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実践企業に聞く!経済価値と社会的価値の両立

博報堂ケトル・村山さんに聞く、社会価値の提案から経済価値を創出するヒント

広告は短距離走、PRは長距離走、両方の活用が重要

菅原:今回はインタビューテーマの一つに、経済価値と社会価値の両立を挙げているのですが、「世の中と合意している≒社会的価値は高い」ものの、短期的な売上やコンバージョンなどにはつながらないPRもあると思います。

株式会社パブリックグッド 代表取締役 菅原 賢一氏
株式会社パブリックグッド 代表取締役 菅原 賢一氏

村山:そうですね。私は広告とPR、両方に携わった経験があるので両者の違いをよく感じます。広告とPRは同じように見えて、まったく異なるんですよね。広告は短距離走で、PRは長距離走だと思っています。

 広告はあくまでクライアント発信であり、ターゲットを決めて短期間でキャンペーンを回して結果を見る一方、PRが大切にするのは生活者からどう見られるか。数年間など中長期的なスパンで社会にどう見られるかをターゲット外も含めて考慮します。

 広告とPRは違いがあるからこそおもしろいですし、どちらも大切なコミュニケーションです。広告とPRの両輪で進めていくことを今の仕事では心がけています。

菅原:たとえば村山さんが2019年から携わったユニ・チャームさんの「#NoBagForMe」プロジェクトでは、誰もが生理について気兼ねなく話せる社会の実現を目指していますよね。一方で、一般的にメーカーは商品の販売促進を目指すキャッシュバックやプレゼントキャンペーン等、即時的な効果を目指す施策も実施しています。前者が中長期、後者は短期での取り組みであり、時間軸が異なりますよね。

 仮にそういった即時的に成果を出したいキャンペーンと同様に、短期間で生理について気兼ねなく話せる社会にしたいというクライアントがいたら、どう折り合いをつけますか?

村山:難しいですよね。正直なところ、これだけ情報過多な時代に一企業がひとつの概念を提唱したとしても瞬間最大風速的には手応えを感じられないのではないかと思います。1回実施したら終わりではなく、長期的に継続し蓄積することで初めて意味のあるものになるのではないでしょうか。たとえばそのワードで検索したときに、その企業が昔からその概念を提唱していたとわかれば信頼につながるでしょう。

社会価値の提案から経済価値の創出へ転換

菅原:「#NoBagForMe」プロジェクトの際は、クライアントとどう合意形成を進めていったのですか。

村山:もともと生理用品ブランド・ソフィの広告キャンペーンを担当しており、ユニ・チャームさんの事業や想いに日頃から共感していました。そのような中であるときブランドマネージャーの方が「いつか生理用品を包む紙袋が要らなくなる世の中にしたいんですよね」とポロっとおっしゃったんです。そこで皆さんの想いをこのように形にしていきませんかと私が提案したのが「#NoBagForMe」プロジェクトでした。

 2019年発足時のプロジェクトメンバーには5人のKOL(Key Opinion Leader)を起用しています。皆さん、生理について同じような課題意識を持っており、一緒に世の中を変えていきたいと賛同してくださった方々です。

「#NoBagForMe」プロジェクト
「#NoBagForMe」プロジェクト

 結果的に世の中から大きな反響をいただきました。わかりやすい点では2019年と2020年比でTwitter(現・X)において「生理」というワードが入っている会話量が約2倍になりました。また、調査の結果、商品の売上やブランドエンゲージメントも向上していることがわかりました。

 生理についてオープンでいても良いという雰囲気が形成されることで、生理は隠したり耐えたりするものではないという認識をしてもらえるようになります。結果的に、生理用品も生理期間をしのぐものから、より快適に過ごすためのものに変化し、関与度が高まることで関連商品や高価格帯商品も選んでいただけるようになったという流れです。

菅原:社会価値の提案からスタートし、結果的に経済価値に転換していったのですね。お話を聞いていて一つ思ったことがあります。長いスパンでの成果を目指すPRは、その途中途中で予算を使うため「何のためにやっているのか」と説明が必要になる場面はありませんか。

村山:そうですね。最近では特にコミュニケーションや予算が短期化している傾向があると思います。菅原さんはクライアントに対し、どうされていますか?

菅原:私の場合はクライアントに時間軸の違いを説明するようにしています。短期キャンペーンと中長期キャンペーンを合わせて走らせることの重要性ですね。短期だけを2年間繰り返し続けてきたケースと、短期と中長期の両方を2年間走らせてきたケースでは、たどり着く場所が異なることを踏まえ、クライアントと議論を重ねています。

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この記事の著者

菅原 賢一(スガワラ ケンイチ)

 株式会社パブリックグッド 代表取締役
1975年岩手県生まれ。プラップジャパン、インテグレートを経て、2013年にソーシャルマーケティングを手掛ける株式会社パブリックグッド設立。日本PR協会主催PRアワードグランプリ「ソーシャルグッド部門」にて2020年ブロンズ、2021年シルバー受賞。
2023年、事業活動...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

和泉 ゆかり(イズミ ユカリ)

 IT企業にてWebマーケティング・人事業務に従事した後、独立。現在はビジネスパーソン向けの媒体で、ライティング・編集を手がける。得意領域は、テクノロジーや広告、働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/10/19 10:14 https://markezine.jp/article/detail/43322

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