日本企業のブランディングが「ふわっと」しているのはなぜか
木村:田部さんも僕も今年翔泳社から書籍を出しています。いずれの書籍も「マーケティング施策の効果検証に用いる新指標」と「ブランド力の強化」を解説したもので、アプローチこそ違いますが、考え方のベースは共通していると感じています。
今日はブランディングについて、様々なテーマで議論させていただく予定ですが、まずはMarkeZine編集部からの質問です。そもそもブランディングはなぜこうにも「ふわっと」しているのだと思いますか?
田部:それは深遠となるような問いですね。ブランディングが「ふわっと」しているのはなぜか? それは、ブランディングというビジネス領域があるからだと考えます。ブランディングの定義はたくさんあって曖昧であるほうが、解を求めて頼る人が多くなり、ビジネスとして成立しやすくなるのではないでしょうか。
木村:なるほど、なるほど。
田部:“ブランド力”にも定義は様々あり、世の中のブランディング施策は「認知度」や「好感度」の指標を上げることを目指すものが大半です。しかし「好感度が高く、テレビCMにも好意的だが、購入したことは一度もない」というような商品もあると思います。一方で、「あまり深く考えず、慣習的に購入する」商品もあります。私の場合、整髪料の『uno』がまさに該当する商品です。中学生の頃から長く愛用しているので、慣習的に購入しています。
では、マーケティングにおいて前者と後者のどちらが優位かというと、圧倒的に後者だと考えています。理由は「売れているから」です。前者の「好感度が高い」という状態を作っても、売れていないのならマーケティングが成功しているとは言い難いです。好感度と売上が連動しているような場合は、俗に言うブランディングに投資することで効果が見込めますが、あまり相関性が認められる事例はありません。
「ブランディングに予算投資をしたものの売上が伸びなかった。そこで、原因を探るために好感度分析をしてみると、好感度は高くなっていた。けれど、売上に貢献したかはわからない」というような話が横行している印象があります。
木村:ブランディングも売上と利益に繋がらないと意味がない、という考えは私も強く持っています。そうした曖昧な状況を良くしたいと思って書いたのが『ブランド・パワー ブランド力を数値化する「マーケティングの新指標」』です。
田部:私も曖昧な結果しか残らない「ゆるふわブランディング」には提言していきたいです。