ブランディングへの投資判断に関する考え方
木村:ブランドの認知(第一想起)を獲りながら、安心感・親近感というブランドイメージを醸成していくというマーケティング戦略の展開についてうかがってきました。Uber Eatsの場合は、こうしたブランディング活動にあわせて、CPAやLTVなどを指標にするパフォーマンスマーケティングも行われていると思います。売上との関係性が明快なパフォーマンスマーケティングもある中で、ブランディングがどう売上・利益に結び付くのか、ブランディングへの投資をどう考えられているのかが気になるのですが、いかがでしょうか?
中川:前提として、ブランドは売上に大きく作用すると考えています。社内でもよく議論をするのですが、トップファネルのAwareness(認知)やConsideration(検討)が強化されていないと、結局パフォーマンスマーケティングのROASも上がらないんですよね。当たり前ですが、誰も知らないブランドをパフォーマンスマーケティングで獲得するのは、すごく大変です。ですから、基本的にはブランドへの投資を行った上で、並行してパフォーマンスマーケティングに投資をしていくというのが私の考えです。

木村:特にウェブマーケターの方やスタートアップの方から、ブランドマーケティングへの投資判断が難しいというご相談を受けます。これまでずっとパフォーマンスマーケティングをやってきたが、どのタイミングからブランドマーケティングに投資していくのがよいか? という質問も多く、難しさを感じながらその企業にあわせた回答をしているのですが。もし中川さんが同じような質問をうけたら、どのように答えられますか?
中川:スタートアップの場合は特に、どれだけ資金に余裕があるかにもよるので難しいですね。そういう事情をいったん無視すると、先に挙げた考え方を踏まえて、どちらか片方に投資するならブランドマーケティングのほうに投資しましょうとお答えすると思います。たとえば、10あるうちの8割をパフォーマンスマーケティングに回すのではなく、少し比率が多いかもしれないですが、8割をブランドマーケティングに投資するというのが、私が考えるマーケティングのあるべき姿です。
ただ、既に確立されている市場でシェア争いをしなければならないような状況にいるのであれば、パフォーマンスマーケティングに投資をしたほうがよい場合もあるかもしれません。
木村:Uber Eatsは特殊な業界にあるので、ブランドマーケティングについても新鮮な情報ばかりで非常に勉強になりました! 後編では、マーケターのスキルアップ、特に戦略的思考の強化について、もう少しお話を聞かせて下さい。
セミナー開催のご案内
書籍『ブランド・パワー ブランド力を数値化する「マーケティングの新指標」』の発売に先駆け、12月1日(金)に著者 木村元氏のセミナーを開催します。書籍の内容も惜しまず公開いただきますので、この機会を逃さず、ぜひご参加下さい。
