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MarkeZine Day 2025 Retail

「欲望(Desire)」で紐解く、消費者の今と未来

消費の好循環が起きる構造を可視化――消費者の「欲望」「消費」「心理変容」の因果関係から得られる示唆

生活者の生声を、消費の好循環構造に重ねてみると

 DDDが実施する心が動く消費調査では、「どういう気持ちになりたくてその消費をしたのか」「新たに買いたいと思ったモノ」「お金を払ってやりたいことや利用したいサービス」などをフリーアンサー形式で多数聴取しています。その中から1つ選び、今回の共分散構造分析の結果に重ね合わせてみました。

 以下は、男性20代の方のリアルな声です。

 心が動いた買い物・商品は、<モビリティリゾートもてぎ>で「ポルシェの体験走行会を観戦し、見たことのない時速300kmの世界に感動した」とのことでした。さらにこの方は、施設内にあるHonda Collection Hallにも立ち寄り歴代車の展示を見て、新たに買いたいと思ったものとしては、<N-ONE>を挙げました。「免許のAT解除をしたので、N-ONEのマニュアル車を購入したい」と思っただけでなく、<スーパーカブ>も「通学で購入したい」ということでした。

 N-ONEについては、「走りを楽しむとともに、祖母の通院や買い物の役にもたてるから」、という回答も寄せていただきました。

図版1「消費者11の基本的な欲望」
モータースポーツイベントに参加して自動車と二輪車の購入意向が生まれた

 では、この一連の回答内容を今回の共分散構造分析で明らかになった構造と照らし合わせてみましょう。

 この方の場合は、元々人間の心に存在する「世の中の大切なものを守りたい」という欲求が起点となり、Honda Collection Hallで大切に保存されている歴代のモビリティに感心→次にやりたいことを見つけることでき(熱意の拡がり因子)→新しいものへ取り組む意欲がわいた(N-ONEでしかもマニュアル車を購入して自分で自由自在に運転したい、かつ祖母の送迎にも使えて両得!)、という自分なりの新しい商品価値の発見に至る好循環ループに入ったのではないでしょうか。

日本の消費社会を豊かにするマーケティングを目指して

 本稿では、共分散構造分析の見方とDDDがなぜ今回の分析に注目したかの論点を紹介してきました。

 CX、DXなどデジタルテクノロジーの進化で消費者行動がマーケティングデータとして数値化される時代だからこそ、逆に消費者の深層にある意識、価値観、ニーズといったものが見えにくくなっていると感じます。

 日本のGDPの中で民間最終消費支出は6割弱を占めており、家計の金融資産は2,199兆円も存在していると言われます。しかしながら、政府統計によると個人消費は伸び悩んでいる様子もうかがえます。民間最終消費支出は、2024年7-9月は前期比+0.9%でやや持ち直しましたが、2023年7-9月から2024年4-6月まで3期連続でマイナスを記録、昨今の原材料価格による物価高で消費者の財布は固く閉じたままです。

 人生100年時代を迎え、消費者は生活防衛のため日頃の買い物でも質と量を減らしたり、少しでも安いものを求めてスーパーを買い回りしたりしています。さらに個人消費も低迷しているのです。これが果たして、豊かな社会と言えるのでしょうか。

 モノを買いたいという欲望を基点にしたマーケティング、仲でも先述の2つの欲求を満たしてあげるようなマーケティングを実践することには、マクロ的に日本の消費社会を豊かにしていくポテンシャルがあると信じています。

 今回の分析では、極めて総論的にもしくは俯瞰的に、社会の役に立ちたいという気持ちと、収集したり没頭したりしたいという欲を満たしてあげることが、消費を促すドライバーになるということが可視化されました。ですが、より個別具体的に商材や業種カテゴリーを前提にすると、また打ち手も変わってくるはずです。

 今回、消費の好循環を促すメカニズムが構造化できたので、DDDでは次の目標として、欲望を基点にしたマーケティングソリューションの開発を掲げています。消費者にとって少しでも望ましい消費体験が世の中でもっと増えていく用、今後も消費の好循環の在り方を追求し続けていきます。

「心が動く消費調査」概要

・タイトル:第7回 電通「心が動く消費調査」

・調査目的:変化し続ける社会環境により可視化されにくくなりつつある消費者意識を消費者の欲望視点から分析し、今後の日本の消費社会を読み解く

・対象エリア:日本全国

・対象者条件:15~74歳(第5回調査までは20-74歳)

・サンプル数:3,000サンプル(人口構成比に応じて割り付け)

・調査手法:インターネット調査

・調査期間:

 パイロット調査:2021年5月18日(火)~21日(金)

 第1回調査 2021年9月3日(金)~6日(月)

 第2回調査 2021年12月16日(木)~19日(日)

 第3回調査 2022年5月12日(木)~15日(日)

 第4回調査 2022年11月2日(水)~7日(月)

 第5回調査 2023年5月10日(水)~15日(月)

 第6回調査 2023年11月1日(水)~6日(月)

 第7回調査 2024年5月13日(月)~22日(水)

・調査機関:株式会社電通マクロミルインサイト

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この記事の著者

立木 学之(タチキ ガクジ)

株式会社電通 第4マーケティング局 未来シナリオコンサルティング部 ソリューションプランナー/電通デザイアデザインメンバー

2003年電通入社以来、消費者研究センターや電通総研など主にマーケティング部門に所属。デジタル部門でビール、航空、食品、自動車関連、製薬、金融など多くの企業のデジタルマーケティングのプラン...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/11/11 09:30 https://markezine.jp/article/detail/43657

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