カミングアウトが目的ではない
研修ではカミングアウトについても解説します。「カミングアウトをしている場合としていない場合で生産性に30%の差が出る」というデータがあるのをご存知でしょうか。カミングアウトをしていない当事者は、職場で自分ではない誰かを演じながら同僚とコミュニケーションを取ることになります。必要以上に気を遣いながら働くことは、生産性に影響を与えかねません。
カミングアウトに関する基礎知識をレクチャーした上で、当社での取り組みを共有します。制度をどう整えたか、それによって何が変わったのかをお話しするイメージです。LGBTQ+やカミングアウトについて解説した後は、アライについてお話しします。必ずお伝えしているのが「アライの目的はカミングアウトをさせることではない」ということです。カミングアウトをするかどうかは本人が決めるものであり、することが是ではありません。ただ、カミングアウトが“できない”環境は良くないため、当事者に選択肢がある状況をつくる役割がアライなのです。
あなたはストッパー?シェルター?
座学を経てケーススタディに移ります。何人かのグループをつくっていただき、特定のケースについてディスカッションを行う流れです。たとえば「親しい同僚から自分だけにカミングアウトがあった後、その同僚もいる場で差別的な発言が出た」などの状況を設定します。なるべく身近に起こり得る状況を設定することと、正解ではなく「あなたはどうするか」を答えていただくことに心を配っています。
──なぜ正解を提示せず、各人の意見を求めるのでしょうか?
アライには様々なタイプがあります。たとえば「そういう話はやめよう」とはっきり言える人は「ストッパー」タイプです。面と向かって指摘はできないものの、話題を変えてそれ以上話が広がらないようにする「スイッチャー」や、その場でアクションが起こせなくても後で当事者にフォローの言葉をかける「シェルター」のほか、ハラスメントとしてしかるべき機関に報告する「リポーター」などもあります。アプローチの方法が一つではないからこそ、自身なら何ができるのかを考えていただくわけです。
グループディスカッションの後は「do’s&don'ts」を簡単にシェアします。男性の同性愛であればホモではなくゲイ、女性の同性愛であればレズではなくレズビアンなど、呼称の正誤を整理してから当事者に登場してもらいます。当事者から実体験やアライによる影響を語ってもらうことで、参加者がより具体的に自身の役割をイメージすることができるためです。
研修の終盤で役職/組織別のアクションをお伝えし、最後にアクションプランを作成します。プログラム全体の所要時間は1.5~2時間程度です。