先行指標を持つことの重要性
木村:「ブランド力の定義」というワードが出てきましたが、田部さんはブランド力をどう定義しているのですか?
田部:ブランド力=純粋想起されることと定義し、マーケティングしています。「〇〇と言えば〇〇」と想起される率が上がることに比例して、売上も上がっていくという考え方です。ブランドに対する好感度よりも、いかに想起されるかを重要視しています。
木村:その時にノバセルで用いている指標が「指名検索」ということですね。
私が提案している「ブランド・パワー」でも、ブランド力を可視化するために「想起率」を用います。書籍では、「認知」を助成想起/純粋想起/想起集合/第一想起の4段階に分けていて、効果検証に際しては「助成想起」「純粋想起」「想起集合」「購入率」を算出。これに加えて、顧客が持っているブランドイメージを可視化するために「POP(Points of Parity)」「POD(Points of Difference)」を測定し、これらを総合して「ブランド・パワー=売上をKGIにしたブランドの競争力」を見ていくというアプローチをとっています(詳しくは書籍を参照ください)。

田部:想起率やPOP、PODの数値は、何を基準に算出しているのでしょうか?
木村:定量調査をもとに算出します。四半期ごとに定点観測して、中長期的にブランド力を上げていくイメージです。
田部:そのような方法なのですね。指名検索も同様ですが、このブランド・パワーは、「売上に対しての初速KPI」として機能する「先行指標」の一つですよね。マーケティングの効果検証をする際、売上が最重要であることは言うまでもありませんが、売上やリピート率はあくまでも「結果指標」と置き、「先行指標」も持つことが重要であると考えています。
たとえば、「今は売上に変動はないけれど、先行指標であるPOPやPODの数値が下がってきている。原因を探ってみると、競合ブランドが類似商品を出していることがわかった」という場合、「半年~1年後の売上が危うい」と先回りして打ち手を考えることができます。ですが、先行指標を持たず結果指標のみで投資判断をしてしまうと、半年~1年くらい意思決定が遅れてしまうため、危うい状況を回避することが難しくなります。
木村:あるあるですよね、よくわかります。
田部:そうですよね、これは割とよくある話だと思います。P&Lに責任を持ってマネジメントしていくならば、先行指標を持つことが非常に重要です。
先行指標をどう設計するのがよいかは各社により異なりますが、ブランディングという観点では木村さんのブランド・パワーも良いアプローチだと思います。
POP(Points of Parity):カテゴリーにおいて、プロダクトやサービスが最低限満たすべき要素のこと
POD(Points of Difference):自社ブランドの差別化になり得る要素のこと
