有名企業が「メイク=女性」という固定観念の打破を目指す意義
──ありがとうございます。確かに男性は美容情報や肌のことについて知る機会はあまりないかもしれませんね。ゆきさん、静さんはUNLICSの紹介を聞いてどう感じましたか?
ゆき:「メイクは女性がする」という固定観念があると思うのですが、そこに花王さんのような有名企業が疑問を投げかけていくことは、ジェンダー問題の改善につながると思いました。
またルッキズムの観点から考えると、ひょっとするとルッキズムの助長になるかもしれないという懸念も感じました。現在の男性は「メイクしたいけど、やりにくい」というのは事実ですが、今後そういう偏見がなくなってくると、女性と同じように「メイクはやるべきもの」「したくないけどしなければならない」というような悩みも出てくるのかな、と考えてしまったんです。化粧をするのも自由、しないのも自由ということも伝えていく必要があると感じました。
──なるほど、面白い視点をありがとうございます。その視点については後ほど花王の皆さんの意見も聞いてみましょう。静さんのご意見はいかがでしょう?
静:私も男性の友人から「人の目が気になってメイクしたいけどできない」という悩みを聞いたことがあるので、UNLICSの名前の由来にあるように、男性も「好奇心の赴くままに自分の美を追求していい」というメッセージは大変素晴らしいなと思いました。

静:一方で、ゆきさんの意見にも共感します。私もメイクしますが、化粧はそもそもお金も手間もかかります。だから「メイクをしたい男性がすればいい」というスタンスで、したくない男性はもちろん「しない自由」もあると感じました。それも多様性だと思うので、そんな多様性を尊重するようなメッセージを発信していただければいいなと思いました。
男性も女性も「メイクはやりたい人がやればいい」という自由を
──「男性も、メイクする自由・しない自由があっていい」という興味深い問題提起がありました。このご意見を花王の皆さんはどのように受け止めますか。
岩田:本当におっしゃる通りだと思います。私たちは「男性みんながメイクしよう」ということをアピールしたり、それを目指したりしているわけではありません。逆に女性の方に対しても、メイクしたくない方は無理にする必要はないと思います
いまの世の中は、「女性はやはりメイクしないと」という風潮や社会的なしがらみも少なからず残っていると感じており、性別に関係なくメイクをしたい人がする、したくない人は無理にする必要がないという多様性のある社会を目指すことが重要だと感じます。
ブランドとしても根底には「自分の気持ちのままにメイクと関われる人が増えれば」という思いがあるため、この点でAsterの皆さんと目指している世界は同じだと思います。
──スキンケアやメイクも「みんなでやろう」というわけではなく、したい人が自由にできるような世の中を目指しているわけですね。将来的には「男性用コスメ」「女性用コスメ」といった分類が消えて、ジェンダーレスになる可能性もあるのでしょうか。
中村:そうですね。ジェンダーレスという表現が適しているかどうかはさておき、将来的には化粧品において男性用・女性用という性別だけを理由に選択の自由が奪われてしまうことのない社会を目指しています。ただ、放っておいてもそういう世の中になるわけではありません。そこでUNLICSは、まず男性の美容に寄り添い、身だしなみを超えた美しさへと導いていくところからスタートしているわけです。