「気付きを与える」「きちんと届ける」の2つをマーケティングで展開
こうして開発されたパーソナル食洗機SOLOTAを、ターゲット層に対してどのように訴求していったのか。パナソニックで日本地域における食洗機のマーケティングを担当している山本氏は「まずは若年単身世帯が持つ『家事についての価値観』を調査し、その結果を踏まえて2つの柱を設定してマーケティングを進めました」と説明する。
そもそも家事に対しては世代共通して「できるだけ効率的に行いたい」というニーズがあるが、今回のターゲットである20代〜30代の単身世帯層はその傾向が特に強い。その大きな割合を占めているZ世代には、無駄をカットできるタイパを重視し、タイパを上げるために家電や家事サービスへの投資は厭わないという特徴がある。

その一方で、食洗機については「必要と感じない」と考える割合が64%も存在しており、食洗機を利用するイメージを持っていないという状態だった。「サイズが大きい」「設置できない」という意見も見られたという。
この状況に対して山本氏は、マーケティングの2本柱として「ひとり暮らしの悩みから、食器洗いのストレスという“気付き”を与えるアプローチ」と、「インパクトと話題性を活用した消費者への認知拡大」のために「大人気アニメとのタイアップ」を掲げ、施策を練っていった。タイアップのコンテンツとして同社が選んだのが『テレビアニメ【推しの子】』だ。
SNSとデジタル広告の両輪で食洗機へのニーズを醸成
山本氏は、1本目の柱である「ひとり暮らしの悩みから気付きを与える」施策について、「まずは『認知拡大・興味喚起』という啓発活動を重視し、X、Instagram、YouTubeをメインに動画やバナー広告を展開しました」と説明する。いずれも若年単身者が日常的に触れているメディアであり、これらの広告からSOLOTAの商品サイトへ導き、理解促進フェーズへの誘導を図った。
具体的な気付きを与える施策として、コンセプト動画や毎日の食器洗いの回数を可視化する動画を制作・配信した。さらにターゲット層の消費者が「ひとり暮らしは意外と忙しい」と自発的に気づくために、X上で「ひとり暮らしあるある投稿キャンペーン」を展開し、消費者間での悩みの共有・盛り上がりを促進した。こうしてメーカー主導ではなく、消費者同士で共感することで興味が喚起されていった。商品開発ストーリーの動画を制作して投稿したところ、それがメディアに取り上げられて話題となりさらなる露出拡大につながったという。

また運用型広告に関しては、SOLOTAによるタイパや実利に沿った内容のものや、コンビニ惣菜中心のライフスタイルに沿った内容の広告、手による食器洗いの代替手段として食洗機に気づいてもらう広告など様々な切り口で訴求を展開し、こちらも大きな反響につながった。

理解促進フェーズで重要な役割を果たす商品サイトは、文字情報をできるだけ減らし、直感的に認知できるような体裁に仕上げた。商品詳細ページのヒートマップを確認したところ、商品ページの半分以上読了率が約8割であることや、価格情報のエリアが熟読されていたことがわかった。この点について山本氏は「文字情報が多い従来の商品ページに比べ、商品情報の閲覧パーセンテージが非常に改善されており、より多くのお客様に最低限の情報が伝えられたと考えています」と評価している。