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MarkeZine Day 2025 Retail

実践企業に聞く!経済価値と社会的価値の両立

なぜTENGAの価値観は共感されるのか?性のオピニオンリーダーが地道に続けるコミュニケーションに迫る

価値観に共鳴した仲間を作る

菅原:「性を表通りに」や「生きている、すばらしさを。」というメッセージは、社員の方々にも浸透している印象があります。インターナルコミュニケーションで工夫していることはありますか?

株式会社パブリックグッド 代表取締役 菅原 賢一氏
株式会社パブリックグッド 代表取締役 菅原 賢一氏

西野:特別な研修や採用基準があるわけではありません。そもそも、プレジャーアイテムのメーカーに入社する手前に、自分自身の心理的なハードルや、家族の理解を得るといった高いハードルが日本でいまだに存在していることは事実です。それでも入社してくれるのは、当社のビジョンに強い共感があるからこそ。志を同じくしている人が自然と集まってきてくれているのだと思います。

菅原:先日X(旧Twitter)で、「子どもも利用するドラッグストアでTENGAを売っているのはおかしいのではないか」という投稿に対して、TENGA公式ではなく、一般の方がTENGAの理念を説明するリプライや、「健康に関する商品だから自分はおかしくないと思う」といった反応が多く見られました。TENGAの価値観や本気度が一般の方まで共有され浸透していると感じます。

西野:我々のメッセージが伝わっていて、しかも自主的に発信してくださる方がこんなにも多くいるんだと実感しました。これまでの地道に想いを伝え続けるコミュニケーション活動が生んだ結果ですし、本当にうれしかったですね。

菅原:社員の方はもちろん、一般の生活者も当事者意識を持ってTENGAさんについて発信してくれています。皆さんはなぜそこまで力を注いでくれるのでしょうか?

西野:性という分野がアイデンティティと強い結びつきがあるものだからではないでしょうか。もちろんメーカーとして、技術的・品質的にもこだわりを持ってプロダクトを作っている自負はあります。ただ、性能が良いからという理由だけで購入しているわけではないこともわかっています。特に女性向け製品の「iroha」で顕著です。

 日本の女性は「セルフプレジャーをしている自分は恥ずかしい」と罪悪感を抱いているケースがまだまだ多いです。まずは自分の性的欲求も受け入れて、肯定的に楽しめるようになることが最初のステップです。irohaでは、女性の性的欲求を肯定するメッセージングに力を入れてきました。

 このように深いレイヤーでの共感を醸成してきたので、自分ごとのように感じてもらえるし、ブランドを応援することが自分を肯定することになると思ってくださっているのではないかと考えています。

アンバサダーに水原希子さんが就任、新聞の朝刊に出稿

菅原:今年3月、irohaの10周年記念アンバサダーとしてモデル・俳優の水原希子さんが就任されました。どのような経緯だったのでしょうか。

西野:2021年に放送された、水原さんプロデュースの番組『キコキカク』(Amazon Prime Video)で、TENGA本社に取材に来てくださったことがきっかけです。水原さんは商品知識も深く、「ご飯おいしい!」と言うのと同じテンションで「セルフプレジャー楽しい!」と言える、日本では稀有な存在だと思います。そんな水原さんと、irohaは共に女性たちの人生を後押ししていきたいという思いでご一緒いただけることになりました。

画像左:水原希子さんが登場するブランド広告、画像右:iroha
画像左:水原希子さんが登場するブランド広告、画像右:iroha(プレスリリースより)

 今年3月3日の記者発表会では、「女性の性」をテーマにトークセッションを行いました。報道には至らなかったもののテレビカメラも入り、当社が主催したメディア向けイベントとして最も記者数の多いものでした。ブランド設立当初はセルフプレジャーのセの字も伝わらず、むしろ性について発信することでセクハラの対象になるような経験も経て、10年目でテレビカメラの前で話すことができました。

 女性の記者さんからは「歴史的瞬間に立ち会えてうれしい」と言ってくださる方もいました。メディアの方の中には、「世の中に伝えることが社会のためになる」と考えていても「社会の公序良俗に反する」と上からストップがかかるなど苦労されてきた記者さんもいます。そういった方の努力もあってあの空間は実現しましたし、業界を超えたシスターフッドを感じました。

菅原:ナショナルブランドの広告アンバサダーも多く務めている水原さんが、irohaのアンバサダーを務めるのは大きな意味がありますよね。TENGA社の志が伝播していき、社会的価値を醸成した結果、経済的な価値も両立した象徴的な出来事のように思います。

西野:同日の読売新聞朝刊に、水原さんをビジュアルに起用したブランド広告を掲載しました。これまで考査で引っかかってきた全国紙への広告出稿は当社としても初で、一般紙にセルフプレジャーアイテムブランドの広告が掲載されるのも日本初。多くの方々と新しい価値を共創できているという実感が得られました。

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セクハラや中傷の奥に潜む社会課題

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この記事の著者

菅原 賢一(スガワラ ケンイチ)

 株式会社パブリックグッド 代表取締役
1975年岩手県生まれ。プラップジャパン、インテグレートを経て、2013年にソーシャルマーケティングを手掛ける株式会社パブリックグッド設立。日本PR協会主催PRアワードグランプリ「ソーシャルグッド部門」にて2020年ブロンズ、2021年シルバー受賞。
2023年、事業活動...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

堤 美佳子(ツツミ ミカコ)

ライター・編集者・記者。1993年愛媛県生まれ。横浜国立大学卒業後、新聞社、出版社を経てフリーランスとして独立。現在はビジネス誌を中心にインタビュー記事などを担当。

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MarkeZine(マーケジン)
2023/11/08 16:24 https://markezine.jp/article/detail/43408

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