最後は、サービス提供側の熱意
飯髙:現在のスナックミーでの課題はありますか?

服部:「おやつで世界を面白く。」という理念を実現するべく、さらに新しいおやつ体験を作りたいと考えています。これまでメイン事業にしてきたサブスク・ECだけでは、まだまだ足りません。卸しのビジネス展開や直営店の増加も必要だと考えています。
まったく異なるビジネスを始めることになるので、社内組織の構造も必要な人材も大きく変わってくると思います。そこで、同一のカルチャーを維持するのは難しいと感じています。
飯髙:確かに仕事のバックグラウンドや得意なことが違う人達が集まると、見えてくる壁ですよね。現在、カルチャー作りで工夫していることはありますか?
服部:先程の、ユーザーと専門家で視点が違うという話にも通じますが、採用の際には、スキルよりもマッチ度を重要視しています。直営店がオープンしてからは、店舗に行ってから面接に来てくれる方も増えました。そこで微妙だと感じたら面接も来ないでしょうし、採用におけるスクリーニングという意味でも店舗の寄与は大きいです。
飯髙:たとえば、ものすごくスキルがあって優秀でも「snaq.meは使っていません」という人が来た場合はどうしますか?
服部:使ってくれるまで、一旦待ちます(笑)。もちろん、snaq.meを使っていること自体が採用の条件ではありません。しかし、どれだけ興味を持っているのかは気にしますね。
飯髙:「好き」と言葉で言うのは簡単ですが、実際に体験しているのか否かはとても重要なポイントですね。これはBtoCだけでなくBtoBでも同じだと思います。
たとえば、SaaS系プロダクトやサービスでも「自分は使ったことがない」という社員が多いんですよね。営業資料はきちんとしているし説明もできる。でも体験していないからユーザーの課題感への解像度が低いということが往々にしてあります。お客さんの気持ちが実体験としてわかるという、その手触り感は欠落してはいけない部分ですよね。
マーケティング施策の担当がユーザー目線になれるか、営業担当が「絶対に置いた方がいいですよ」と素直に言えるかは大きいですよね。提供側の熱量が最後は鍵を握ると思います。スナックミーは採用でそこを見極めているんですね。
おやつ体験メーカーへ
飯髙:最後に、今後スナックミーが目指していることを教えてください。
服部:社内では「おやつのサブスク・ECメーカーから、おやつ体験メーカーへと進化しましょう」と言っています。“おやつ体験”と言うならば、おやつを食べられるカフェのようなものは絶対にやるべきですし、リアルでの展開は来年から加速していく予定です。また、おやつを贈るということも一つの体験です。私たちらしいユニークなギフトを作って、新しい“おやつを送る体験”も生み出していきたいと思っています。

飯髙:それはすごく楽しみです!本日はありがとうございました。
編集後記:飯髙悠太
服部さんがマーケットインでいくつかの事業開発に失敗した後、真逆の発想のプロダクトアウトで“自分自身が欲しいもの”という超ミクロな視点で始めたのがsnaq.me。
菓子市場やメーカーの課題といった構造的な部分の把握をせずにサービスを開始し、想像以上のスピードでユーザーが増加。ここだけ見ても、“誰の何をどのように解決するか”が自分自身の感じている課題から成功しているサービスである。
おやつの定期便は初回購入のハードルが高いということから、ユーザーの声が重要な点に着目し、ボックスが届いて開ける瞬間に工夫を凝らすだけでなく、自分向けにカスタマイズが可能な診断を設け、毎回届くタイミングの驚きや楽しみを提供している。また、お客様のリアルな声をメーカー様にもすべて公開し、snaq.meが誕生したことで存続できている菓子メーカーもあるほどだ。
お客様の声を大事にすることはそれだけに留まらず、対話を徹底にやり続けている。結果的にペルソナを設定しなくても、“誰のために作っているのか”をリアルから知っていく。ユーザーの声を大事にしているという話を多くのところで聞くが、ここまで徹底している企業は多くないと感じる。
「おやつで世界を面白く。」という理念を実現する上で、提供側の熱量が最後は鍵を握る、そしてユーザーのおやつの体験メーカーを目指していくsnaq.meの今後に目を向けていきたいと思う。