドメディアでの発信、メタバース活用などがあります。もちろん、そこにはコンテンツも含まれます。

市川:作られるコンテンツや提供方法に加え、消費者のニーズや関わり方も多様化していますね。アマナで進めていきたいと思っている領域はありますか。
青木:リアルとバーチャルが混じり合う体験を作る挑戦は、興味深いと思っています。デジタル化が進む中で、人々のコミュニケーションの在り方はさらに多様化し、可能性が広がっていますから。
市川:私の子どもは、学校から帰ってきた後にゲームの中の集合場所で友達と会っています。これも、まさにリアルとバーチャルの掛け合わせですね。
求められているのは、心を動かす熱量
杉山:UUUMの今後の戦略についてもお聞かせください。
市川:今世の中が欲しているのは「人が中心」なコンテンツです。私たちはクリエイターのこれまでの背景・文脈やストーリーを加味することで、より熱量の高いコンテンツになると考えています。これを「コンテキストドリブンマーケティング」と呼び、推進しているところです。
たとえばHIKAKINは、ヒューマンビートボックス(マイクだけを使い、様々な音を再現する音楽の技法)でゲームの楽曲を披露したことがきっかけで多くの人に注目されました。その後、様々なコンテンツを経て今に至ります。そして2023年は、映画「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」のアンバサダーに就任しました。
彼がスターダムを駆け上がっていく歴史において、初期にはゲームコンテンツがあり、時を経てゲームコンテンツ映画のアンバサダーになった。このようなストーリーはファンも喜びますし、これまで知らなかった人にも広がります。
杉山:クリエイターの文脈をコンテンツに組み込むことで、見ている人の気持ちを一層動かすのですね。HIKAKINといえば、話題になっている彼がプロデュースしたカップ麺「みそきん」はいかがですか。

市川:会社員だったHIKAKINが人生を変えようとクリエイターに転身しチャンレジしていた頃、大好きなラーメンをよく食べていた歴史が背景にあります。また「動画の活動を休んでまで本気で考えた」といった、彼の熱量を消費者に感じとってもらえました。