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イベントレポート

なぜサントリーは長くスポーツのマーケティング活用を行ってきたのか?識者らが語る、魅力と活かし方


 2023年10月19日~20日に開催された「ad:tech tokyo 2023」では、吉野家の田中安人氏、日本女子プロサッカーリーグ WEリーグの松岡けい氏、AuBの鈴木啓太氏、サントリーホールディングスの馬場直也氏が登壇。「スポーツのコンテンツ力とマーケティング上の魅力」と題したセッションで、スポーツのマーケティング活用とその可能性についてディスカッションを行った。本記事では講演の様子をレポートする。

拡大し続けるスポーツ市場

田中:今回はスポーツのマーケティング活用とその可能性についてお話していきます。まず、スポーツ市場の状況について確認していきましょう。2015年~2016年時点でのスポーツ産業の市場規模は米国で50兆円、中国では約10兆円、日本は5兆5,000億に。日本では政府が「日本再興戦略2016」において、2025年までに15兆円規模への拡大を目指しています。

スライド画像の出典:https://note.com/delpie6/n/n2bfbdb6c6fab
スライド画像の出典:https://note.com/delpie6/n/n2bfbdb6c6fab

田中:特に世界では、スポーツを経済と直結させていることがわかります。また近年はSDGsやダイバーシティの文脈が広がっています。このような状況を念頭に置き、登壇者の皆さんにスポーツのコンテンツ力についてお伺いしていきます。

株式会社吉野家 チーフ・マーケティング・オフィサー 田中安人氏 経営戦略やマーケティング、スポーツマーケティング、アドバタイジング・エージェンシーなど幅広い経験から多くの企業のCMOを歴任。公益財団法人日本スポーツ協会 ブランド戦略委員会委員も務め、日本のスポーツのビジョン設計に取り組んでいる。
株式会社吉野家 チーフ・マーケティング・オフィサー 田中安人氏
経営戦略やマーケティング、スポーツマーケティング、アドバタイジング・エージェンシーなど幅広い経験から多くの企業のCMOを歴任。公益財団法人日本スポーツ協会 ブランド戦略委員会委員も務め、日本のスポーツのビジョン設計に取り組んでいる。

鈴木:コンテンツ力という文脈では、間違いなくデジタルの力をもっと使っていく必要があります。ただ、今後はもう一歩先も見るべきだと考えています。それは“現場”です。

 試合をデジタルで配信して多くの人に見てもらい満足するのではなく、そのフェーズからいかにスタジアムや会場に視聴者を連れていくか。「現場の価値が高い」状況をどのように作り出すかが、カギになるのではないでしょうか。たとえば海外のサッカークラブではVIP席を用意し、実際にチームのコーチから選手の注目プレーについて説明を聞けるなど、現場に赴いたファンにとって非常に価値ある体験を提供しています。

AuB株式会社 代表取締役 鈴木啓太氏 2015シーズンまで16年間、Jリーグの浦和レッズでプロサッカー選手としてプレー。引退後にAuBを立ち上げ、アスリートの腸内細菌に着目したヘルスケア・フードテック事業を展開。自社ECサイトにて腸ケア商品の販売を行っている。
AuB株式会社 代表取締役 鈴木啓太氏
2015シーズンまで16年間、Jリーグの浦和レッズでプロサッカー選手としてプレー。引退後にAuBを立ち上げ、アスリートの腸内細菌に着目したヘルスケア・フードテック事業を展開。自社ECサイトにて腸ケア商品の販売などを行っている。

松岡:私もスポーツの中で実体験が重要だと思います。スポーツは勝ち負けがありますから、コンテンツとして非常にわかりやすいです。また体育の授業などで皆さん一度はスポーツに必ず触れますから、誰でも満足感を得られやすいコンテンツといえるでしょう。

 現地で観戦し、実体験として興奮を味わい、その経験を経て配信サービスに登録するといった行動にもつながります。鈴木さんのお話とは逆の順序ですが、体験があった上でデジタルでの取り組みにつなげられるという意味でも、実体験は大切ですよね。

公益社団法人日本女子プロサッカーリーグ WEリーグ 理事 マーケティング本部ゼネラルマネジャー 松岡けい氏 Red Bull Japanでスポーツイベントやアスリートコミュニケーションといったマーケティング業務に携わり、2017年よりスポーツ動画配信サービスDAZNでメディアやパートナーとの協業、ブランディングなどを担当。2023年6月よりWEリーグに入局し、マーケティング・プロモーションおよびパートナー事業の業務執行理事として、女子プロサッカーリーグのブランド・価値向上に取り組む。
公益社団法人日本女子プロサッカーリーグ WEリーグ 理事マーケティング本部ゼネラルマネジャー 松岡けい氏
Red Bull Japanでスポーツイベントやアスリートコミュニケーションといったマーケティング業務に携わり、2017年よりスポーツ動画配信サービスDAZNでメディアやパートナーとの協業、ブランディングなどを担当。2023年6月よりWEリーグに入局し、マーケティング・プロモーションおよびパートナー事業の業務執行理事として、女子プロサッカーリーグのブランド・価値向上に取り組む。

馬場:企業・ブランド目線だと、スポーツのコンテンツ力は真剣勝負に起因する“筋書きのないドラマ”に魅力があると考えています。ブランドやマーケティングの世界は「人が考え設計した企画」を進めることになり、これはこれで面白いのですが、スポーツには予測不可能な面白さがあります。そういった体験に企業やブランドがうまく入っていくことができれば、ユーザーの記憶に強く残るのではと考えています。

 ただ、当然ながらユーザーの記憶に強く残るようなドラマが生まれるのかは運による部分も強いです。したがって企業側は短期的な成果ではなく、中~長期目線での投資の意識は必要ですね。

サントリーホールディングス株式会社 宣伝部部長 兼 デジタルマーケティング部部長 馬場直也氏 1996年にサントリーに入社し、缶チューハイ・缶ハイボールや「ザ・プレミアム・モルツ」などのブランド担当を経て2017年から宣伝部でデジタルコミュニケーションを担当。2021年3月より宣伝部デジタルコミュニケーションデザイン部 部長(デジタルマーケティング部兼務)を務める。
サントリーホールディングス株式会社 宣伝部部長 兼 デジタルマーケティング部部長 馬場直也氏
1996年にサントリーに入社し、缶チューハイ・缶ハイボールや「ザ・プレミアム・モルツ」などのブランド担当を経て2017年から宣伝部でデジタルコミュニケーションを担当。現在、プロ野球OBが参加するサントリードリームマッチや宮里藍サントリーレディスオープンなどのデジタル施策を担当する。

今、グローバルではスポーツ市場をどう見ているか

田中:投資というキーワードが出ましたが、実際にスポーツの現場にいる松岡さんはいかがお考えですか?

松岡:グローバルでは、女子スポーツが企業の投資先になる潮流が来ています。具体例を挙げると、ドイツではGoogleが女子サッカー代表を、またシンガポールではデロイトが女子サッカーリーグ(Women’s Premier League)の冠スポンサーに付いています。

松岡:背景として、グローバルなスポーツであるサッカーのような競技であっても、女子サッカーの市場にはポテンシャルがあります。加えて近年はZ世代を中心とした消費者が、ブランドのDNAにDEI(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)の考え方が組み込まれているかどうかを見ています。

 したがってスポーツも、男子だけでなく女子も含めた全体で投資をすることで、企業がCSRとして掲げたダイバーシティやジェンダー領域が強化されていく。グローバルでは単なるスポーツビジネスではなく、「色々なビジネスがある中、投資先の一つとしてスポーツがある」という見方をされていますね。

田中:現在こういったトレンドがある中で、サントリーさんは昔からスポーツに関わられていますよね。

馬場:私たちがご提供している商品は飲料ですので、スポーツ飲料などを試合の最中に飲んだり、応援しながら飲むお酒であったりと、親和性の高さがあります。ですから、スポーツは私たちの活動軸の一つに入っていると感じています。

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この記事の著者

吉永 翠(編集部)(ヨシナガ ミドリ)

大学院卒業後、新卒で翔泳社に入社しMarkeZine編集部に所属。学生時代はスポーツマーケティングの研究をしていました。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/02/02 00:19 https://markezine.jp/article/detail/44389

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