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大抵の課題は間違っている。「本当の課題」を見つけ大きな成果につなげる、リーダーに必要な分解思考とは?

売上5億円を100億円に成長させる思考法

 続いて、菅原氏は自身の経験を基にロジカルシンキングの活用例を紹介する。菅原氏はデジタル広告をメインに扱う広告会社の売上を5億円から20倍の100億円に伸ばそうと考えた。

 ここで重要なのは、初歩的なところから具体的に問題を小さく分けて考えること。売上をどう作るか? を考えるために現在の「売上の構成」を分けると「平均広告額×案件数」となる。「平均広告額」に着目すると、当時、クライアントの多くが100万円規模の出稿だった。価格を変えない場合、100億円の売上を作るためには1万件の案件数が必要となる。200~300人規模の会社で案件を急増させるのは受注率をいくら上げようと努力しても無理な話だ。そこで菅原氏は、平均広告額を上げる方向で課題を分解していった。

 広告費が上がる提案方法を調べ、コンサル型の提案であれば高単価で受注できると仮説を立てた菅原氏は1,000万円と1億円の提案を試みた。しかし、どちらもあまりうまくいかなかったという。だが、価格を下げる選択肢はない。そのため、あえて桁を増やし「どうしたら10億円で売れるか?」を考えた。

 「相手は何を求めているか調べると、ブランドごと、キャンペーンごとに分けて発注をしている企業が多いとわかりました。しかし、それだとクライアントの社内にはノウハウがたまりません。デジタル広告の強みは、一括発注でブランド横断、キャンペーン横断の広告出稿ができる点。当社に一括で発注をすれば、ノウハウとデータが社内に蓄積でき、人も育つようになりますよ。という提案が経営者に好評で、大企業から年間30億、100億円といった発注をいただけるようになりました」(菅原氏)

大きな変化を生むには、「本当の課題」を捉える

 菅原氏が成果を出せるようになって気づいたこととは、仕事とはタスクを終えることではなく、成果を生み出すこと。つまり、自分やチームがいることで「変化量」があることだ。チームが介在することで変化が起きるならば、そのチームに依頼する価値があると言える。

 100億円で発注した菅原氏のクライアントは、デジタル広告で蓄積したデータを活用することで、広告効果はおよそ2倍に増加した。つまり、そのクライアントは100億円の発注予算を、翌年は50億円に減らし価値を維持することもできれば、予算を維持し200億円の価値を手に入れることもできるようになったということだ。

 このような成果や変化量を生み出すために、「目標は高くないといけない」と菅原氏は言う。100万円なら100万円なりの、10億円なら10億円なりの価値が出せる。そこに効率良く成果を上げる仕組みを導入し、価値を上げていければ、変化量は金額以上に高まる。高い目標を実現するためには、問題の見方を変える必要がある。これを菅原氏は「目の前の問題と本当の問題は違う」と表現する。

 「先ほどの僕のケースでは、当初100万円の広告でも受注率は5%でした。そのため、受注率を高める努力をしたところで、売上100億円という目標には遠く及ばないことがわかります。つまり『本当の問題』は案件数ではなく単価です。このように、考えても意味のないことは大胆にカットして、『本当の問題』について考える時間を作るのです。特に重要なのは、問題に対して『なぜ?』と問うていくことです」(菅原氏)

 菅原氏はここで、サイモン・シネック氏の提唱した「ゴールデンサークル」の考え方を紹介した。「何をするのか(What)」「どうやるのか(How)」ではなく、一番のコアは「なぜやるのか(Why)」であるという考え方だ。

 HowやWhatの状態では、仕事の100点が何なのかわからないまま仕事をしてしまう。また、リーダーが「なぜ?」を理解していても、メンバーがHowやWhatの状態では成果は出ない。リーダーの役割は、「なぜ?」をしっかりと伝えることでもあるのだ。

相談される課題は大抵間違っている

 菅原氏によると「小さく分けて考える」ステップは全部で4つだ。

Step1:目標を決める
Step2:現状を正しく認識する
Step3:達成できない課題を明確にする
Step4:課題を克服し目標に近づく方法=戦略を考える

 菅原氏がこれまで様々な企業、経営者と仕事をしている中で感じていたのは「相談される課題は大抵間違っている」ことだという。「これは優秀な経営者でも陥ることが多いのですが、僕らは試験勉強に慣れているので、まさか問題用紙が間違っているなんて思いません。疑わずに目の前の問題を解き始めてしまう。しかしビジネスの場合、問題用紙が間違っているケースが大半です。だからメンバーが課題を出してきたとしても、すぐにその課題を解こうとしてはいけません」(菅原氏)

 例題として、「CPAを下げようとしているがアイデアが出ない」という部下の声に対し、リーダーがかけるべき言葉は何か、菅原氏はチャットで意見を集めた。いろいろな回答が出たが、菅原氏は「あなたの目標は何?」「CPAを下げると目標に近づくの?」「今目標にどこまで到達していて、何ができている?」などをまず確認しなければならないと説く。解くべき課題が間違っていれば、たとえCPAの下げ方を教えてもあまり意味がない(図表1)。

図表1 「CPAを下げる」は本当の課題か
図表1 「CPAを下げる」は本当の課題か

 リーダーに重要なのは「問いかけること」。メンバーに考えてもらうことで、正しい状態を作る必要があるのだ。

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リーダーとして求められる人物になるためには? 

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この記事の著者

落合 真彩(オチアイ マアヤ)

教育系企業を経て、2016年よりフリーランスのライターに。Webメディアから紙書籍まで媒体問わず、マーケティング、広報、テクノロジー、経営者インタビューなど、ビジネス領域を中心に幅広く執筆。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/12/19 09:30 https://markezine.jp/article/detail/44383

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