これも「タイパ」を求める心理の表れ?
【欲望トレンド2】裏ブラックボックスで表シンプル:ChatGPTなど生成AIの普及により、言わば“魔法(のようなもの)”が生活にも溶け込んできた。これにより、「裏は複雑でよくわからないけれど、UI/UXはシンプルなもの」をよしとする価値観が表出し始めている。
佐藤:どんどんいきます。次は2つ目の欲望トレンド「裏ブラックボックスで表シンプル」です。ChatGPTしかり、テクニカルなものがここに入ってくるのは、みなさん想像がつくと思います。ここで力を入れてご紹介したいのは、むしろアナログのほうです。
トレンド事例5:小学館の図鑑NEO
アナログでの典型的な例が、『小学館の図鑑NEO』シリーズです。UIはいたってノーマルな本(図鑑)なんですが、スマホとあわせて使うことで動画や音声などを見たり聞いたりすることができ、非常に立体的な体験をすることができます。見るからに、裏側に色々な努力や技術があることがわかりますよね。
トレンド事例6:ミツカン『ZENB』
また、サステナビリティ系のプロダクトは、おおよそ「裏ブラックボックスで表シンプル」に当てはまるのではないかと考えています。
たとえば、ミツカンさんのブランド『ZENB』では、黄えんどう豆100%のヌードル(麵)が販売されています。黄えんどう豆を丸ごと全部使うから無駄がないし、おいしく、健康にも良いという価値ももちろんあるのですが、欲望の観点から見ると、我々が食べるのは普通の麵であること(=UIがシンプルであること)こそがポイントなんです。野菜を丸ごと使っていながら、ここまでのレベルにプロダクトを仕上げるのがいかに大変か――商品が生まれるまでの工程を想像できるからこそ、消費者はプロダクトに価値を見出すわけです。
誌面でも言及しましたが、この欲望は“タイパ”を求める心理も大いに関係していると思われます。シンプルなUI/UXの裏に、人々の膨大な知恵と工夫と時間が詰まっているということに、現代の消費者はタイパ性を感じるのでしょう。
MarkeZine編集部:「裏ブラックボックスで表シンプル」の欲望をうまく掻き立てられている例は、裏のブラックボックスを何となく匂わせている、という共通点がありそうですね。あと4つの欲望トレンドと各事例は明日公開の記事でご紹介します。