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マーケティング最新事例2023

“訴求しない”ブランド広告で「好意が高まった」93%、明電舎と読売広告社のZ世代向け施策

見えてきたのが「先義後利」のクリエイティブ

 ――今回のキャンペーン実施を通して得た知見はありますか?

 1つは、「やりきること」の重要さです。一切訴求をしなかったからこそ、視聴者には広告をコンテンツに近い感覚で視聴してもらうことができ、結果、MV的な没入感を維持できたのではないかと思います。

 もう1つは、儒学や近江商人の言葉として知られる「先義後利」の原則です。まずは相手にいかに喜んでいただくかを先に考え、それがうまくいけば結果は自ずとついてくるという考え方ですね。この「先義後利」というコミュニケーションの原則は広告の世界でも不変だということです。こう言うと美談として捉えられがちなのですが、相手を喜ばせられた量によって、送り手が得られる利益の量が決まるというかなりシビアな話でもあります。

 今回印象的だったのは、作中では就職誘引は一切行っていないにもかかわらず、約半数(49%)の視聴者が「就職先のひとつとして関心を持った」と回答してくれたことです。もし動画の中で就職誘引のアナウンスをしていたら、この結果は出ていなかったと思います。“自分を嬉しい気持ちにしてくれた存在である”という認識が「先」で、その「後」に就職意向の高まりという“利益”が生まれてきたのだと感じています。こうした「先義後利のクリエイティブ」のあり方や可能性を見て取れたことが、今後につながる知見でした。

アーティストとファンのような“共鳴関係”を結ぶ

 ――広告である以上、企業側に利益をもたらさなくてはいけない中で、いかに「受け手に喜んでもらう」という視点に転換させるかが重要だと感じました。うまく転換するためには何が必要だとお考えですか?

 喜んでもらうために相手におもねる必要は全然なくて、大事なのはブランドと受け手が「価値観」を共有することだと思うんです。価値観はどんなブランドにもあるし、業種やステーホルダーの立場の違いを越えて共有できるものですよね。だからブランドが「自分自身の価値観」は何なのかを深掘りすることが重要で、その根っこにある価値観に基づいたエンタメになっていれば、ブランドが主役でありながらも、受け手が喜んで共有してくれるものになりやすいと思います。

 冒頭に申し上げたアーティストとファンの関係になぞらえると、最初はアーティストが出す“作品”から好きになったとしても、「ファン」になるのは、作品の背景にある“アーティスト自身の価値観・世界観”そのものに惹かれていくからですよね。

 同じように、企業やブランドが自身の内面を深掘りして、その核心部分を共有していくことで、アーティストとファンのような、これからも続いていく共鳴関係に近づいていけるのではと思います。価値観を深掘りするという意味では、ブランドが“自分自身のインサイト”を見つけることとも言えると思います。

 ――ありがとうございます。最後に若年層との接点強化の観点で、今後の取り組みの展望をお聞かせください。

 若年層が将来的な企業価値を作るステークホルダーとして重要なことは変わらないので、今後も若年層との接点強化の取り組みは積み重ねていきたいと思っています。ただアウトプットについては、そのときどきで変化させていくことで鮮度を保っていきたいです。

 2023年春にローンチした第2弾ムービーは、世の中の動力源たる電気の“ダイナミックさ”をエンタメ化した内容になっています。こちらもSNSで嬉しいコメントをいただいていますし、次回も楽しみに待っていただけるシリーズに育てていけたらと思います。

 アーティストとファンのような共鳴関係を、企業と生活者との間で結ぶことができたら、その後の企業の発信も引き続き注目されやすいですし、受け手の反応が企業側の変革のエネルギー源にもなっていくはずです。そんな関係作りに、少しでも貢献できたら嬉しいですね。

第2弾ムービー 明電舎/『電気よ、動詞になれ。』CGアニメーション篇

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この記事の著者

落合 真彩(オチアイ マアヤ)

教育系企業を経て、2016年よりフリーランスのライターに。Webメディアから紙書籍まで媒体問わず、マーケティング、広報、テクノロジー、経営者インタビューなど、ビジネス領域を中心に幅広く執筆。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/11/02 09:30 https://markezine.jp/article/detail/43249

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