オピニオンリーダーからの評価が高いDIORが採るべき戦略
では、これら5ブランドに対してオピニオンリーダーの評価、Leadスコアはどうなっているのか。Leadスコアの評価指標である図3を見ると、Baseスコアとほぼ同様の波形となっている。

図3.Leadスコア詳細評価
出所:NBI2023(Web調査、2023/2)
このことからオピニオンリーダーも生活者全体と同様の評価を行っていることがわかる。また、Baseスコアでは、10位以内に入らなかったDIORだが、未来のブランド力の指標となるLeadスコアでは、8位にランクインした。
このように、Leadスコアでは評価が高いが、BaseスコアではLeadスコアに及ばないケースでは、ブランドは具体的にはどのような取り組みを行えば良いのだろか。今回、DIORを例にするが、同ブランドは「フィーリング」の項目が高くない。「フィーリング」は複数のイメージからなる項目だが、これを構成するイメージのうちの一つ「伝統がある」が要因であることが詳細分析からうかがえた。DIORはLouis Vuitton、CHANEL、HERMESに比べて半数程度しか「伝統がある」のイメージを獲得できていなかったのだ。
確かに、DIORは他の3ブランドと比較すると歴史は浅い。しかし、同ブランドの有するオートクチュールのコレクションは、1947年「ニュールック」と呼ばれてファッション界に大きな影響を与えたという事実もあり、こういったブランドの歴史を情報感度の高いオピニオンリーダーにしっかりと伝えていくことで、Leadスコアは伸長する。オピニオンリーダーの後には、マスへもブランドイメージが波及していくだろう。既に「ディオール展」を行うなど、ブランドの歴史を伝えていく取り組みも見られているが、今後も継続した実施が重要と筆者は考える。
ラグジュアリーブランドの成長戦略の一つ「ブランドエクステンション」
続けて直近のブランド力の動きを示すTrendスコアを月別で見ると、DIORがほぼすべての月で20ブランドの中で1位を獲得している(図4)。他にも上位ブランドでは、メーキャップカテゴリーに進出しており、同カテゴリーでのシェアが高いブランドがTrendスコアで多くのスコアを獲得できている傾向にある。
ラグジュアリーブランドの多くでは成長戦略の一つとして、ブランドエクステンションを行っている。「ARMANI(アルマーニ)」のように、セカンドラインとして安価なエントリーラインに拡張する方法もあれば、化粧品や香水、アイウェアなどファッションアイテムより比較的安価に提供できる商品カテゴリーに進出する方法もある。そうすることで、ターゲットが広がりやすく、比較的マスにブランド認知が得られやすくなるのだ。特にメーキャップカテゴリーはSNSで取り上げられやすいことから、話題になればTrendスコアも伸長していることがうかがえる。
HERMESは長い間、化粧品事業に進出しなかったが、近年では事業を拡大。2022年9月に化粧品の新商品を発売したタイミングでは、Trendスコアが1位となり話題作りにも成功している。
ただ、ターゲット層を広げることは同時に、既存顧客にとってのブランド棄損につながる可能性も意味しているので、同戦略は慎重に取り組む必要もある。HERMESは化粧品カテゴリー内では高価な価格設定を行っており、これによって洗練された商品展開からブランドの世界観を保ちつつ、認知の拡大にも成功できているが、必ずしもこれが両立できるとは限らない。POPUPやイベントなどの施策でも話題作りは可能なため、コンテンツ力で勝負し、ブランド認知を獲得するのも一つの戦略だ。

図4.Trendスコア
出所:NBI2023(Web調査、2023/2)