シリコンバレーで働くFirework瀧澤さん&なんドラ並木さんに取材
さてこうした間にも、またまた武富さんが、シリコンバレーで働く2人の若き日本人を紹介してくれました。

1人は、瀧澤優作さん、28歳。Fireworkという、企業が自社ウェブサイト上で動画を活用するサービスを主に提供している米国スタートアップ企業の日本代表です。このFireworkはジャパンオフィスももっていて、そのリリースには、次のような表現が見られます。
「インターネットの中央集権制をめぐる議論」について触れた後で、「Fireworkは(中略)企業やブランドがそれぞれの特性や条件に応じて顧客や視聴者と関わり、取引できる分散型インフラとしてデジタル環境を再構築するという、大胆かつ長期的なビジョンを目指しています」としています。
これは、僕にとってはDAO志向そのものです。こちらの企業のサービスは、特にNFTを活用したものではありませんが、DAOを志向する、まさしくWeb3な試みでしょう。
瀧澤さんのお話でもう一つ興味深かったのが、彼の就職に対しての向き合い方です。慶応大学経済学部に通っていた彼は、3年生の時に休学して、シリコンバレーにあるサンノゼ州立大学に1年間留学します。それも、大学の授業そのものよりも、シリコンバレーの企業社会に憧れて。滞在中、様々なイベントに顔を出し、また企業へも出かけて行き、現地で多くの起業家と知り合って行きます。
どうして、シリコンバレーで働くことを選択したかという僕の質問に、瀧澤さんは、「シリコンバレーで知り合った起業家の人達が、皆とてつもなく魅力的だったから」と答えています。そのうちの一つである今の会社(当時創業3ヵ月)に、大学卒業後すぐに、7人目のメンバーとして入社し、幹部の1人になっています。
彼のキャリアと能力からすれば、日本の伝統的大企業に入社することも、決して難しいことではなかったでしょう。しかし、彼は、その道を取らなかった。眼中にすらなかったのではないでしょうか。話を伺っている限り、彼は日本の大企業に勤める同年代よりもずっとシッカリしているように感じたし、とても充実して働いている様子でした。
日本の大企業への就活で悩む多くの大学生を知っています。瀧澤さんのような“就活”の道もあるということは、彼ら彼女らにとって、もう一つ別の選択肢(オルタナティブ)になり得るのでしょうか? 興味深いところです。
もう1人の若き日本人起業家は、並木啓悟さん、38歳。「なんでもドラフト」という「スポーツ&エンタメ」×「テクノロジー」を手がける会社(東京)と、日本企業の新規事業開発を支援する「BizDev Dojo」(シリコンバレー)の共同創業者です。
なんでもドラフト(なんドラ)は予想を通じた新たなスポーツ&エンタメ観戦体験を届けるスタートアップであり、BizDev Dojoは新たな事業創出に取り組む企業に対して具体的な一歩を踏み出す支援を行い、イノベーション創出をサポートする会社です。

並木さんは慶応大学経済学部在学中に公認会計士の資格を取得し、PwC東京に入社。その後、米国PwCに移り米国公認会計士の資格も取得。さらに、UCバークレーでMBAも取得し、シリコンバレー拠点の投資銀行Barclaysを経て、今の会社を起業しました。
並木さんのお話で特に気になったのが2点。公認会計士でありながらMBAも取得して、ファイナンスとビジネスを掛け合わせているところ。普通であれば十分と思われる公認会計士という立場に満足せずに、MBAという形でビジネスも学び、さらに起業もするという、越境性の高さです。
また、今は素晴らしいエンジニアが社内にいる、と断りながらも、「起業する時にエンジニアも共同創業者の中にいたら、もっと良かったと思う」と語ってくれたのも興味深かったです。シリコンバレー発のスタートアップが、「テクノロジー」×「ビジネス」×「ファイナンス」であることが、別の角度から語られたように感じました。
これを書いているのは、シリコンバレー訪問から帰国した翌日です。今回の訪門は武富さんの協力もあり、大変に“濃い”訪問で、紹介したいことや気づきがたくさんありました。最終回となる次回はなるべく早いタイミングで、ここまでには書ききれなかった、シリコンバレーで体験したいろいろなことを報告したいと思います。