「自分の意見でサービスが変わる」イメージを醸成
磯山:オンラインのユーザーコミュニティ「BASE FOOD Labo」についても聞かせてください。どのようなきっかけでコミュニティを設立されましたか?
齋藤:ベースフードはクラウドファンディングで立ち上がった経緯もあり、当初からユーザーとの直接のつながりを大切にしてきました。これまで試食会や事業進捗の共有会などのイベントを開催していましたが、ユーザーが増えていく中で、東京以外のユーザーともより広く接点を持ちたいと考え、オンラインコミュニティを始めました。今では会員数が3万人を超えています。
磯山:ここまでの規模で、かつアクティブ率やエンゲージメントが高い状態にコミュニティを保つのは手間がかかると思いますが、何か秘訣があるのでしょうか。

齋藤:元々健康に関心があって、同じBASE FOODを食べているユーザー同士という共通点があるので、発信しやすいし居心地もいいという特徴があります。
さらに「おすすめの食べ方」「届いたよ報告」のような投稿のフォーマットをたくさん作っていて、オンラインコミュニティに入ったばかりの人でも投稿しやすくしています。
磯山:投稿しやすい仕組み作りが重要なんですね。
齋藤:投稿した内容には専任の管理栄養士がコメントをしています。自分が投稿したものに対するフィードバックが必ずあるというのも、エンゲージメントが高まりやすい理由かと思います。
磯山:反応があったり、権威のある人からお墨付きをもらえたりすると、おもしろくなって自分ゴト化していきますよね。
齋藤:その他にも、ユーザーからの要望を商品開発やサービス改善につなげたら、それをコミュニティ内で報告しています。これによって「自分の意見でサービスが変わるんだ」という意識が醸成されているので、皆さん積極的に発言していただいているのかなと思います。
コミュニティの名称を「Labo(研究室)」にして、ユーザーを「研究員」と呼んでいるのもそのためです。自発的に意見を出して改善することがその人の研究プロジェクトだという建付けになっています。
ユーザーの生の声を活かしたプロダクト作り
磯山:ユーザーからの意見で商品やサービスを変えた具体例を教えてもらえますか?
齋藤:たとえば、「電子レンジで温める際に脱酸素剤が剥がれづらい」という声があったので粘着力を弱めたり、「2個入りのパンを朝食に1個食べた後、袋を開けたままでは会社に持っていきづらい」という声を受けて個包装にしたりといった改善をしています。
クッキーを発売したのも、「リモートワークが多くなって、片手でパソコンを操作しながら間食として食べられるものが欲しい」という声からでした。
磯山:この連載をしていて、特にBtoCのブランドの皆さんは、ユーザーの声を非常によく聞いてビジネスに反映していると感じます。
齋藤:完全栄養食は世の中になかったカテゴリの商品なので、どのように使われるかは未知数でした。ユーザーの生の声を聞いて、商品の使われ方やシーンを解像度高く理解することが重要でしたし、実際に多くの気づきを得ています。
磯山:ユーザーの声から得た気づきのうち、どれを取り入れ、どう改善していくかなどは、どういう基準で判断していますか?
齋藤:まず、マイナスをゼロにする改善はできるだけ早く取り組みます。味は人によって好みが分かれますが、脱酸素剤が剥がれづらいほうがいいという人はいませんよね。
好みが分かれるものについては、意見をそのまま商品化するのではなく、欲しいと思った理由や具体的な利用シーンを個別にヒアリングして深掘りします。そして、意見が出た背景を理解した上で、商品の活用の幅が広がりそうだとわかれば商品化します。商品化の際は、インパクトが大きいもの、たくさんの人に喜んでもらえるものから順に取り組みます。
磯山:なるほど。それはビジネス上そうですよね。
齋藤:先程コミュニティ運営の話でも触れましたが、ユーザーの声を反映させたら「反映しました」ときちんと伝えることが重要です。結構これをやれていない会社が多いと思います。