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飯髙悠太氏が探る「エモ」と「ビジネス」と「成長」

熱量の高いユーザーが言っていることを信じる、おやつ体験メーカーを目指すスナックミーの経営戦略

 熱い作り手精神と、冷静なビジネスパーソンの精神を併せ持つ経営者はどのように事業を成長させているのでしょうか?選び直せるソーシャルギフト「GIFTFUL」を運営する飯髙悠太氏がそのヒントを探る本連載。今回は、おやつのサブスク通販「snaq.me」を展開するスナックミーの服部慎太郎氏に、ユーザーとの深い関わりから築いたサービス展開について伺いました。

市場ニーズは度外視で始めたsnaq.me

飯髙:snaq.meはユーザーの好みに合わせたおやつボックスを定期購入できるユニークなサービスですが、“誰の何をどのように”解決したいと考えて始まったのですか?

服部:実は“自分自身が欲しいもの”という超ミクロな視点で始めたサービスです。当時娘が2歳で、彼女に与える食事や食品表示に私が興味を持つようになっていました。マルシェなどで生産者の方が直接販売しているシンプルな原材料のお菓子が好きで、「こういうのがもっと身近で買えたらいいな」と思ったのがきっかけです。

式会社スナックミー 代表取締役 服部慎太郎氏
株式会社スナックミー 代表取締役 服部慎太郎氏

飯髙:プロダクトやサービスを作る時ってプロダクトアウトもありますが、どちらかというとマーケットインでのアプローチが多い印象ですが、服部さんご自身の「こういうのが欲しい」という原体験がスタートだったのですね。

服部:後で詳しくご説明しますが、snaq.meの前にマーケットインでの事業開発に失敗していたので、真逆のアプローチでもまずはやってみようと始めたんです。最初期は生産者の方にマルシェで「こういうサービスをやるので売ってもらえませんか」と交渉して、集めたお菓子をダンボールに詰め合わせて送付する、かなり素朴なものでした。

初期の商品は外に出せないそうです。
初期の商品モックを見せる服部さん。

飯髙:そうすると、菓子市場やメーカーの課題といった構造的な部分の把握をせずにサービスを始めたのですか?

服部:最初はあまり深掘りしませんでしたね。ただ、ユーザーの増加が想像以上に早く、需要の存在自体は確信できました。そこで、改めてマーケティング調査やお菓子メーカー出身の方にヒアリングを行い、市場構造や課題を把握しました。

 中小規模のお菓子メーカーさんが私たちの主なお取引相手ですが、その背景に自社販路の獲得に課題を感じているメーカーと、サブスクサービスだから買い切りで注文できるsnaq.meとの相性の良さがあることも後からわかったことです。

ペルソナは作らず、「この人なら好き」を徹底

飯髙:リリース当初から現在まで、マーケティング施策はどのように移り変わっていきましたか?

服部:まずはFacebook広告の出稿から始めました。2、3カ月ほどで会員数が100人まで増えたので、1度広告をやめたのですが、その後も順調に会員数が増加しました。ニーズを確信できたのはこの頃ですね。

 オーガニックで成長する理由を調べてみるとInstagramやX(旧Twitter)での投稿、ママ友などリアルなコミュニティでのおすすめから広がっていることがわかりました。そこからはUGCをフル活用する方向へと転換しました。

 というのも、おやつの定期便は初回購入のハードルが高いです。しかも、一人ひとり異なるお菓子セットが送られてくるので、好みに合うかは届いてみないとわかりません。だからこそ、実際のユーザーの声が重要だと考えました。

 やはり気持ちがアガるのはボックスが届いて開けた瞬間だと思うので、写真を撮ってSNSにアップしたくなるように、見栄えのする背景紙を同梱するなど、潜在的なお客様の声をUGCで表に出していくような仕掛けを行いました。

現在届くおやつbox。気持ちが高まったタイミング=エンゲージメントを強化しやすいタイミングで情報が目に入るよう、蓋の内側にも工夫が施されている。
現在届くおやつbox。気持ちが高まったタイミング=エンゲージメントを強化しやすいタイミングで情報が目に入るよう、蓋の内側にも工夫が施されている。

飯髙:Web以外ではどのようにユーザーの声を吸い上げていきましたか?

服部:電話インタビューや年2回のオフ会イベントなど、直接お客様とお話する機会を作っていました。ご自宅にお邪魔したこともあります。みなさん、とても温かく出迎えてくださいました。2022年4月に直営店舗「snaq.me清澄白河」がオープンしてからは、店舗でワークショップやイベントを定期的に開催しています。

 お客様に会うと「自分が誰にサービスを作っているのか」がリアルにわかるんですよね。ですから、当社ではペルソナや平均化したユーザー像は設定していません。インタビュー中の写真や声を社内に共有して、お客様の顔や生活スタイルを実際に認識しながら「こういう方々がお客様なんだ」と理解してもらうようにしています。

 商品開発のときも「こういうお菓子が好きな人がいそう」と想像で作るのではなく、「これだったらあの人は絶対喜んでくれるはず」とリアルな人を対象に作ってもらうようにしています。

飯髙:「ユーザーの解像度を上げよう」と様々なペルソナを作ってみても、似たような設定になりがちですし、結局それは架空の人なんですよね。とはいえ、「○○さん」というレベルでのアプローチまでできる企業は多くないと思います。実行の秘訣はありますか?

服部:特にありませんが、ユーザーインタビューを「やらなきゃ」と義務的に思っているわけではなく、「自分で考えてもわからないから聞いてみよう」くらいカジュアルに捉えています。事前に作った質問項目を埋めたり、レポートを作ることが目的になると学べるものは少ないと思います。

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この記事の著者

飯髙 悠太(イイタカ ユウタ)

株式会社ベーシック執行役員、株式会社ホットリンク執行役員CMOを経て2022年6月に「ひとの温かみを宿した進化を。」をテーマに株式会社GiftXを創業し、「おもいが伝わる。ほしいを贈れる」選び直せるソーシャルギフト「GIFTFUL」運営。現在、企業のアドバイザーやマーケテ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

堤 美佳子(ツツミ ミカコ)

ライター・編集者・記者。1993年愛媛県生まれ。横浜国立大学卒業後、新聞社、出版社を経てフリーランスとして独立。現在はビジネス誌を中心にインタビュー記事などを担当。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/04/25 08:49 https://markezine.jp/article/detail/44251

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