企業が取り組むSDGs活動は何のため?
──りそなさんは、こうしたサステナビリティの取り組みを通じてZ世代とのコミュニケーションをどのように取っていきたいとお考えですか。また、コミュニケーションにどのようなことを期待していますか。
北條:二つあります。一つは皆さんのサステナビリティに対する感性を学びたいということ。SDGsの達成は2030年、カーボンニュートラルの目標が2050年とされていますが、この時に社会をけん引していく世代がいまのZ世代だからです。私たちの世代はその時までに進路を作る必要がありますし、その進路に向けて、皆さんの考えを聞きながら私たちの取り組みに反映したいと考えています。
もう一つはシンプルに、こうした取り組みを通じてZ世代に振り向いていただけるような企業になることです。そうでないと、会社として生き残っていけないという事情もあります。
吉本:それに関連していうと、先ほどのSXを展開するなかで、私たちが中小企業のお客様に「サステナビリティに取り組むことが企業にとって大切ですよ」と説明しても、まったくその声が届かないというケースがあるんです。「理想はわかるけど、収益にならない」といった反応や「それでお客さんが付いてくるのか、売上が上がるのか」という声をいただくこともあります。
ですが「最近の学生さんが就職先企業を決める時、SDGsや社会倫理性を重視するらしいです」と話すと、途端にお話を聞いていただけるんですね。つまり、北條さんが説明したように「自分たちの事業を良くするためにZ世代にアプローチする」という点もありますし、「中高年以上の世代の心を動かすために皆さんの声を聞いて届けたい」という想いがあるんです。そのためにもこうした機会は大切だと思いますし、サステナビリティという軸で皆さんとお話ししたいと考えています。

「支援を掲げる発信」だけでは手放しに喜べないZ世代
──確かに、サステナビリティに取り組む企業を若い世代がどのように捉えているのかぜひ聞いてみたいですね。Z世代の皆さん、もし支持する企業があればその理由と合わせて教えていただけますか?
日野原:サステナビリティに関しては、口だけでなくやはり実践しているかどうかが大事です。先日私たちの活動を通して取材した、写真プリント事業などを手掛ける「プラザクリエイト」さんは、自社のプリント技術を活用して海外の企業と提携し、Tシャツプリントの効率化を実現して必要な枚数だけ印刷する事業を展開し、衣料廃棄の問題解決に取り組んでいるようです。こんなふうに社会の流れに沿って様々なことにチャレンジする企業は魅力的だと思います。
瀧:少しずれた回答になるかもしれませんが、逆に「苦手な企業」というのがあって、端的にいえば「ジェンダー平等を掲げています!」「環境問題に取り組んでいます!」と不用意に押し出している企業が苦手なんです。もちろん「取り組んでいます」と声を上げることは重要なことなのですが、それ自体が目的になってしまっている様子で、「目標を達成したらもうやらなくなるの?」とモヤモヤする感じがあって。
私が解決に取り組んでいるLGBTの社会課題についても「支援しています!」と大声を上げるような企業がありますが、どこか商業的になっている側面があるので、支援していただける企業が増えても手放しに喜べる状況ではなくなっている印象があります。
反対に、良いと感じる企業はむしろ当たり前に取り組んでいて、目標が
達成された後のことを見据えている企業です。「それで終わり」ではなく、その先が感じられる気がします。──イメージ先行でSDGsやLGBT支援をアピールする企業が苦手ということですね。次回はその点を踏まえ、企業がサステナビリティに取り組む意義を考えていきましょう。
★こちらの鼎談は後編に続きます。