ブランド戦略論の第一人者であり、中央大学名誉教授でもある田中洋氏による本連載。第7回は、日本コンサルティング業界の草分け的な存在であり、早稲田大学名誉教授である内田和成先生と対談。「日本マーケティング本 大賞2023」で大賞を取った内田先生編著の書籍『イノベーションの競争戦略:優れたイノベーターは0→1か? 横取りか?』を取り上げ、「イノベーション」をテーマにお話をしていただきました。
日本マーケティング本2023で「大賞」を受賞
田中:マーケティング論や経営学に関わる人で、内田和成先生を存じ上げない方はいらっしゃらないと思いますが、改めて紹介させていただきます。内田先生はボストンコンサルティンググループで日本代表まで務められ、日本のコンサルタント業界の草分け的な存在です。その後、早稲田大学の教授として教鞭をとられ、現在は同大学の名誉教授でいらっしゃいます。
今日は内田先生がイノベーション研究会の皆さんとお書きになった書籍『イノベーションの競争戦略: 優れたイノベーターは0→1か? 横取りか?』を取り上げさせていただきたいと思います。同書は、2023年の日本マーケティング学会の「日本マーケティング本 大賞2023」で、見事「大賞」に選出されました。その受賞をお祝いする意味でも、本日はイノベーションをテーマにお話をお聞きできればと思います。
本題に入る前に、少し雑談をさせてください。内田先生と私の接点についてです。内田先生は慶應ビジネススクール在学時、嶋口光輝先生に師事されていらっしゃいましたよね。私は、慶応大学商学部の村田昭治先生に大学院で弟子としてお世話になっており、その意味では嶋口先生との兄弟弟子にあたるのです。
内田:田中先生が村田先生の門下生だったとは、存じ上げませんでした。25年ほど続いた伝説の深夜番組『11PM』にレギュラーで出られていた、あの村田先生ですよね。若い読者の方は『11PM』を知らないかもしれませんが……(笑)。
お話にあったとおり、私は嶋口先生には大変お世話になりました。足を向けて寝られません。
田中:私がこのところ非常に残念に思っているのは、最近、嶋口先生の本が手に入りづらくなってきていることです。それこそ若い方は、先生を知らない方もいらっしゃるかもしれません。内田先生から見て、嶋口先生はどういう方ですか?
内田:アカデミックな業績はもちろんですが、何より先生は本当に素晴らしい人格者なのです。人間として心から尊敬しています。
僕が嶋口先生に驚嘆するのは、彼の処女作である『マーケティング戦略の論理』(誠文堂新光社/1984)の後半で、ソーシャルマーケティングの章を入れられていることです。この本が出版された1984年、今から40年も前にソーシャルマーケティングに着目されていたわけですね。当時、僕は正直まったくソーシャルマーケティングの重要性がピンとこなくて。(バブル経済真っ盛りで)何より“利益をあげること”が求められていたあの時代に、“社会の役に立つマーケティング”なんて。恩師ではありますが「何を言っているのだろう?」と思ったものです。
ですが、言うまでもなく、その重要性は時代が証明しています。今や“ソーシャル”の観点は必須項目になっていますから。そういう意味での先見性や鋭さには、今でも感心します。
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田中 洋(タナカ ヒロシ)
中央大学名誉教授。東京大学経済学部講師。京都大学博士(経済学)。マーケティング論専攻。電通で21年実務を経験したのち、法政大学経営学部教授、コロンビア大学客員研究員、中央大学大学院ビジネススクール教授などを経て現職。日本マーケティング学会会長、日本消費者行動研究学会会長を歴任。『ブランド戦略論』(2017年、有斐閣...
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