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ブランディング先進企業に学ぶ、マーケティング戦略としてのブランディング

マーケが「one of」でも経営視点で社内をドライブしていく。スターバックスCRMOが語るCMO像

 書籍『ブランド・パワー ブランド力を数値化する「マーケティングの新指標」』の著者・木村元による本連載。この連載では、著者が本書を執筆する上で影響を受けてきた方やブランドマーケティングの進展を考える上で話をしてみたい方と、対談を重ねていきます。第2回は、ユニリーバ時代の著者の上司だった、スターバックス コーヒー ジャパンのCRMO 森井久恵さんをお訪ねしました。本稿では、1本目の記事に収まりきらなかった対談模様を番外編としてご紹介します。

前編からご覧ください

スターバックス「CMO」が「CRMO」に。人を中心にビジネスを展開する組織戦略としてのブランディング

マーケが「one of」に過ぎない中でも、経営視点で社内をドライブしていく

木村:スターバックスのブランドマーケティングについて、本当に興味深いお話をたくさん聞かせていただきました。ここからは純粋に森井さんの後輩として、もう2つ質問をさせてください。

 1つ目はマーケターのスキルアップについてです。森井さんは日本におけるトップマーケターだと思っています。森井さんから見て、優れたマーケターとはどんな人ですか? あるいは優れたマーケターになるためにはどのような資質が必要だと思われますか?

【左】株式会社Brandism 代表取締役 木村元氏【右】スターバックスコーヒージャパン株式会社 Chief Retail and Marketing Officer 森井久恵氏
【左】株式会社Brandism 代表取締役 木村元氏
【右】スターバックス コーヒー ジャパン 株式会社 Chief Retail and Marketing Officer 森井久恵氏

森井:マーケターにも様々なタイプがあります。特に、デジタルの重要性が大きくなっている昨今は素早くPDCAを回せることが求められる場合もありますし、中長期的な視点がより求められる場合もあるので、一概には言えないのですが、やはりこの3つかなと思えることがあります。

 まずは、マーケティングを楽しんでやれることです。何事も好きでなければ、追求しようとしません。これは上司に言われてできることでもないので、「なぜ? なぜ?」と突き詰めて考えられるということは、まさに資質に近いものだと思います。好奇心をエネルギーに変えて、行動を起こしていけるかどうかですね。

木村:「なぜなぜさん」気質のマーケターはよく伸びていくというのは、前回、記事には収められなかったのですが、Uber Eats Japan代表であり、僕のユニリーバ時代の元上司で森井さんの元部下である中川さんもおっしゃっていました(前回の記事はこちら)。2つ目は何でしょうか?

森井:2つ目はCMOに求められる要素として、ドライブ力を挙げたいと思います。特に日系企業のCMOにはこの力が絶対に必要だと思います。外資系でブランドマネジメントを採っている場合はマーケティングを中心に組織が回っていて、マーケティングを起点にしたプロセスでイノベーションを起こしていくというモデルになっています。一方で、多くの日本企業の場合、マーケティングは「one of」に過ぎません。店舗開発もあるし、店舗マネジメントもあるし、人事もある。その中の1つがマーケティングであるという位置づけです。さらに、日本は欧米と比べるとマーケティングの歴史が浅いというビハインドもあります。

 ただ、先にもお話しした通り、マーケティングは経営にとても近いものです(前編参照)。だからこそ、CMOには周りの部署を一気に巻込んで物事を進んでいく力が求められると思います。

スターバックスコーヒージャパン株式会社 Chief Retail and Marketing Officer 森井久恵氏 NTT東日本で法人営業を担当した後、ブリティッシュ・アメリカン・タバコ・ジャパン(BAT)に転職し営業とマーケティングに従事。BATの後に入ったユニリーバ・ジャパンには15年在職し、日本、中国、タイでマーケティング ヘッドを務める。2017年からスターバックスコーヒージャパンに入社し、2018年からCMOとして国内のマーケティングを統括している
スターバックス コーヒー ジャパン 株式会社 Chief Retail and Marketing Officer 森井久恵氏
NTT東日本で法人営業を担当した後、ブリティッシュ・アメリカン・タバコ・ジャパン(BAT)に転職し営業とマーケティングに従事。BATの後に入ったユニリーバ・ジャパンには15年在職し、日本、中国、タイでマーケティング ヘッドを務める。2017年からスターバックス コーヒー ジャパン 株式会社に入社し、2018年からCMOとして国内のマーケティングを統括している

 3つ目は、ミクロとマクロの視点を持つことです。マーケティングには経営視点が欠かせませんから、社会の動きや会社全体の課題を踏まえた上で物事を考えるマクロの視点が求められます。ですが、同時に、一人ひとりのお客様に憑依するようなミクロの視点も必要です。マクロの視点だけだと頭でっかちになってしまいますし、ミクロだけだと戦略に落とし込めないので、このバランスを取ることがとても大事だと感じています。

 この点は、小売(スターバックス)だけに限らず、メーカー(ユニリーバ)でマーケティングをしていた時もやはり同じように求められていた気がします。マクロとミクロと行ったり来たりできる器用さと言いますか、そうできることを目指せるかどうかが大事ですね。ある程度、意識と訓練が求められるところだとも思います。

木村:たしかに、N1だけでもダメなんですよね。意外とマクロ×ミクロの両方ができる人は少ない気がします。2つ目のドライブ力に関しては、昔から森井さんの真骨頂と言いますか(笑)、その背中を追いかけていました。ただ、このドライブ力に関しては、個々人のパーソナリティも関係してくるように思います。そうした部分を超えて、自分がドライバーになるために意識すべきことはあるでしょうか?

森井:ドライブ力は、上に行けばついてくるものではないんですよね。お店でもよく話すんですが、今日入社したての学生のアルバイトのパートナーでも、その日にリーダーになれるんです。そのパートナーにとってのリーダーシップとは、目の前にいるお客様に対して自分から働きかけられるか否かで、役職や業務の範囲は一切関係ありません。自ら動きを起こせるか/起こせないかの積み重ねで、推進力は大きく変わってくると考えています。

 つまり、マネージャーになる前にとれていなかったリーダーシップを、マネージャーになったら発揮できるかというと、そうではないと思います。よく言えば察して動く、悪く言えばおせっかいに乗り込んでいくということになるかもしれませんが、自分らしいやり方でドライブ力を持つことはマーケターには絶対に必要だと思います。

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MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

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MarkeZine(マーケジン)
2023/11/27 08:00 https://markezine.jp/article/detail/44096

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