グローバルでも大きく伸長中、ダイキンの事業概況
田中:ダイキンさんは、空調専業の企業として、日本市場でユニークなポジションおられます。空調を専業としている企業は、国内外で珍しいのでしょうか?
片山:たしかに、日本で空調分野に特化している専業メーカーとして一般に知られている企業は、珍しいかもしれませんね。一方で、海外には空調専業メーカーは多数ありまして、決して特別なわけではありません。
田中:グローバル市場で見ると、ダイキンさんは今どのようなポジションにいるのですか? 昨今、海外での売上も大きく伸ばされていますよね。
片山:2022年度のダイキンの連結売上高は約4兆円で、空調機器売上では世界No.1のメーカーです。世界で初めてエアコンを発明したのは、アメリカのキャリアさんという方で、キャリア社が長く世界No.1でしたが、今はダイキンがNo.1となっています。
海外での売上も大きく伸ばしており、約170の国と地域で事業を展開しています。22年度の空調事業の海外売上比率は85%で、今では日本の売上は全体の15%にすぎません。
日本はエネルギーコストがとても高いので、省エネ性能の高い空調機器の開発が進められてきました。この省エネ性能の高さが、今、グローバルでも日本メーカーの強みになっています。
田中:日本と海外では、空調の在り方もずいぶん違うのではないですか?
片山:おっしゃるとおりです。空調発祥のアメリカの場合、空調は暖房から始まっています。暖房が必要な地域の一部では、そもそも暖房が止まると家の中でも凍死してしまうくらいですから、部屋ごとではなく全部屋で暖房をつけたままにするのが当たり前だったのです。冷房に関しても同じで、部屋に人がいてもいなくても全部屋で冷房をするというのがアメリカの空調の主流となる考え方でした。そこから、省エネの必要性がアメリカでも高まり、現在では全館空調ではなく、個別空調のエアコンも普及しつつあります。省エネ性の高い日本製の空調機器が今アメリカでも増えているんですね。
ヨーロッパでも、2000年代初頭の猛暑ではフランスで1万5,000人ほどが亡くなったそうで、それ以降エアコンへの注目が少しずつ高まっていました。ただし、夏でも比較的涼しい欧州では住宅用エアコンの普及率はまだ低く、ドイツでは5%未満とも言われています。そんな中で、近年は急激な気候変動が起きて平均気温が上がり、初めてエアコンを購入する家庭も増えてきました。そのような家庭では低温暖化冷媒を用いた当社の省エネ性能の高いエアコンが選ばれているのです。
また、ビルやオフィスにこれから新しくエアコンをつけようとする時、ヨーロッパには古い建物を大事にする文化がありますから、日本の個別空調方式のエアコンのほうが取り付けやすく、ビルやオフィスでの需要も伸びています。
田中:なるほど。省エネ性を高める技術を磨くことで、グローバルでも強くなられたのですね。海外のうちで特に強い地域はありますか?
片山:売上は近年アメリカの伸びが大きく、日本の2.5倍くらいです。その他のヨーロッパ、中国、日本、アジア・オセアニア地域は、売上比率はざっくり言うと大体同じです。
そんな中で、ブランドという視点で見ると、中国市場での「ダイキン」のブランド価値はとても高いんですよ。日本企業として進出したのが遅かったこともあり、高品質で最高級のエアコンブランドをつくるために、品質・サービス・営業と企業活動全般において一貫した取り組みを進めてきました。ある方によると、エアコン界のベンツと言われているほどです(笑)。